松林が消滅の危機 松くい虫の被害広がる2013年7月18日
農薬工業会は7月5日、都内で「農薬に関する情報交換会」を開いた。本山直樹千葉大学名誉教授が「日本の松が消えていく! 松くい虫による深刻な被害に関する最近の研究結果」のテーマで講演した。
◆美保の松原も被害
先般、美保の松原を含む富士山一帯が、世界文化遺産に登録されたという朗報に日本中が歓喜した。美保の松原は、端麗雄大な富士山を望む白砂青松の景勝地だ。その美保の松原の松が、松くい虫の被害により深刻なダメージを受けているという。
本山教授は、松くい虫の被害により「美保の松原をはじめ、白砂青松と謳われる日本の松林が消滅の危機にある」と警鐘を鳴らす。松くい虫による被害は、長崎から始まり、北上を続け青森に到達しているという。
「松枯れ」伝染の経緯は100年ほど前に遡るが、北米から長崎県へ輸入された松材に寄生していたマツノザイセンチュウ(線虫)によるものだ。この線虫は、日本在来のマツノマダラカミキリと共生関係が成り立ち、「松枯れ」被害をもたらした。
美保の松原には、約5万本の松があるが、2005年から12年にかけて、延べ6255本の松くい虫被害松を伐倒駆除したという。松原全体の1割以上の松が枯れたということだ。有名な「羽衣の松」も枯れ、今は二代目の松が継承しているとの話だ。
(写真)
本山教授
◆農薬に頼らない防除が失敗か?
山形県の庄内海岸一帯に広がる黒松の砂防林や、隣接する秋田県の夕日の松原は、景勝美観というよりは、風砂を防ぎ地域の暮らしと文化を守ってきた松林だ。そこでの「松枯れ」被害も増えているという。
松くい虫被害が拡大した原因は、農薬散布に頼らずに松くい虫を防除しようとして、失敗したことだといわれている。その背景には、農薬散布に対し過度の拒否反応を示す地域住民への遠慮や、農薬使用に反対する見解があったことなどが挙げられる。
日本の松を救うには、どういう手法があるのか、農薬散布は地域環境に影響を与えるのか、示唆に富んだ講演となった。
(関連記事)
・JAで微粒剤Fの利用すすむ 農薬工業会講演会(2013.07.12)
・JAグループの安全防除運動について 農作物・生産者・環境の安全を守り、効率的な防除を(2013.05.31)
・政策提言、広報活動などを強化 農薬工業会が総会(2012.05.26)
・6月から8月まで「農薬危害防止運動」(2013.05.14)
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