ジャガイモシロシストセンチュウを初確認-農水省2015年8月20日
農林水産省は8月19日、国内で初めてジャガイモシロシストセンチュウの発生を確認したと発表した。
この線虫はすでに国内発生が確認されているジャガイモシストセンチュウに類似する線虫だという。ジャガイモシストセンチュウは北海道、長崎、熊本、青森で発生が確認されており、これに抵抗性のあるジャガイモが開発され栽培されている。
今回、ジャガイモシロシストセンチュウが確認されたのは北海道網走市内のほ場。同ほ場では抵抗性品種を栽培していたにもかかわらず線虫被害発生が疑われるとして、北海道庁から農水省に連絡があり、19日に同省植物防疫所がこれまで未発生のジャガイモシロシストセンチュウであることを確認した。
ジャガイモシロシストセンチュウは、虫体が卵を持ったまま硬い殻に閉じこもるようなシスト(包のう)の状態となる。
大きさ0.6ミリほどのこのシストは長期間にわたって乾燥や低温に耐えることができ、これまで20年間も生存した例も確認されているという。寄生植物はジャガイモとナス等のナス科の植物。これらの作物が栽培されると、土壌中に存在するシストから幼虫、成虫が生まれ根に侵入し生育を阻害する。
そのため葉の縮れや黄化などの症状がみられやがて枯死することから収穫量の著しい低下をもたらす。過去にはトマトでも被害発生例があるという。インド、ヨーロッパ、ロシア、米国、カナダ、コロンビア、ペルー、ニュージーランドなどに分布している。
一旦ほ場に侵入すると根絶は非常に困難だが、この線虫は1年間に2メートル程度とほとんど移動しないため、シストを含んだ土壌が農業用機械類やジャガイモなどに付着して移動しなければ急速にまん延するおそれはない。そのため発生した場合は、土壌移動を防止するほか、発生ほ場では転作等によって発生密度を下げて封じ込めを行う。
今回の発生確認を受けて農水省は▽発生範囲を特定するための調査の実施、▽土壌の移動防止、▽ジャガイモ作付け前の土壌診断の徹底、▽ジャガイモ連作の自粛、▽発生ほ場の土壌消毒の実施を行う。また、収穫したジャガイモと土壌の移動には、植物検疫官による移動前の検査を実施する。
発生範囲の特定については9月上旬に結果をまとめ、調査結果をふまえて有識者による対策検討会議を開く予定にしている。
ジャガイモシロシストセンチュウは人畜に無害。この線虫が付着したジャガイモを食べても健康を害することはない。また、北海道産の種バレイショについては平時から植物検疫を実施し、線虫が付着していないことを確認している。
(関連記事)
・外来昆虫の来歴を解明 未侵入の潜在的リスク評価の参考に (15.08.19)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日
-
キウイブラザーズ新CM「ラクに栄養アゲリシャス」篇公開 ゼスプリ2025年4月30日
-
インドの綿農家と子どもたちを支援「PEACE BY PEACE COTTON PROJECT」に協賛 日本生協連2025年4月30日