農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識 2013
【現場で役立つ農薬の基礎知識 2013】[11]暑い夏の施設病害虫防除にはハウスの蒸し込み処理が最適!2013年8月9日
・病害虫で異なる死滅温度と継続時間
・基本的な蒸し込みの方法
・プラスチックパイプが変形しない方法
・ウイルス病発生地域では必ず実施を
今年は真夏日の回数が前年を既に超えてしまった都市が多数あり、前年の回数の200%を超えるところもあるとのことで、文字通り暑い夏となっている。前半は、温度が低い日もあり、一時水稲の生育が遅れた地域もあり心配されたが、すっかり回復したようで、むしろ白未熟粒が心配になってきた。各府県から出されている白未熟粒対策をしっかりと行っていただき、笑顔で収穫を迎えられるように願っている。
さて、夏といえば、病害虫の発生が多いし、防除作業するにも暑くてかなりの重労働であるしと、農作業にとっては過酷な季節でもある。
そんな季節だからこそできる病害虫防除法が、太陽熱を利用した消毒法や防除技術であり、特に施設栽培には有効な技術である。今回は、果菜類の病害虫防除に効果のあるハウスの蒸し込み処理について調べてみた。
ハウス内を病害虫の
死滅温度以上の高温に
◆病害虫で異なる死滅温度と継続時間
基本的に、ハウスで栽培する作物に発生する病害虫に効果を発揮する技術である。原理は簡単で、密閉することによりハウス内の温度を病害虫の死滅温度以上に高温にして、中にいる病害虫を一網打尽にする方法である。
病害虫の死滅温度とその必要な継続時間は、
○アザミウマ類やハモグリバエ類が45℃以上で1時間以上
○コナジラミ類が40℃以上で5日間以上
○大概の病害や雑草の種が60℃以上で30分?40分以上と言われている。
つまり、この温度以上に温度を上昇させて、その温度を必要な時間継続できれば病害虫を防除できることになる。
(写真)
対象病害虫の死滅温度によって密閉日数は異なる
◆基本的な蒸し込みの方法
具体的な方法は、都道府県によって栽培様式や時期が異なるため、少しずつ異なるようであるが、基本的にはおおよそ次のような方法で処理する。
(1)栽培収量後に誘引したまま作物の根もとを切るか根をひっこ抜く
(2)ハウスを密閉して温度を上昇させ、5日?7日間はそのまま放置する。
地域や天候によって日照量が異なるので、放置日数は、ハウス内温度の上がり具合を確認しながら、防除対象病害虫の死滅温度によって調整する。また、地元の指導機関から放置日数についての指定があればそれに従うこと。
(3)ハウスを開放して残さをハウス外に出す。
(4)残さを適切に処理する。
残さの処理は、圃場へのすき込み、あるいは消防署へ事前連絡の上で焼却処理ができれば理想である。ただし、地域によってやり方、ルールが異なるので十分にご確認願いたい。
ただし、この方法にも欠点があるようだ。例えば、土壌中にいる病害虫や熱に強いハダニ類には効果が薄い点である。土壌中はハウス空間内よりも温度が上がりにくく、温度上昇が十分でなく、土壌中の病害虫の死滅温度に達しないことが多いからである。特に、地面の奥深くにいる病害虫には効果が期待できない。
(写真)
葉上のコナジラミ
◆プラスチックパイプが変形しない方法
ところで、ハウス内にプラスチック製のパイプが使用されていると、それらがあまりの高温のため、変形してしまうことがある。このことを避けるため、収穫終了後に根を切るか引きぬくかしたのち誘引を解き、植物残さを畝上に並べ、その上にマルチをベタがけし、入口や側窓は密閉し、天窓のみ開放して蒸し込みを行う方法もある。
これは、天窓のみを開放して熱を逃がすことで、ハウス内がパイプの変形温度にまで達するのを防ぐことができる。
また、マルチのベタがけの下の温度も効率よく高温になるため、消毒効果もあがるようだ。
(写真)
マルチで被覆して密閉し、天窓のみ解放することでハウス内パイプの変形を防ぐことができる
◆ウイルス病発生地域では必ず実施を
果菜類に発生する、コナジラミ類やアザミウマ類、ハモグリバエ類や灰色かび病などに効果がある。
特に、コナジラミ類は、TYLCVなど恐ろしいウイルス病を媒介するので、その病気の蔓延を防ぐためにも、ハウスの外に作物残さとコナジラミを外に出さないように注意が必要とのこと。この際に、このハウスの蒸し込み処理が有効である。
ハウスの蒸し込み処理のメリットは、病気のもとや媒介虫をハウスの外に出さないようにすることと、病害虫の発生密度を減らして農薬の効果が高く安定するようにすることにある。
特にウイルス病はいったん発生すると、株を引き抜くことしか防除の手立てがないため、媒介虫を、ハウス内に侵入させない(防虫ネットの利用)、増殖させない(殺虫剤の利用)、外に出さないこと(ハウスの蒸し込み)の3つを確実に行うことが特に重要であるとのこと。
ウイルス病が発生しているような地域では、特に実施していただきたい防除法である。
(写真)
ミカンキイロアザミウマ
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日