「みどりの食料システム戦略」策定へ-野上農相2020年10月16日
野上浩太郎農相は10月16日の会見で、わが国の農林水産業の生産力向上と地球環境の持続可能性を両立させる「みどりの食料システム戦略」を来年5月に策定するため省内で検討するよう指示したと表明した。
野上浩太郎農相(写真は9月17日の就任時)
野上農相は日本農林水産業が直面している課題として記録的な豪雨や酷暑など温暖化や異常気象、生産者の減少、生産基盤の脆弱化などへの対応を挙げた。また、コロナ禍を契機に、サプライチェーンの混乱と内食や国産食材への関心の高まりなどの変化もある。
一方、国内外でSDGsや地球環境問題をふまえた持続可能性への取り組みが進んでいることなども指摘。地域の将来も見据えた持続可能な食料供給システムの構築が急務となっている。野上農相はこうした課題をふまえ生産力向上と持続性を両立させる「みどりの食料戦略システム」の検討に着手するとした。
農林水産省によると生産から消費までサプライチェーンの各段階で新たな技術体系の確立とイノべーションの創造で課題解決をめざす。生産者が減少し集落の維持も困難となるなか、スマート農業技術などで人手不足を補うとともに、センシングを活用し土壌条件に応じた肥料、農薬を使用することで生産性向上とコスト低減、環境負荷軽減を両立させる。
また、圃場管理システムやドローンなどICT)機器を家族農業などにも導入し、一定の規模拡大を支援するとともに、そうしたスマート技術によって「農業のハードルを低く」し、農業・農村に関心を持つ人々にも農業の担い手として参画する地域社会もめざす。
「技術という切り口で関係人口を増やすなど生産者のすそ野の拡大につなげる」(農水省)のも狙いだ。また、バイオマスや温泉、風力など地域資源を最大に活用し「エネルギーの地産地消」を進め、化石燃料からの脱却もめざす。
EU委員会は今年5月、2030年までに農薬の使用とリスクを50%減、肥料使用量を最低20%減、農地の25%を有機農業とするなどの「Farm to Fork(農場から食卓まで)戦略」を公表した。また、米国も農務省が2050年までに農業生産性40%向上と環境フットプリント半減を同時達成などとする「農業イノベーションアジェンダ」を2月に発表した。こうした国際的な動向もふまえて、環境と生産力向上の両立を実現する戦略づくりに取り組む。
省内での検討は農林水産技術会議事務局が中心になって進める。2040年を目標年次として具体的な目標を含む施策の検討を進める。来年3月に中間とりまとめを作成、5月ごろに戦略を決定。政府の農林水産業・地域の活力創造プランなどに反映させるとともに、令和4年度予算に反映させる。具体的な目標の掲げ方は今後検討する。
一方、政府は食料・農業・農村基本計画を今年3月に決定し4月からがその実践1年めとなる。農水省は今回の「みどりの食料システム戦略」は基本計画の実現をさらに押し進めるための中長期的な方針と位置づける。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日