食料安全保障 実現を追求 野村新農相2022年8月12日
8月10日に発足した第二次岸田改造内閣で農相に就任した参議院議員の野村哲郎氏(78)は、同日夜就任会見に臨み、「選挙で約束した食料安全保障について精一杯の努力を重ねていきたい」などと意気込みを語った。
野村哲郎農相
食料安保予算確保「絶対にやらなきゃならない」
7月の参議院選挙で4回目の当選を果たし、今回の内閣改造で初入閣を果たした野村氏は、選挙戦では国の安全保障、経済安全保障とともに、小麦価格など食料とともに肥料価格の高騰などの現状を説明し「食料安全保障(の重要性)を国民、県民に訴えた」という。
今回の農相就任に当たっては「党で議論を深めていたところであり、この役所に大臣として招かれたわけだから、ぜひこれを実現していきたい。いろいろな困難があると思うが、役所全体で取り組んでいただきたいと思っている」と述べた。
野村氏も中心メンバーである自民党の食料安全保障に関する検討委員会は5月、金子前農相に「食料安全保障予算」を新たに確保し、思い切った対策を緊急的に実施すべきと提言した。
この予算確保への意気込みを問われた野村氏は「意気込みというよりも、絶対にやらなきゃならない話です」と答え、「それをしていかないと日本の農業生産基盤は弱体化していく」と強調した。現在、党の食料安全保障に関する委員会でも検討が重ねられているとして、同委員会からさらに提言等が出てくれば、農水省として「制度設計や予算取りをしてくれるのではないか」との考えを示した。
当面の対策としては、肥料対策を上げたが、中長期的に生産増加をめざす品目として「不足している小麦、大豆をどうのばしていくかなど、ターゲットを絞り込んで伸ばしていく」ことが重要だとの考えを示した。畜産の飼料でも鹿児島県で大麦を生産し飼料に使っている例などを上げた。肉質などに課題もあるが「日本の畑で取れる大麦が利用できる研究も進めてほしい」と研究機関にも期待した。
また、主食用米は「消費拡大がなかなか難しい」として「小麦の輸入価格が上がったり輸入が難しくなってくれば、米粉からパンや麺を作ることがいちばん消費拡大になる。意識を変えてほしい」と米粉の利用拡大を重視する考えを示した。
みどり戦略の本格的な取り組みも課題となるが、「みどり戦略はどういうものがイメージわかないのではないか」と、現場に分かりやすく説明する必要があるとした。鹿児島では家畜排せつ物から製造した肥料が製品化されており、「化成肥料に負けない品質のいい肥料ができる」、「できるだけ日本にあるものを使って肥料をつくる。それがグリーン戦略」と話した。
スマート農業の普及について個々の農家がドローンなどを導入すれば経営を圧迫するため、農業団体がまとめて購入して、作業を請け負って利用料金を取るなど、「できるだけ負担を少なくする工夫をしていかないと(スマート農業は)うまく回転していかないと思う」。
外国資本の農地取得を懸念
兵庫県養父市の国家戦略特区で認められている企業の農地取得の全国展開を認めるかどうかはこの秋にも焦点となる。
野村氏は「たった1.65haで32haの5%。成功していないと思う。リースでも十分農業はやれるし、むしろそっちのほうがいいと思っている」と話すとともに、他地域では外国資本の参入が懸念されており、企業の農地取得を許すと「外国資本に農地が奪われていく危機感を持っている人が多い」として現場の懸念が払拭できるか措置がとれるかどうか、規制改革推進会議や農水省の検討状況など「中身を見ながら検討していきたい」と述べた。
そのほか地域の農地利用についての目標地図づくりは農業委員会、JA、行政など「すべての団体が集まってワンテーブルで検討して地図づくりをすべき」と強調した。
また、酪農では11月から1㎏当たり10円の生産者乳価の引き上げが実現した。これについて「農産物で唯一価格が決められるのは酪農家。自分たちで交渉し上げる努力をすることが重要。それでも赤字ということになれば国も考えていかなくてはならない。今後、どうするか決めてはいないが、搾乳した生乳を一滴も捨てないでやっていける方法を考えていきたい」と話した。
重要な記事
最新の記事
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(1)2025年9月18日
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(2)2025年9月18日
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(3)2025年9月18日
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(3)病気や環境幅広く クリニック西日本分室 小川哲郎さん2025年9月18日
-
【全中・経営ビジョンセミナー】伝統産業「熊野筆」と広島県信用組合に学ぶ 協同組織と地域金融機関の連携2025年9月18日
-
【石破首相退陣に思う】米増産は評価 国のテコ入れで農業守れ 参政党代表 神谷宗幣参議院議員2025年9月18日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】協同組合は生産者と消費者と国民全体を守る~農協人は原点に立ち返って踏ん張ろう2025年9月18日
-
「ひとめぼれ」3万1000円に 全農みやぎが追加払い オファーに応え集荷するため2025年9月18日
-
アケビの皮・間引き野菜・オカヒジキ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第356回2025年9月18日
-
石川佳純の卓球教室「47都道府県サンクスツアー」三重県で開催 JA全農2025年9月18日
-
秋の交通安全キャンペーンを開始 FANTASTICS 八木勇征さん主演の新CM放映 特設サイトも公開 JA共済連2025年9月18日
-
西郷倉庫で25年産米入庫始まる JA鶴岡2025年9月18日
-
「いざ土づくり!美味しい富山を届けよう!」秋の土づくり運動を推進 富山県JAグループ2025年9月18日
-
日本初・民間主導の再突入衛星「あおば」打ち上げ事業を支援 JA三井リース2025年9月18日
-
ドトールコーヒー監修アイスバー「ドトール キャラメルカフェラテ」新発売 協同乳業2025年9月18日
-
「らくのうプチマルシェ」28日に新宿で開催 全酪連2025年9月18日
-
埼玉県「スマート農業技術実演・展示会」参加者を募集2025年9月18日
-
「AGRI WEEK in F VILLAGE 2025」に協賛 食と農業を学ぶ秋の祭典 クボタ2025年9月18日
-
農家向け生成AI活用支援サービス「農業AI顧問」提供開始 農情人2025年9月18日
-
段ボール、堆肥、苗で不耕起栽培「ノーディグ菜園」を普及 日本ノーディグ協会2025年9月18日