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シリーズ:現場で役立つ農薬の基礎知識 2013

2013.04.16 
【現場で役立つ農薬の基礎知識 2013】[2]水稲用除草剤の上手な使い方一覧へ

・なぜ除草剤は効くのか
・代掻きを丁寧に均平のとれたよい田で
・2種以上組合わせた剤が中心
・普及面積増やすテフリルトリオン剤やALS阻害剤
・使用時期や剤型による分類
・選択のポイントは雑草の発生具合や作業体系で
・当たり前のことを確実に

 「雑草をいかに抑えるか」これは、農耕が始まって以来、ずーっとつきまとっている課題である。昔、除草剤がなかったころは、労働時間の相当大きな部分が除草作業に費やされており、除草剤が登場してからは、随分と労力が軽減したのは誰もが疑う余地はないことだろう。種々雑多は植物が生きている自然界で、単一の作物を作ろうというのだから雑草が蔓延するのも無理もない話だが、豊かな収穫を得るためには、雑草の害を如何に防ぐかが最も重要である。
 その重要な除草作業を効率的に実現してくれる除草剤は、使い方をよく理解して行うのと、そうでない場合とでは結果に大きな差が出てしまう。今回、水稲除草剤の上手な使い方を整理してみたので参考にしてほしい。

※この記事は2013年に掲載した内容です。

水稲用除草剤の使い方に関する2018年最新記事は、
水稲除草剤の上手な使い方 進化する薬剤を適期に使用!
をご覧ください。

 

除草剤の効き方からみた上手な使い方

seri1304160706.jpg◆なぜ除草剤は効くのか

 除草剤ってどのようにして雑草を枯らすのであろうか。このことを意識して除草剤を使用している方は意外と少ないように思う。しかし、このことを知るのと知らないのとでは、除草剤の効果の出方に差が出るので是非頭においてもらいたい。
 水田での代表的な雑草であるヒエを例に考えてみる。ヒエは、イネと同じイネ科の作物であるので、ヒエに効く除草剤であれば、イネにも何らかの影響があるのは間違いない。では、どうやってイネに害がなく、ヒエだけを枯らすことができるのか?
 多くの除草剤が、ヒエとイネの生長点の位置の差を利用している。水稲除草剤の多くは、湛水状態で処理された後、田面水を介して、水田土壌の表面に処理層(除草剤の有効成分を含む土壌の層)をつくる。移植栽培の場合、イネは育苗されて本葉が2枚とか3枚出た段階で植え付けられるため、根っこや生長点は土の中にあり、イネの生長点は除草剤の処理層にあたることはない。
 しかし、ヒエの場合は、土の中の種子が発芽すると、弱々しい芽とその芽の基部にある大事な生長点が除草剤の処理層に触れることになり、枯れてしまうことになる。
 また、除草剤が処理された段階で既に発芽し生育しているヒエの場合でも、その生長点は土壌表面つまり処理層に近いところにあるため、除草剤の影響を受け、枯れてしまうのである。

◆代掻きを丁寧に均平のとれたよい田で

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 ただし、ヒエの葉齢がある程度進んでしまうと、生長点の位置が変わるなど除草剤の影響を受けにくくなり枯れずに残ったりする。
 このため、水稲除草剤の場合、必ず「移植後何日まで、ただしノビエ○○葉期まで」などと表記し、その除草剤が枯らすことができるヒエの葉齢限界を示しているのである。
 このことは、実は除草剤の薬害回避にも関係してくる。よく除草剤の注意書きに「軟弱徒長苗や極端な浅植えは避けて下さい」と書いてあるが、これは、前述したように除草剤の処理層は土壌の表面に形成されるため、イネが軟弱だったり、イネの根もと近くにある生長点や根っこが浅植えのために除草剤の処理層に触れてしまったり、あるいはごく近くに位置してしまい、除草剤の影響をモロに受けやすくなるためである。
 これが、水稲用除草剤の上手な使い方に「代かきを丁寧にやって土の戻りの良い均平のとれたよい田んぼに、健康な苗を2〜3cmの植付け深度でしっかりと植え付けて下さい。」と繰り返し書かれている理由でもある。


除草剤の種類と上手な選び方


◆2種以上組合わせた剤が中心

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 水田に発生する雑草は、ノビエやアゼナなどの一年生雑草やホタルイやクログワイ、オモダカなどの多年生雑草、はたまたイネと同じ種類のイネ科雑草やイネ科以外の広葉雑草など色んな種類の雑草が生えてくる。
 1成分で全ての雑草を枯らせるとありがたいが、現在使用されている水稲用除草剤で、全ての雑草に実用的な効果を示すものはほとんどないのが現状である。
 畦畔除草や畑地で使用されるグリホサート系(ラウンドアップ)やグルホシネート系(バスタ)など非選択性の茎葉処理剤は、1成分でどんな雑草も枯らしてしまうが、これらは、作物まで無差別に枯らしてしまうので、作物が植わっている状態では使用することはかなり難しい。

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 そのため、多くの場合、ヒエ以外の雑草を枯らすことができる成分(母剤)と、主としてヒエを枯らす力に優れた成分(ヒエ剤)とを2種以上を組み合わせた除草剤が使用されている。

◆普及面積増やすテフリルトリオン剤やALS阻害剤

 いわゆる母剤と呼ばれる有効成分には、スルホニルウレア系剤(ベンスルホロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロン、シクロスルファムロンなど)が主流であり、現在でも多くの除草剤がこの成分を含んでいる。
 しかし、最近ではスルホニルウレア系除草剤に抵抗性を示す雑草も多くなったことから、それら抵抗性雑草を抑える力を持ったテフリルトリオンや新規のALS阻害剤(ピリミスルファン)が登場し、普及面積を増やしている。特にテフリルトリオン剤は、2成分で幅広い雑草に長い効果を発揮することから近年急速に普及面積を増やしている。
 一方ヒエ剤には、オキサジクロメホンやフェントラザミド、メフェナセット、プレチラクロールなどがあり、母剤との組み合わせで多種多様な除草剤が使用されている(表1、表2)。

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(表1、表3は、クリックすると大きなサイズのPDFファイルにリンクします)

◆使用時期や剤型による分類

 ところが除草剤は、有効成分の違いだけではなく、その使用時期によってさらに分類される。つまり、田植え直後から田植え5日後頃までに使用する除草剤を初期剤、田植え20日〜25日後頃までに使用する除草剤を中期剤、それ以降に使用する除草剤を後期剤と呼んでおり、加えて、1回の処理で初期と中期の両方の期間をカバーできる除草剤を初中期一発剤と呼んでいる。
 現在は、この初中期一発剤が主流を占めており、前述したスルホニルウレア系剤やテフリルトリオン剤の多くがこれに分類されている。
 さらに、水稲用除草剤には同じ有効成分を含む同じ名前の除草剤であっても、剤型によってさらに分けられる。昔からよく使われている粒剤(1kgキロ剤、3kg剤)、液状タイプのフロアブル剤、一定の個数を投げ込むジャンボ剤、最近では粒剤を改良し、10アールあたり250gの豆粒状の粒剤を撒く省力型の豆つぶ粒剤なんてものもある。

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◆選択のポイントは雑草の発生具合や作業体系で

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 このように、あまりにもたくさんの除草剤があるので、使用する除草剤を選択するのも一苦労である。一つ除草剤を選ぶにしても、生産者の田んぼの状態や好みなどに適したものを、有効成分や使用時期、撒き方などを考慮して選ばなければならいので骨の折れることであろう。
 選択のポイントは、雑草の発生具合や経営規模による作業体系に合わせて、初期剤+初中期一発剤の体系使用、あるいは初中期一発剤の単独使用を選択すればまず間違いはないだろう。
 また、スルホニルウレア系除草剤の抵抗性雑草が問題となる地域では、ブロモブチドやベンゾビシクロン、クロメプロップといった抵抗性雑草対策成分を含むものを選ぶようにすると良い。
 新規剤のテフリルトリオン剤は、2成分でありながら、田植え後10日頃の遅めの処理でも幅広い雑草に安定して効果を示し、しかも除草効果が長く持続するので、初中期+初中期一発処理剤の体系処理と同等以上の除草効果を発揮できるようである。この場合、1回の処理で、除草剤代金と散布労力を節約できることになるので、有力な選択肢になりうるだろう。

◆当たり前のことを確実に

 水稲用除草剤の上手な使い方を整理するとおおよそ次のようになる。
 まず第1に健全な苗を育て、代かきを十分に行ってデコボコのない均平な田んぼにする。第2に発生している雑草の状況(発生の種類、発生の時期)を把握し、それにあった除草剤を選択する。第3に、使用する除草剤の適用内容や注意事項をよく読んで、選択した除草剤が最も効果を発揮できる時期を逃さずに使用量や使用条件を守って、きっちり均一に散布する。第4に除草剤散布後の水管理(7日間止水など)を着実に実行する。
 これらは、従来からいわれているごく当たり前のことではあるが、実際の使用現場では、これらのどこかが抜けたり、ミスしたことが原因となって、雑草の取りこぼしや薬害の発生に結びついてしまうことが多い。
 水稲用除草剤が水を介して拡散し処理層をつくるという特性がある以上、特に土壌の均平度と水管理が最も重要である。このことを十分に理解した上で除草剤が使用され、除草剤が持つ本来の性能を十分に発揮されることを願うものである。

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