現場ニーズに対応し、子実トウモロコシを導入した大規模輪作の構築プロジェクトで実証研究 農研機構2023年10月20日
東北農政局では、国産濃厚飼料の生産拡大に向け、新たな転換作物としての子実トウモロコシの定着を図るため、宮城県拠点ではJAなど関係機関と連携し、生産者ヒアリング、現場への働きかけ、セミナー開催などの普及活動を実施し、大規模実証の実施につながっている。こうした中、現場ニーズに対応する形で、農水省・農林水産技術会議事務局が委託先である農研機構(代表機関)と直接実施するプロジェクトがスタートしている。その名も「子実用とうもろこしを導入した高収益・低投入型大規模ブロックローテーション体系の構築プロジェクト」だ。
このプロジェクトには、昨年度から宮城県で子実トウモロコシの大規模輪作体系の実証試験に取り組んでいるJA全農、JA古川、JA全農北日本くみあい飼料のほか、東北大学、宮城県、福岡県が共同研究機関として参画し、宮城県大崎市、茨城県つくば市等、福岡県筑後市等での全国的な取り組みを行っている。実証期間は今年度から令和7年度までの3年間となる。
現在、水田における畑利用期間の増加による収量や地力(土壌肥沃度)の低下や、多くを輸入依存する麦、大豆、子実トウモロコシ等の飼料作物の価格高騰や不安定な供給環境への懸念が拡大しており、国内における土地利用型作物の持続的・安定的な生産体系の構築が喫緊の課題となっている、との問題意識がある。
研究内容としては、①従来の輪作体系に子実トウモロコシを導入することによる生産性向上効果を明らかにしつつ、より一層の生産性向上を可能とする施肥体系や残さ処理・耕うん方法などのほ場管理技術の開発・実証を行う。②子実トウモロコシの生産拡大に対応可能な乾燥調製・流通体系を構築する。
大規模輪作の規模は300ha程度を想定。100ha規模の大規模農業法人が増えている中で、それより大きな地域を単位に、子実トウモロコシを導入した新たな輪作体系の社会実装をめざす。今回の実証試験では、当初1haほ場3筆程度を合筆した3haほ場区画を想定していたが、現地の都合もあり現在は1haほ場2筆を合筆した2haほ場区画で試験を行っている。
実証ほ場では、乾田直播、子実トウモロコシ、極多収大豆をセットにした高能率輪作体系を実証しており、乾田直播で利用するチゼルプラウ、バーチカルハロー、グレーンドリル、ケンブリッジローラーなどの高速作業機を汎用利用し、輪作体系全体の高能率化、低コスト化を図っている。また、堆肥利用による輪作水田の地力保全も課題としている。
達成目標は、生産性の向上により経営体全体で収益5%増、堆肥などの有機物の活用により、化学肥料の使用量を30%削減する。これにより、みどり戦略で目指す「高い生産性と両立する持続的生産体系への転換」を加速化し、競争力のある経営体育成に寄与することが期待させている。
なお、同プロジェクトとJA全農・JA古川の実証試験は、子実トウモロコシ導入による後作大豆の収量の向上効果の検証については共通している。一方、100ha規模のJA全農・JA古川の実証試験では、農家所有のロータリーなどの従来作業機を用いるなど、農家の現状に合わせた体系で試験を実施している、という点で両者の違いもある。
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