農林中金の資産運用 組織体制など論点 農水省の検証会2024年11月26日
農林水産省が設置した農林中金の投融資・資産運用に関する有識者検証会(以下、検証会)の第2回会合が11月25日に開かれ、資産運用に関する組織体制などを検証し意見交換した。12月中下旬に第3回会合を開き、農水省が報告書案を示す。

農林中金の投融資・資産運用に関する有識者検証会(写真は9月27日の第1回検証会)
第2回検証会では第1回会合で指摘された7つの課題に意見交換した。
農林中金の資産運用の組織体制は、理事会がポートフォリオ(資産構成)運営方針を決め、ポートフォリオ・マネジメント会議に資産運用を委託する。一方、理事会はリスク管理の運営を統合リスク管理会議に委託し、定期的に報告を受ける。
こうした体制について委員からは「一見堅牢な市場運用体制が構築されているように見えるが、金利上昇が長期間継続したにもかかわらず、機動的な売却ができなかったなど、組織体制が十分機能しなかったのではないか」との指摘が出ていた。のこの日の検証会でもポートフォリオ・マネジメント会議などの組織の権限や役割分担が不明確ではないかと意見が出た。
理事の専門性については7名の理事のうち市場運用経験者は2名であり「経験者を増やすことを検討し、組織全体のスキルを高めるべき」との指摘が出たほか、専門性の高い外部理事の意見を聞くことが必要との指摘も出た。メガバンクのような社外取締役の必置規定とは異なり、農林中金は農林中央金庫法で理事の兼職兼業が禁止されているが、「多様な視点が確保できていないのではないか」との指摘があった。
また、運用は外部のファンドマネージャーに委託されているが、外部のファンドマネージャーを適切に監督し、リスク全体を管理する人材が必要との意見も出ている。一方で外部委託にもメリットはあることから、外部委託をしっかり活用すべきとの指摘もあった。
資産運用について検証会では運用が債券に集中し、株式や債券、融資などのリスク分散ができていないのではないかと指摘されている。これについては、適切なリスク管理体制を構築したうえで債券の運用期間の長短を組み合わせるなどのリスク分散を図ることを検討することが必要との意見や、農林中金は預金貸し出しを行う機関であり信用事業が本来業務であることから、リスク分散を図るためにも貸し出しの割合を高めることも検討すべきとの議論もあった。
そのほか、農林中金は農業分野の金融機関として農業や食品産業への資金融通を行うことは農林中金の本来業務ではないか、これらの産業への投融資を増やすべきではないかとの指摘もされている。これについてはリスク管理体制を構築したうえでの農業や食品産業への投融資の拡大と、これを担う人材育成を仕組みの検討が必要ではないかとの議論が行われた。
また、農林中金から農業者への貸し出しは少ないことについては「農林中金法で農林水産業への資金融通が目的となっていないことも一因」といった意見も出た。
第1回の検証会では、農業近代化資金やスーパーS資金など系統資金を活用した制度資金の活用が低調で制度資金のあり方から見直すべきと指摘されている。農業近代化資金については「手続きが煩雑で時間がかかるためタイムリーな融資ができない」、「貸付限度額が低い」といった課題がある。この点について農業近代化資金など農業制度資金の法制度を所管する農水省と農林中金をはじめとするJA系統であり方を検討すべきではないかという意見が出た。
議論終了後、座長の川村雄介(一社)グローカル政策研究所代表理事は2回の検証会の議論をふまえ、農水省が報告書原案を作成し次回会合で議論することを提案、委員に了承された。
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