【育成就労制度で変わる農業現場】「国際貢献」から「人材の育成・確保」へ(1)2026年2月9日
外国人材の「技能実習制度」が廃止され、2027年4月1日から新たに「育成就労制度」が施行される。農業分野では現在、技能実習生と特定技能で合計約6万人の外国人材が就労し、不可欠な労働力となっている。しかし、新たな制度の周知は遅れており、今から準備を始める必要がある。そこで、アグリビジネス投資育成は日本農業法人協会と協力して、農業分野の投資先向けに「育成就労制度の概要等について~技能実習制度からの主な変更点」を作成し、新制度の概要や移行のスケジュールなどを解説している。

実態に合わせた制度変更
育成就労制度は2024年6月に創設された。制度の移行に伴う経過措置として、施行日から3カ月以内に限り、施行日以降も技能実習生として入国できる。とはいえ、制度変更の周知は遅れている。
育成就労制度は技能実習制度から大きく変わる。このうち、主な変更点と農業分野に関わりそうな部分を挙げる。なお、制度移行に伴う経過措置として、施行日から3カ月以内に限り施行日以後も技能実習生として入国できるが、7月1日以降は育成就労しか認められない。
制度の大きな変更点としてはまず、目的が変わった。技能実習は「技術移転による国際貢献」であったが、育成就労は「特定技能1号水準の技能を有する人材の育成並びに人材確保」に変更された。外国人技能実習生は実質的に現場の労働力不足を補っており、実態に合わせた制度変更となる。
稲作・肉用牛も可能、前職・復職要件も不要に
農業分野で就労できる業務区分には新たに、耕種と畜産に稲作と養牛が加わった。技能の範囲が拡大されたことで、これまで受け入れが難しかった稲作や肉用牛でも活用できるようになる。
また、育成就労では前職や復職の要件が不要になり、就農に意欲がある幅広い人材を採用できるようになった。技能実習では就業する分野の経験や帰国後の復職が要件とされ、就農の意欲があっても未経験者は採用できなかった。
日本語試験合格が必要
一方、負担が重くなるのは、受け入れ先に「日本語能力の向上支援」が義務付けられたことだ。技能実習では、農業分野での入国前の日本語能力の要件は設定されておらず、技能実習中も農業技術実習評価試験に合格すれば、日本語能力が問われることはなかった。しかし、育成就労制度では、入国前、育成就労1年目、育成就労期間中の各段階で、日本語能力やその取得のための支援が義務付けられる。
日本語能力の制度は、2023年に成立した「日本語教育機関認定法」に基づき、文部科学大臣の認定を受けた日本語教育機関が実施する「就労のための課程」を受講するか、制度施行後の経過措置として登録日本語教員による講習も可能とされている。入国前または育成就労1年目に義務付けられるのは、このうち日本語試験の「A1」。これは、日本語能力試験(JLPT)の最も初級の「N5」に相当する。就労期間中に合格が求められるのは「A2」で、JLPTでは一つ上のN4に匹敵する。
本人意向の転籍が可能、初期費用補填も
技能実習制度では認められていなかった「本人意向による転籍」(同一業種内での移籍)が可能になった。ただし、転籍できるのは同一の業務区分で、耕種と畜産の間の転籍も認められない。また、農業分野では1年の転籍制限期間が設定され、転籍を希望する場合は技能評価試験(初級)と日本語試験(A1相当)の合格が必須とされる。
転籍が可能になったことで懸念される過度な引き抜きを防止するため、民間の職業紹介事業者の関与は認められない。管理支援機関やハローワークなど、各種の基準を満たす「優良な受入機関」に限定される。
また、転籍を受け入れる機関は、在籍する育成就労外国人のうち、転籍者が占める割合に上限が設けられた。転籍前に受入機関が負担した職業紹介費や講習費、来日渡航費などの初期費用も、転籍先の受入機関から正当な補填を受け取れる仕組みが制度化された。
管理支援機関の許可要件が厳格
農業分野で影響が大きくなると予想されるのが、管理支援機関の許可要件が厳格化されたことだ。監理・支援を適正に行うための、独立性・中立性や職員の配置・相談体制の担保が目的。このうち、管理支援業務の実務に従事する役職員1人あたりの受入機関は8者未満かつ育成就労外国人は40人未満となった。これにより、中小零細の農業者で、少ない育成就労外国人を必要とする実習実施者は不利になる可能性が高い。
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