農政:許すな命の格差 築こう協同社会
【許すな命の格差 子ども食堂の現場から】多世代がつながる地域づくりの場-最新調査結果より2021年9月6日
NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえは全国の子ども食堂の今が分かるアンケートを実施している。第5回調査は今年6月から7月にかけて実施された。コロナ禍でも子ども食堂の9割が活動し、そのうち弁当や食材配布などの活動に切り換えて実施している団体が7割にのぼっている。災害といっていい感染症の拡大という非常時のセーフティネットとして機能している。

地道な活動に取り組む
「むすびえ」のまとめによると、子ども食堂が発足したのは2012年のことで2016年には全国で319か所だった。それが2019年には3700、2021年には5000カ所を超えた。4年間で15倍以上に増えたことになる。今回のアンケートの回答団体446件のなかでも2016年から18年に始めた子ども食堂が59.9%となった。
運営団体は任意団体(市民活動)が45.1%ともっとも多く、次いでNPO法人19.1%、個人14.6%となっている。
子ども食堂の活動について昨年9月調査では、人数制限などをしながらも開催しているのは11.9%と大きく減少した。それが今年6月の調査では19.1%と7.2%増加した。非開催の理由は「感染防止の対応が難しいため」が69.9%、「活動場所が利用できないため」が27.5%、「自治体から自粛・中止が求められているため」が16.5%となっている。
子ども食堂を現在開いていない団体に今後の見通しを聞いているが、今年2月の調査では「再開予定は立っていない」が50.7%だったが、今回は2.5%へと激減し、8月から10月以降に再開する予定と回答したのは30%を超えた。
また、湯浅誠理事長へのインタビューでも指摘されたことだが、注目されるのは弁当・食材配布など、いわゆるフードパントリー活動へと切り替えて人と人とのつながりを維持しようとしている団体が69.8%に達していることだ。コロナ禍でも粘り強く活動していることが分かる。

お菓子に見向きせず「お母さん、お米があるよ~」 増える困窮世帯
今回のアンケートではコロナ禍で子ども食堂に参加する人々の変化を聞いている。自由記入欄に書き込まれたなかで目につくのは「困窮家庭の増加」と報告している。
現在約7割の子ども食堂が弁当や食材配布の活動を行っているが、困窮者の数が増えていることが活動の現場でよく話にのぼることだという。それがアンケート結果でも裏づけられたと分析している。
その理由として報告書は▽コロナ禍の長期化で社会全体に困窮者が増えた、▽行政が困窮家庭に食材・弁当の配布案内をすることが増えた、▽一堂に会する場よりも、食材配布の活動のほうが個々の家庭の事情が話題になりやすく、結果として困窮しているという事情が明らかになった、の3点を指摘している。さまざまな活動によって困っている人たちが浮き彫りになってきたともいえそうだ。
回答には「一人親さんから困っている状況を打ち明けられたり、困窮家庭の困り具合が表に出てきたと感じます」、「一緒に来た子どもがお菓子に見向きもせずに、お母さん、米があるよ~と嬉しそうに言っていた。この活動をやっていてよかった」などがある。もちろん子どもではない。「それまでは物資を配布しても、ありがとうだったのが、高齢者が「助かります」と涙ぐまれる様子に胸が詰まります」といった回答も寄せられている。
報告書では「多世代交流拠点として広がってきた子ども食堂がコロナ禍という非常時・災害時において、困窮家庭を支えるセーフティネットとして機能している姿が改めて明らかになった」と強調している。
湯浅誠理事長によると子ども食堂が増えるきっかけの1つは災害だという。熊本地震の後、県内で300か所以上の子ども食堂が始まった。また、平成30年の7月豪雨の際には、愛媛県宇和島市ではそれまでゼロだった子ども食堂が一気に13か所も立ち上がった。そうした活動が今のコロナ禍という非常時のセーフティネットにもなっている。
子ども食堂という「平時のつながりづくり」が「非常時にセーフティネット」になることを示している。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(166)食料・農業・農村基本計画(8)農業の技術進歩が鈍化2025年11月1日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(83)テトラゾリルオキシム【防除学習帖】第322回2025年11月1日 -
農薬の正しい使い方(56)細菌病の防除タイミング【今さら聞けない営農情報】第322回2025年11月1日 -
酪農危機の打破に挑む 酪農家存続なくして酪農協なし 【広島県酪農協レポート・1】2025年10月31日 -
国産飼料でコスト削減 TMRと耕畜連携で 【広島県酪農協レポート・2】2025年10月31日 -
【北海道酪肉近大詰め】440万トンも基盤維持に課題、道東で相次ぐ工場増設2025年10月31日 -
米の1等比率は77.0% 9月30日現在2025年10月31日 -
2025肥料年度春肥 高度化成は4.3%値上げ2025年10月31日 -
クマ対策で機動隊派遣 自治体への財政支援など政府に申し入れ 自民PT2025年10月31日 -
(459)断食:修行から管理とビジネスへ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月31日 -
石川佳純が国産食材使用の手作り弁当を披露 ランチ会で全農職員と交流2025年10月31日 -
秋の果実王 旬の柿を堪能 福岡県産「太秋・富有柿フェア」開催 JA全農2025年10月31日 -
「和歌山県産みかんフェア」全農直営飲食店舗で開催 JA全農2025年10月31日 -
カゴメ、旭化成とコラボ「秋はスープで野菜をとろう!Xキャンペーン」実施 JA全農2025年10月31日 -
食べて知って東北応援「東北六県絆米セット」プレゼント JAタウン2025年10月31日 -
11月28、29日に農機フェアを開催 実演・特価品販売コーナーを新設 JAグループ岡山2025年10月31日 -
組合員・利用者に安心と満足の提供を 共済事務インストラクター全国交流集会を開催 JA共済連2025年10月31日 -
JA全農と共同開発 オリジナル製菓・製パン用米粉「笑みたわわ」新発売 富澤商店2025年10月31日 -
【スマート農業の風】(20)GAP管理や農家の出荷管理も絡めて活用2025年10月31日 -
農業経営効率化へ 青果市況情報アプリ「YAOYASAN」に分析機能追加 住友化学2025年10月31日


































