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農政:自給率38% どうするのか?この国のかたち -食料安全保障と農業協同組合の役割

食料自給率と食料自給力(2)【田代洋一横浜国立大学・大妻女子大学名誉教授】2018年10月22日

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◆生産力の衰えを示す食料自給力

 「自給力」という言葉は2015年基本計画から登場した。全農地を動員して穀物あるいはいも類を生産したら、どれだけのカロリーを確保できるかを示す。「食料自給率は、我が国農林水産業が有する潜在供給能力を示す指標としては一定の限界」があり、「食料安全保障に関する国民的議論の深化を図る」ために、「いざという時」に問われる潜在生産能力を示す自給力が導入された。カロリー自給率と同じカロリーベースである。
 にみるように、カロリー自給率は21世紀に40%前後に踏みとどまっているが、E.自給力はどんどん低下していった。自給力=農地面積×反収だが、後者は簡単に引き上げられないとすれば、農地面積の減少が決定的だ。そのような「危機」に警鐘を鳴らす意味で、自給力の登場は適切だった。
 ちなみに自給力をもちいて潜在自給率を計算することも可能だ(表のF)、これによるとカロリー自給率の倍の水準になり、21世紀にはほぼ横ばい傾向だが、いざという時に70%程度の自給率しか確保できないのは怖い話だ。

 
 
◆自給率か自給力か

 ところで2015年度の農業白書は、第Ⅱ部の「施策」編では、「食料自給率・食料自給力の維持向上」と自給率を先に置いたが、翌年度から逆転し、自給力が先にきた。そのことが、自給率よりも自給力を重んずべきという判断だとすれば、これまた問題だ。
 自給力は種々の仮定に基づく複雑な計算と説明を要し、しかもその説明は生活感覚からずれている。おまけに輸出、輸入、消費(供給カロリー)といった経済的要因から切り離された供給サイドの物理的な数字に過ぎない。カロリー自給率を基本とし、その補完要素として用いるべきである。

 
 
◆自給率をめぐる21世紀課題

 21世紀に入りカロリーベースの自給率(A、F)はほぼ横ばいだとしたが、そこに一つの陥穽がある。自給率は生産と消費の相対関係である。仮に分子の生産が減っても、分母の消費の減少の方が大きければ、自給率が向上する。21世紀にカロリーベースの自給率がほぼ横ばいだったのは、一人当たり消費カロリー(供給カロリー)が、この15年間に8.5%ほど減少しているからである。そういう相対的な水準ではなく絶対的な水準をみるべき、というのが自給力の趣旨だろう。
 21世紀には、絶対水準としての自給力とともに、金額ベースのB.Cの自給率の低下が激しい。円安下では輸入は減るはずだが、.輸入浸透率がアップしているのは脅威である。金額ベースは為替により変動する難点があるが、21世紀に注目すべきは生産額ベースの自給率(輸入浸透率)である。

 
 
◆なぜ金額ベースの自給率が下がるのか

 金額ベース自給率が下がるのは、カロリーにあまり反映しない野菜・果実等の輸入増と生産減少が著しいからだ。今日の食生活は「ドカ弁」時代ではなく、栄養バランスが大切だ。基本計画は2025年度の品目別の生産目標も掲げ、それに対して2017年度の実績を公表している。それによると野菜84%、果実90%と達成率が低く、輸入が増えている。
 人間のギリギリの生存にとってカロリーは大切である。しかし現代生活にはミネラルや微量要素も重要だ。阪神大震災の時、皇后が被災地の病院に贈り、そして最も喜ばれたのはたくさんの黄色い水仙の花束だった。花にカロリーはないが、「心のビタミン」として欠かせない。

 
 
◆食料安全保障

 最近また食料安全保障という言葉がよく使われるようになった。どうも世界で紛争が絶えなくなったからかもしれない。新基本法は、第2条1項で「将来にわたって、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給」できることを目的とした。この「食料の安定供給」が食料安全保障ということだろう。そのためには「国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄を適切に組み合わせ」なければならない、とした。基本はあくまで国内生産、自給率である。
 さらに第2条4項で「不測の要因」に備えるとし、それを受けて第19条で「不測時における食料安全保障」を定めた。新基本法で「食料安全保障」の言葉が用いられるのは、この19条のタイトルとしてだけである。つまり食料安全保障はギリギリ「いざという時」への備えと言える。
 しかし地球は今、化石エネルギーの使用(二酸化炭素の排出)により、地質史における新生代第四期(現在)を超える「人新世」に入ったとされる(ボヌイユ他『人新世とは何か』青土社)。地質に刻み込まれるような地球史的変化の中に食料生産もまたあるということだ。日本近海ではまず魚やサンゴが北上し始めた。
 加えてトランプの登場で米中は覇権国家をめぐる百年戦争に突入した。そこでは食料をめぐる攻防が激しくなり、そのあおりを食料小国・日本が受ける可能性が高い。
 このような時代、食料安全保障は「いざという時」のみならず、平時の課題である。地球や世界を視野に入れた食料安全保障政策が不可欠であり、カロリーベース自給率、生産額ベース自給率、輸入浸透率、自給力、さまざまな角度からの監視と対策が欠かせない。

 

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特集「自給率38% どうするのか? この国のかたち-食料安全保障と農業協同組合の役割」 

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