農産物 包括的市場アクセス確保-米国が交渉目的公表2018年12月25日
米国通商代表部(USTR)は現地時間12月21日夕(日本時間22日朝)「日米貿易交渉における交渉目的」を公表した。物品貿易について米国の貿易バランスを改善し、日本との貿易赤字削減をめざすことや、農産物については日本での米国産農産物の包括的な市場アクセスを確保することを目的に掲げている。
USTRのホームページで公表されたのは「日米貿易交渉における交渉目的の要約」。この「交渉目的」は米国貿易促進権限(TPA)法で規定された手続きの一つ。米国は12月初めに農業団体も含め関係業界団体からのヒアリングを行ってきた。この交渉目的の公表後30日以降に米国政府の交渉開始が認められるため、最短で1月20日以降に交渉開始が可能となる。
交渉目的の目次は▽物品貿易、▽植物衛生検疫、▽関税、貿易施設、原産地規則、▽サービス貿易(通信、金融サービス含む)、▽投資、▽知的財産、▽国有企業など21項目。
物品貿易では▽米国の貿易バランスを改善し日本との貿易赤字を削減する、▽貿易の歪曲を防ぐため輸出入の独占を抑制するなどを目的としてあげている。
このうち農産物については▽関税を削減・撤廃することによって、日本における米国産農産物の包括的な市場アクセスを確保、▽米国の輸入におけるセンシティブな農産物については、関税削減交渉を開始する前に議会と密接に協議しつつ妥当な調整期間を提供する、▽不公正で米国の市場アクセスの機会を減らす慣行や農産物市場を歪め、米国に損害を与える慣行を撤廃する(米国産農産物を差別化する非関税障壁、不公平、もしくは国内の貿易会社や国有企業による貿易を歪曲させる行為、その他米国内の貿易会社に重点的に透明性を求める行政の仕組みなど)、▽透明性、少量混載問題の管理に対処し、農産物バイオテクノロジーの情報交換や協力促進の仕組みに向け、農業バイオテクノロジーによって発展した商品の貿易に関する特定の手続きを設置する、などを目的とすると記している。
このように農産物貿易については関税削減・撤廃による市場アクセス拡大について言及しているが、品目や具体的な要求水準は示されていない。
また、非関税障壁についても具体的な記載はないものの、撤廃に取り組むことは明記されている。
物品貿易以外のサービスについては、通信、金融サービス、宅配サービス、港湾サービスへの関心が表明されている。
このうち金融については▽米国の金融サービス提供者がより公平で開かれた金融サービス貿易の状況を得られる競争市場機会を拡大、▽公平に運営された金融規制手続きを確保する、などを挙げている。
そのほか、米国が自動車に関連して問題視している為替については通貨の項目として記載。不公正な競争で利益を得るような為替操作を日本にさせないことを確保するなどとしている。
この文書は米国政府として日米物品貿易交渉(TAG)に向けた立場と考え方をとりまとめたもの。米国では年末年始の休暇に入っており、来年には下院で民主党が過半数を占める新議会がスタートする。この文書をふまえた米国内の動きが出てくるのは年明け以降になるとみられている。
また、交渉開始は1月20日以降に可能となるが、米国は対中国との貿易協議を2月末までを期限として行っている。担当閣僚はTAGを担当するライトハイザー通商代表のため、交渉開始は後ろ倒しになると見られている
USTRのUSJTA関連のページ:U.S.-Japan Trade Agreement Negotiations | United States Trade Representative
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