ラウンドアップ問題を考える 緊急セミナー開催2019年10月24日
農業技術通信社と食品安全情報ネットワークは10月21日、「農薬の安全性とラウンドアップの風評被害」をテーマにラウンドアップ問題を考える緊急セミナーを都内で開いた。米モンサント社が開発した除草剤「ラウンドアップ」について農業・農薬の専門家による科学的な視点と、現場の農業経営者による実感からむやみに恐れて風評被害を引き起こしかねない現状に警鐘を鳴らした。

セミナーには農薬販売会社や生協、生産者、メディアなど予想を超える140人が集まった
ラウンドアップ(有効成分:グリホサート)は、米モンサント社が1974年に発売した除草剤。その安全性が世界の規制機関に認められて世界中に広がった。しかし、1996年ごろから始まった遺伝子組み換え作物(GM)の商業栽培の流れのなか、GM作物の8割がラウンドアップを散布しても枯れなかったことから、ラウンドアップとモンサント社は反GM運動の標的となり悪評が広がる。さらに2015年以降は国際がん研究機関(IARC)がグリホサートを「おそらく発がん性がある」グループの2Aに分類したことから、米カリフォルニア州ではがんとの関連性をめぐる訴訟がいくつも起きている。
また、日本国内でも体内からグリホサートが検出されたとして国会議員や市民グループが使用規制を求めるなど大きな注目を集め、その危険性を訴える情報がネットメディアやSNSを中心に拡散されるなか、農業者に戸惑いも広がっている。
セミナーでは、残留農薬研究所毒性部長の青山博昭氏が「農薬の安全性はどのように確かめられているか」として、リスク評価の仕方や農薬の毒性と医薬品の副作用の違い、ヒトに対する安全性を担保するための主な毒性試験などについて説明。また、(公財)食の安全・安心財団理事長で東京大学名誉教授の唐木英明氏が、グリホサート問題をめぐる背景や訴訟について事例を挙げながら、「科学を無視した世界規模の風評発生のメカニズム」を説明した。
風評被害が広がる大きなきっかけが、GMトウモロコシとラウンドアップによりラットに乳がんが増加したとして2012年9月に発表された「セラリーニ論文」。論文は検証の結果、科学的に否定され、ラウンドアップに発がん性はないと証明されたが、今もなお反GM派の主張の根拠として使われているという。
ほかにも、IARCが発表した発がん性へのリスク評価が絶対的なものであると誤解されて広まるなか、米国の「たばこ訴訟」に習って争った弁護士が20億ドル(2160億円)の判決を勝ち取り大きな話題となった。
これらの実例から唐木氏は、「科学的根拠をふまえて冷静に判断することは重要だが、それだけでは人の心は絶対に動かせない」と風評に立ち向かうためのアピールやスキルが科学者にも求められることを訴えた。

左から水木氏、青山氏、唐木氏、浅川氏、
司会進行で食生活ジャーナリストの会代表の小島正美氏(パネルディスカッション)
続くパネルディスカッションでは、青森県弘前市の「あっぷるりんご園」代表の水木たける氏が現場の農家の目線からラウンドアップ問題に意見を述べた。
ラウンドアップについて水木氏は、「小学生のころから身近にあり、普通に使ってきた。ここにきて発がん性があり、"危険なモンサント"が作った薬剤という声がSNSで広がっているが、体感的に危険性はないし、現場の状況から考えてもおかしい情報が多い」と語った。
ラウンドアップは遺伝子組み換え作物が登場する前から現在まで世界で最も使われている除草剤だ。発売からすでに45年が経ち、米国環境保護庁(EPA)をはじめ専門機関が安全な商品と認めたにも関わらず、なぜラウンドアップはこれほどまでに叩かれるのか。
その一因として、農業ジャーナリストの浅川芳裕氏は、訴訟社会ならではの米国の弁護士ビジネスの状況を挙げる。
「例えば、弁護士は発がん性商品らしきものを売る会社の営業利益を調べる。その中でもバイエルに買収されたモンサントならより賠償金が増えるはずだとさらに大きな弁護団を組もうというマーケットメカニズムが働いている」と説明した。
ラウンドアップは、その安全性が科学的に証明されている。現代の農業において欠かせない必要な防除資材であるという事実を消費者の肚に落ちるように伝えられなければ、SNSなどにより拡散していく風評被害を止めることはできないと強調。
水木氏は「農薬が危険、使わないことが安全と言うが、農薬を使わないとリスクがあるケースもある。例えば、無農薬リンゴは農薬リンゴよりアレルギー物質が5倍になるというデータもあるが、リンゴは病害にやられると自分の種を守るために自ら農薬物質を作るからだ。メディアにはこうした消費者のプラスになる本当の情報も扱ってもらいたい」と注文した。
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