農政変えるのは今 3・30トラクターデモを共に 令和の百姓一揆実行委・院内集会での現場報告から2025年2月19日
令和の百姓一揆実行委が2月19日に開いた国会内集会では、現場から切実な状況報告が相次いだ。以下はその要旨。
令和の百姓一揆実行委の国会内集会でマイクを握って状況報告する天明伸浩一さん(新潟・水田)、
その左が越川洋一さん(千葉・野菜)
農には人を育てる力が
天明伸浩さん(水田、新潟・星の谷ファーム)
3メートルの積雪の地から来た。上越市の中山間地で「つなぐ棚田遺産」にも選ばれた田んぼで米作りをしている。地に足が着いた人生を送りたいと30年前、大学院を出てすぐ就農した。当時の米価は1俵2万4000円だったが、その後、1万2000円になった時もある。続けて来られたのは百姓仲間、地域の仲間、妻子のおかげだ。このかんの米不足の一因は、農家が高齢化し離農していることにあると思う。国は大規模化、集約化を進めるが、100ヘクタールを超える農場では目が行き届かず収量が落ちる。兼業も含め小さな農家がいっぱいあり、多くの人が暮らしていくことが本当に強い農業ではないか。米価が上がってほっとしたところはあるが、消費者が大変なのもよくわかる。貧しくても暮らせる仕組みを整えてほしい。農には人間の限界、成長の限界を知らせ、「人を育てる力」がある。人を守っていくためにも農を守っていきたい。
人を育てる側にも支援を
令和の百姓一揆実行委の国会内集会で状況報告する各地域の農業者。右から長谷川壮也さん(神奈川・果樹)、
松崎泰弘さん(茨城・畜産)、金谷雅史さん(千葉・酪農)、下山久信さん(千葉・有機農業)
長谷川壮也さん(果樹、神奈川・ジョイファーム小田原)
父から果樹を引き継ぎ就農して15年になる。米や野菜と比べて、果樹は何かあったら真っ先に切られる心配がある。社員4人とパート10人を雇用しているが、「働き方改革」で最賃が上がり社保加入もあって人件費が重い。中山間地でミカンを作っているので機械を入れにくい。年3回回ればよかった草刈りも、気候変動で5、6回必要になった。果樹でも高齢化が進み、この5年、急に亡くなる方が周囲に多い。新規就農者への支援は大切だが、「自分のところが大変なんで、研修生はもういいよ」という声を聴く。研修を受け入れる側への支援もお願いしたい。
自助努力だけではもう限界
松崎泰弘さん(畜産、茨城・JAやさと)
畜産は緊急事態だ。自助努力だけではもう限界で、国の後押しがいる。飼料価格が高止まりし燃料も人件費も上がり、非常に厳しい。うちは養鶏だが、追い打ちのように鳥インフルエンザの脅威が迫り心身ともに疲労している。飼料価格安定基金は自家配合飼料だと加入できないなど現状に合わない面がある。制度を見直し拡充してほしい。畜産の持続には飼料自給率の向上が必要だ。これまでの耕畜連携を引き継ぎ、飼料用米、子実トウモロコシへの支援を長期に手厚くしてほしい。
与党も野党もない、共に歩こう
金谷雅史さん(酪農、千葉・ジョンディール)
乳牛を35頭飼っている。一番厳しかったのは2022年だ。「米は自給10円」というが、酪農は年間所得がマイナス48万円だった。米は兼業も含めた平均だが、酪農はみんな主業だ。主業の農家が金を払って牛乳を搾っていた。国も「1頭1万円」の支援をしてくれたが、首の皮一枚つなぐだけで翌月にはなくなった。23年の所得は183万円だったが、24年は「今までで一番悪かった」と酪農家同士で話している。3年間で100万円も稼げていないことになり、「俺たちドレイだかんな」という話も出る。自尊心が傷つけられている。酪農家は1万戸を割ったが、5年たたず半分になるだろう。まずは離農を止めることが先決で、国は農家を安心させてほしい。消費者には牛乳をコップ1杯、いつもより余計に飲んでもらえたら。いまの農政を変えるのか、このままでいいのか。それが問題で、与党も野党もない。消費者のみなさんも、「百姓一揆」を一緒に歩いてほしい。
こんなことしてたら国が終わる
下山久信さん(有機農業、千葉)
これは農水省の政策の失敗だ。改正された食料・農業・農村基本法に自給率はなく、規模拡大・集積・輸出・スマート農業だけだ。3月末に基本計画が閣議決定されるが、パブコメはたったの200字で、地方農政局の開く会では、あらかじめ決められた人しか発言できず、あとはオンラインで見るだけで意見も言えない。日本の農業は弱体化の一途で、こんなことをしていたら国が終わる。与党の過半数割れで衆議院農水委員会は議論が活発になり良かった。声を上げて行動しよう。
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