世界の有機食品市場 10年で2倍ー農水省2021年7月13日
農水省が策定したみどり戦略(みどりの食料システム戦略)では2050年に有機農業の取り組み面積を25%に拡大する目標を掲げた。有機農業を拡大するには有機農産物が適正な価格で販売される市場環境が必要だとして、農水省はオンライン勉強会(持続可能な農業生産の取組拡大を考える勉強会シリーズ)でオーガニックマーケットの現在と将来展望などを示している。
みどり戦略は2050年までに農林水産業からの温室効果ガス排出量ゼロをめざし、そのために農薬や化学肥料の使用量を低減し有機農業を拡大させる。
有機農業とは、2006(平成18)年に制定された「有機農業の推進に関する法律」で、化学的に合成された肥料と農薬を使用せず、遺伝子組換え技術を利用しないことを基本に「農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」と定義した。
国際的には"農業生態系の健全性を促進し強化する全体的な生産管理システム"と規定されおり(コーデックス委員会ガイドライン)、各国でこのガイドラインに沿った認証制度が運用されている。
こうした基準で生産された世界の有機食品市場は農水省のまとめによると10年で2倍となり2018年で約12兆円となった。ちなみにわが国の農業総産出額は8.9兆円だ。
取り組み面積は2倍に拡大し2018年には7150万haで全耕地面積の約1.5%で有機農業が行われているが、永年草地が大きく増えている。
農水省がまとめた有機市場の動向をみると、米国では2018年に過去最高の525億ドル(約5.8兆円)を記録した。前年比6%以上の成長で、その理由は有機専門店からコストコなどの大型量販店、オンラインの小売業者、コンビニなどへ軸足が移ったからだという。2000年以降に成人したミレニアル世代と小さな子どもがいる家族が有力な顧客層になっている。
フランスではカルフールなど巨大流通グループが取扱額を拡大させ有機市場の成長を一層加速させているという。さらに2022年までに学校給食や職域食堂など公的機関が調達する食品の半分を有機か、品質ラベル付きか、現地生産したものすることを求める法案が2018年に成立している。
スイスでは有機食品の流通のほとんどが生協が担い、有機農業界の全国組織と緊密に連携し、1人あたりの年間有機食品消費額は世界トップの3万9000円となっている(2018年)。フランスは1万7000円、米国は1万5000円。世界平均は1638円で日本は1408円となっている。
その日本では過去8年で約4割市場が拡大し、2009年の1300億円が17年に1850億円となった。取り組み面積は2018年で2万3700haと全耕地面積に占める割合は0.5%に過ぎない。
国内の調査によると「有機」という言葉を知っているのは91%だったが、週1回以上有機食品を利用するのは17.5%だった。品目も有機野菜や有機米が中心だ。イメージは「安全」、「高い」が8割以上の回答を得ている。一方、「環境に負荷をかけていない」は62.5%にとどまっており、農水省は環境保全効果を周知することが新たな需要開拓につながるのではないかと期待する。実際、別の調査ではオーガニック食品の食べる頻度が高い人は環境問題に関心が高いことが示されている。
ただ、有機農産物は小ロットで宅配便に頼らざる得ない場合も多いため、流通コストが嵩むことが販売価格が高くなる要因となっている。
一方で有機食品の購入先はスーパーが9割近くを占める。有機食品を伸ばすには、安定生産技術の確立とともに、消費者のニーズに合った販売ルートが必要になる。
農水省は2017年までの市場拡大率が継続した場合、2030年には国内の有機食品市場は3280億円まで拡大すると見込む。その際には有機食品を週1回以上利用する人は全消費者の25%まで拡大するという。
農水省は今後の取り組みで必要なことに有機農業の価値や効果を伝えることや、給食や地場での加工など、有機食品を購入できる場所と機会を増やすことなどを挙げる。
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