食料自給力は低下-27年度食料・農業・農村白書2016年5月18日
政府は5月17日の閣議で27年度の「食料・農業・農村白書」を了承し同日公表した。
27年度の白書は「食料」「農業」「農村」の基本となる3つの章と「東日本大震災から復旧・復興」を加えて構成し、巻頭の特集ではTPP交渉の合意と関連施策を取り上げた。
TPP交渉については昨年10月の大筋合意の内容と11月に政府として決定した「総合的なTPP関連政策大綱」と経済効果分析などを掲載している。内容はこれまでにすでに政府が発表したもの。
経済効果試算ではTPPで食料自給率が大きく影響を受けることがないという結果になったとして、「引き続き食料・農業・農村基本計画」に定める食料自給率目標(平成37年度にカロリーベース45%、生産額ベース73%)の達成に向けた取り組みが必要となっています」と記述している。
経済効果についてはコラムで今年1月に発表された世界銀行による分析を掲載している。それによると2030年までにTPP参加12か国のGDPは平均で1.1%伸びるとされている。効果がもっとも大きいのはベトナムで経済成長率10%、次いでマレーシア同8%となっている。日本は2.7%(政府試算では2.6%)でTPP参加国のうち6番目の伸びが期待できるとされている。
本文では初めて重点テーマを設定した。
そのひとつが食料自給力の動向。食料自給力指標はわが国の潜在的な食料生産能力を把握するため「花など食用以外の農産物が作付けされている農地も含めて、米やいも類を中心に作付けしたら、供給可能なカロリーは1人あたりどの程度になるか」といった仮定のもとで試算したもの。昨年3月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画で初めて提示された。
2014年度はいも類を中心に熱量効率を最大化する作付けをした場合、2642kcal/人・日(再生利用な荒廃農地でも作付けした場合は2736kcal)と必要なエネルギー量2146kcalを上回っている。しかし、この推計は現在の食生活とは大きく異なる作付け。現実の食生活に近い米・小麦・大豆中心の作付けをした場合は、荒廃農地を再生利用したとしても1478kcal~1853kcalと必要とするエネルギーの7割程度しか供給できない。
また、現実の食生活に近い作付けをした場合の供給熱量は平成2年には1921kcalあったが、その後、低下し続けていることが白書で示されている。
カロリーベースの食料自給率は40%前後と横ばいで推移しているが、一方で食料自給力指標は低下傾向で推移している。この現状について白書は「国民一人一人に知ってもらい、食料安全保障に関する議論を深めることが重要」と指摘した。
重点テーマはそのほか輸出促進と日本食・食文化の海外展開、2015年農業センサス結果に基づいた農業構造の動向、地方創生の動きを取り上げた。
27年の輸出額は7451億円で3年連続で過去最高を更新したことを記述。一方、農業構造では農業経営体数は2010年は167万9000経営体だったが、2015年は137万7000経営体に減った。ただ、法人経営体数は1万2511から1万8857に増えており、今後、さらに法人化を進めることが必要だと指摘している。
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