カンキツの階段畑用に改良 傾斜地向け「片側S.マルチ」開発 農研機構2025年7月30日
農研機構は、カンキツの高品質果実生産技術「NAROS.マルチ」を技術改良し、平坦地だけでなく階段畑でも適用可能な「片側S.マルチ」を開発した。
日本でカンキツ類の栽培面積の約6割を占める温州ミカンは、高糖度の果実に対する消費者ニーズが高いことから、多くの産地では選果場の光センサーを用いて約糖度12度以上(極早生温州は11度以上)の果実を高品質果実として販売している。
高品質果実は、根の周辺の土壌(根圏土壌)を適度に乾かし、樹にほどよい乾燥ストレスを与えることで生産できる。農研機構はこれまでに、根圏土壌を乾燥させることが難しい平坦地でも安定して品質の高い果実を生産できるシールディング・マルチ栽培(NAROS.マルチ)を開発。一方で、温州ミカン園は、傾斜地における階段畑も多く、雨の多い年や土壌の保水性が高い、あるいは日当たりの悪い園地では安定して高品質果実を生産することは難しいことから、NAROS.マルチを階段畑で利用する方法の開発が望まれていた。
図1:片側S.マルチを利用したときの降雨時の水の浸透イメージ
そこで農研機構は、おもに平坦地向けに開発された標準型S.マルチを階段畑用に改良した傾斜地向け「片側S.マルチ」を開発した。片側S.マルチは、階段畑の園地において、植列の山側のみに専用のNAROS.シートを埋設した上で、地表面をマルチシートで覆い、根域の水分制御を行う技術(図1)。効果を得るためには、雨水がマルチシートの上に滞留したり、根圏土壌に入り込んだりしないように排水設計することが必要となる。
農研機構は、福岡県農林業総合試験場と熊本県農業研究センターと共同で片側S.マルチの実証試験を行った結果、技術を導入した園地の果実は、適度な乾燥ストレスにより、従来技術のシートマルチ栽培の果実と比べて糖度が約2度高い12度以上となる高品質果実を安定して生産できることを明らかにした。
片側S.マルチは、平坦地向けの標準型S.マルチと比べてもNAROS.シートの埋設に係る資材と労力は半分になるメリットもある。
同成果について技術の具体的な導入方法と効果をわかりやすく解説した標準作業手順書を農研機構のホームページで公開。実際に片側S.マルチを導入された生産者の声を掲載した動画をNAROchannel(農研機構YouTubeチャンネル)で公開した(図2)。
図2:階段畑用の片側S.マルチを紹介した標準作業手順書とYouTube動画
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(159)-食料・農業・農村基本計画(1)-2025年9月13日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(76)【防除学習帖】第315回2025年9月13日
-
農薬の正しい使い方(49)【今さら聞けない営農情報】第315回2025年9月13日
-
【人事異動】JA全中(10月1日付)2025年9月12日
-
【注意報】野菜類、花き類、豆類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年9月12日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政も思い切りやってほしかった 立憲民主党農林漁業再生本部顧問・篠原孝衆議院議員2025年9月12日
-
【石破首相退陣に思う】破られた新しい政治への期待 国民民主党 舟山康江参議院議員2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政でも「らしさ」出しきれず 衆議院農水委員会委員・やはた愛衆議院議員(れいわ新選組)2025年9月12日
-
ドローン映像解析とロボットトラクタで実証実験 労働時間削減と効率化を確認 JA帯広かわにし2025年9月12日
-
スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加2025年9月12日
-
【地域を診る】個性を生かした地域づくり 長野県栄村・高橋彦芳元村長の実践から学ぶ 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年9月12日
-
(452)「決定疲れ」の中での選択【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年9月12日
-
秋の味覚「やまが和栗」出荷開始 JA鹿本2025年9月12日
-
「令和7年台風第15号」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年9月12日
-
成長軌道の豆乳市場「豆乳の日」前に説明会を実施 日本豆乳協会2025年9月12日
-
スマート農園を社会実装「品川ソーシャルイノベーションアクセラレーター」に採択 OYASAI2025年9月12日
-
ご当地チューハイ「寶CRAFT」<大阪泉北レモン>新発売 宝酒造2025年9月12日
-
「卵フェスin池袋2025」食べ放題チケット最終販売開始 日本たまごかけごはん研究所2025年9月12日
-
「日本酒イベントカレンダー 2025年9月版」発表 日本酒造組合中央会2025年9月12日