食の安定供給に危機感-新基本計画 農林水産省2020年1月30日
農林水産省は1月29日に開いた食料・農業・農村政策審議会に次期基本計画の「基本的な考え方」と経営政策、農村政策などを提示した。基本的考え方では農業者の減少と中山間地域の人口減少などで農業生産が維持できず、国民への食料の安定供給が損なわれる事態となりかねないと危機感を示し、新たな基本計画は、こうした状況のなかでも農業の持続可能性を確保していく指針とすることがテーマとの考え方を示した。
農林水産省の講堂で開催された企画部会
基本的考え方では、わが国の農政について、農業所得の向上や、新規就農者の増加、輸出増大などの成果を上げてきたとの認識を示す一方、TPPをはじめとする国際化、大規模災害の多発、家畜疾病の発生と気候変動なへの対応が迫られているとした。
しかし、日本の人口は2020年の1億2500万人が30年後には1億200万人へと2割減少し、そのなかで2040年にはこのままでは農業者は半数以下、農地は約2割減少することを指摘。また、農業産出額の4割を占める中山間地域では人口減少から地域社会の維持も困難になる地域も増えると予想され、「このままでは農業生産が維持できず、国民への食料の安定供給が損なわれる事態となりかねない」と危機感を示した。
そのうえで、こうした状況のなかで将来にわたって食を安定供給できるよう「わが国農業・農村の持続可能性を確保していく指針」を示すことが次期基本計画のテーマだとした。
そのための政策方向として4つを提示。1つは「効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造」という基本法の理念に即して「人・農地プラン」の「実質化」によって、担い手への農地を集積・集約する方針を従来どおり掲げた。ただ、今回は経営規模や法人・家族の別など経営形態にかかわらず、「将来にわたり農業を継続する者」に経営が継承されることも推進するとして、小規模・家族農業も重視する方向も示した。
そのほか、新規就農者、女性参画、高齢者、障がい者など多様な人材の確保などによる農業就業者の確保も進めるとした。また、スマート農業、データ駆動型農業といった先端技術の生産現場への導入も図る。
2つめは農地の利用についての考え方で、土地持ち非農家の農地も含めた有効活用、中山間地域では放牧など粗放的な利用についても検討していく考えを示した。
3つめは変化する消費への対応で高収益作物の生産拡大や高付加価値とともに、業務用需要への対応と機械化体系の導入によるコスト低減などの推進も上げた。流通面では共同配送、消費面では食育の推進による国産農畜産物の消費拡大への取り組みを上げた。
4つめが農村政策で、とくに中山間地域での農業経営モデルを示すことや、定住条件の整備、非農家も参加した地域資源の保全など推進を上げ、農水省が農村振興を主導し関係府省と連携していく考えを強調している。
こうした施策の基本方向を示したうえで、基本的考え方では、「基本となるのは消費者の理解と行動」だとして、消費者が農業・農村への理解を深め、国産消費拡大等に主体的に取り組む、国民運動を展開することも明記する。
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