農薬 シリーズ詳細

シリーズ:現場で役立つ農薬の基礎知識2018

【佐賀県果樹試験場病害虫研究担当 衞藤友紀】

2018.07.23 
【現場で役立つ農薬の基礎知識2018】果樹カメムシ防除のポイント 飛来初期の低密度時に防除を一覧へ

 この時期は、果樹栽培で大きな被害をおよぼすカメムシ類の防除が、品質の良い果樹を出荷するために欠かせない。そこで、果樹カメムシ類防除のポイントを佐賀県果樹試験場の衞藤友紀氏にまとめていただいた。

 果樹を加害するカメムシ類(以下、「果樹カメムシ類」と省略)の主な加害種は、チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシおよびクサギカメムシの3種である。これらの成虫は4月から10月頃まで長期間に渡って果樹園に飛来し、果実等を吸汁して、被害を及ぼす。
 果樹カメムシ類の発生量は、(1)餌となる山林のヒノキおよびスギの毬果の結実量に応じて変動すること、(2)年によって果樹園への飛来時期が異なることから、防除時期および防除要否は各園地への飛来状況を確認してから判断する必要がある。そのため、果樹園を日頃からこまめに観察し、飛来が確認されたら直ちに薬剤を散布する必要がある。


◆果樹カメムシ類の発生生態

農薬の基礎知識(1)落果したミカン果実 果樹カメムシ類は成虫で越冬する。(1)チャバネアオカメムシは常緑樹の地表面の落ち葉の中、(2)ツヤアオカメムシは常緑樹の繁茂した葉等の隙間、(3)クサギカメムシは樹木等の樹皮のすき間などが主な越冬場所である。春に活動を開始した成虫は、果樹を含む多くの樹木の果実や新梢等を吸汁する。
 成虫は、6月下旬頃から主にヒノキやスギに移動して毬果を吸汁するとともに、雌成虫は毬果が結実した枝などに産卵する。幼虫は毬果の中の種子を餌として成長し、8月中旬頃から新成虫が発生する。そのため、ヒノキやスギの毬果の結実量が多い年には、8月中旬以降の果樹カメムシ類の発生量が多くなると想定される。その結果、果樹カメムシ類により養分が吸い尽くされた毬果内の種子は、餌として不適となり、成虫はヒノキおよびスギから分散し始めて、果樹園等に移動する。
 カンキツ、ナシ等の果実はチャバネアオカメムシやツヤアオカメムシの幼虫が成長するための餌としては不適であるが、クサギカメムシの幼虫は成虫まで発育できる。また、ツヤアオカメムシは、カンキツの樹上でも越冬するため、越冬していることに気付かない場合、収穫するまで被害が続くことになる。他にも、果樹カメムシ以外にミナミトゲヘリカメムシ、オオクモヘリカメムシ、クモヘリカメムシおよびマルカメムシなども果樹園へ飛来し、果実を加害するので、十分に注意する必要がある。

(写真)果樹カメムシ類の吸汁被害を受け落果した温州ミカン果実

 

◆果樹カメムシ類による被害

 果樹カメムシ類は、果実や新梢などに口針を刺して果汁および樹液などを吸汁する。果実の場合、変形、落果、さらには腐敗の原因となることがある。新梢では枯死する場合もある。特に、収穫時期の早い果樹、熟期の早い品種では、被害の発生が早いので、本虫の飛来・被害には十分に注意する。
 また、果樹カメムシ類は山林のスギ・ヒノキ等で成虫になり、果樹園に飛来・侵入する。そのため、風の吹きあがる尾根沿い、風の通り道となる谷筋などの果樹園では、果樹カメムシ類が飛来しやすく、被害が大きくなる傾向がある。このような果樹園では、少発生が予想される年であっても被害を受けることがあるので十分に注意する。


◆果樹園への飛来時期を把握すること!

農薬の基礎知識(2)チャバネアオカメムシ成虫 果樹カメムシ類は、果樹ではほとんど増殖せず、山林等で増殖した成虫が果樹園へ飛来して、被害が発生する。そのため、成虫が飛来するまでは薬剤を散布する必要は無く、果樹園への飛来を確認してから薬剤を散布する。
 果樹カメムシ類は、雄が飛来して果樹園に定着すると、集合フェロモンを放出して次々に同種の仲間を呼び寄せることが明らかとなっている。そのため、飛来初期に薬剤防除をしないと多数の成虫が飛来して生息(定着)密度が高くなり、被害が大きくなる。薬剤の散布時期が遅くなり、果樹園内での生息密度が高くなった場合、薬剤を散布しても十分な防除効果が得られないこともあるため、果樹園への飛来状況を常に確認して、飛来初期の低密度時に防除を行うことが重要である。また、飛来は果樹園全体に発生することもあるが、園の隅の方(外縁部)等、局部的に飛来する場合には被害の発生に気付くのが遅くなることも多い。そのため、果樹園を日頃からこまめに観察して、飛来状況を把握する必要がある。
 佐賀県の優占種であるチャバネアオカメムシにおける本年の発生動向は、越冬量が多かったため、8月上旬までの発生は多いと予想されている。8月中旬以降は、(1)餌となるヒノキ毬果の結実量が平年並であること、(3)気象の3ヵ月予報によると夏季の気温は平年並~高く推移する予想から、8月中旬以降の本虫の発生も多くなると予想されている。そのため、園内への飛来に対する十分な注意が必要である。なお、果樹カメムシ類の発生量および果樹園への飛来時期の予想については、各県の'病害虫防除所'などが越冬調査、予察灯およびフェロモントラップ調査、ヒノキの毬果上の生息密度および口鞘数調査などを基にしてホームページなどで提供しているので参考にする。

(写真)チャバネアオカメムシ成虫

 

◆薬剤の使用上のポイント

 果樹カメムシ類の防除対策として、薬剤散布を行うことと、可能であれば防虫ネット、忌避灯の設置などを行う。
 薬剤は、殺虫効果および吸汁阻害効果の高い合成ピレスロイド系殺虫剤であるテルスターフロアブル、ロディー乳剤およびMR.ジョーカー水和剤等やネオニコチノイド系殺虫剤であるスタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶剤、ダントツ水溶剤など、殺虫効果の高い有機リン系殺虫剤のスミチオン乳剤などを散布する。

◆果樹カメムシ類の防除対策

農薬の基礎知識(3)ツヤアオカメムシ成虫 これまで述べたように、果樹カメムシ類による被害防止には、まず、果樹園への飛来初期の低密度時に薬剤を散布して、新たな飛来を阻止することが重要である。
 散布した薬剤の残効期間は薬剤ごとに異なり、ネオニコチノイド系殺虫剤および合成ピレスロイド系殺虫剤で10~14日間程度、有機リン系殺虫剤で1~2日程度である。
 薬剤散布後に雨が降ると薬剤の残効期間が短くなるので注意する。やむを得ず散布後に降雨が予想される場合には、薬剤の耐雨性が比較的高い合成ピレスロイド系殺虫剤を散布する。飛来が長期間続く場合および薬剤散布後にまとまった量の雨が降った場合は、再散布が必要となる。薬剤散布後、果樹カメムシ類の飛来・被害が再確認されたら、薬剤の効果が無くなったと判断して、薬剤を再散布する。
 一方、合成ピレスロイド系殺虫剤およびネオニコチノイド系殺虫剤を散布した後には、ハダニ類やカイガラムシ類が増加することがあるので、薬剤散布後はこれらの害虫の発生状況にも十分に注意する。
 果樹カメムシ類の成虫は飛翔力が高く、広範囲を飛び回る。そのため、地域全体で一斉防除を実施することで、その地域における生息密度を低下させることができ、薬剤による防除効果を高めることができる。果樹カメムシ類による被害は10月頃まで続くため、収穫直前の果実では散布する薬剤の収穫前使用日数および使用回数などの安全使用基準に十分に注意して使用する。

(写真)ヒノキ葉上のツヤアオカメムシ成虫

一覧はこちら

このページの先頭へ

このページの先頭へ