農薬:いんたびゅー農業新時代
【インタビュー 農業新時代】食と生活を支えるソリューション・カンパニーへ 三井化学アグロ(株)小澤敏代表取締役社長2022年1月28日
「日本農業への奉仕」を志として農薬の研究、製造、販売事業を展開してきた三井化学アグロ。今後はどのような方向に進もうとしているのか、小澤敏代表取締役社長に聞いた。
三井化学アグロ株式会社 小澤敏代表取締役社長
食料への関心の高まりを大事に
--新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大から2年が経ちました。内外の農業、食料生産にどのような影響や変化をもたらしたとお考えですか。
農業生産の現場にとっては、海外からの実習生が来日できなくなり農業労働力不足が大きな問題になったと思います。同じようなことはインドをはじめ他の国でも起きていて、ロックダウンで農業労働者が現場に行けなかったということがありました。農業生産の現場では大変な苦労があったと思います。
農薬業界でいえば、原料等を海外から輸入していますから、やはりその調達がロックダウンで影響を受け、さらに製造工場だけではなく港湾など物流にも混乱が生じ、生産計画どおりに進まなかったということがあると思います。また、コロナ禍だけの要因ではないと思いますが、原料の値上がりが問題となってきました。
国内で生産を維持しようと産地が苦労された一方、新型コロナウイルス感染症が世界で拡大し始めると、国によっては穀物の輸出を停止するところもありました。その点では、食料はいつでも簡単に手に入るものではないということを改めて私たちは感じたと思います。
--コロナ禍を機に食や農、農村に国民の関心が高まったと言われています。農政でも大規模農家だけでなく、多様な農業の担い手が食料生産を支えていく方向の強化が打ち出されています。こうした動きをどう思われますか。
農業や農村に関心が高まって、移住する人が増えているという動きは今後の日本農業にとって良いですよね。問題はそれが定着していくかどうかだと思いますが、最近の都道府県別の人口動態をみると、やはり首都圏集中であり、人口が減少している地域はその傾向が続いていますね。ですから、全体でみると、このコロナ禍でワーケーションなど模索は始めているけれども、まだ一極集中は大きくは変わっていないと思います。
もちろん一過性のブームで終わらせるようなことではいけませんから、じっくりと取り組むためにどういうことができるのか、考えていかなければならないと思います。
農業の担い手についても大型の生産法人だけで農業も農村も成り立つということはないでしょうから、中小・家族経営の担い手も生産基盤の確保のためには大事です。そういう多様性のある農村のあり方についても見直す契機になっていると思います。
最近の言葉でいえば半農半Xですか、こうして多くの人が農業に興味を持ち、携わろうとする動きが広まってゆくのも大事なことで、自分自身も機会があれば関わりたいと思っています。自分たちがいろいろなかたちで農業に関わる方法についても考えてゆきたいと思っています。
「食料システム」として事業を捉える
--昨年は国連が「食料システム」という考え方を打ち出しサミットも開かれました。これについてはいかがですか。
もともとSDGsで取り組んでいたフードロス削減の取り組みも含めて、「食料システム」として生産から加工、消費までを考えるということを国連が打ち出したことは、私たち自身のビジネスにとっても重要な視点です。というのも、当社も農薬の販売で終わりというつもりはなく、農業生産に関わるいろいろな事業に取り組んでいかなくてはならないと考えているからです。たとえば農薬だけでなく土壌の問題なども重要だと思います。
そこで2030年に向けてグローバルなソリューション・カンパニーになろうという構想をつくったところです。そういう意味では「食料システム」という考えと方向は同じだと思います。生産現場の方々と消費者をどうつないでいくか、当社の知見や基盤となっている技術を役立てることができればと検討しているところです。
--一方、農水省は生産力の向上と、環境への配慮など持続性をイノベーションで両立する「みどりの食料システム戦略」を策定しました。どう受け止めておられますか。
農薬を開発、製造している立場からすれば、常にイノベーションを考えています。やはり少量で効果がある、環境負荷が低いといった農薬を創っていくというのは当然の使命です。そこはたゆまず続けていくということであり、そのうえで現場のみなさんが使いやすい、ニーズのあるものをきちんと提供していくということです。
その意味でみどりの食料システム戦略の方向とは同じだと思っています。さらにこの戦略は2050年に向けて継続的に取り組んでいくとしています。当社は今、2030年までに上市したい農薬を開発していますが、同時に基礎研究として手がけているものは、2030年より少し先を睨んだものです。こういう取り組みは過去から変わらずに行ってきていることで、2050年に向けても同様に、引き続き取り組んでまいります。
--さて、1月4日にはMeiji Seikaファルマからの農薬事業譲渡を受け、MMAGが発足しました。今、お話いただいたイノベーションの取り組みも含めて新会社発足でめざすことなどをお聞かせください。
新しい農薬を開発できる企業は限られており、グローバルに展開するにはM&Aや他企業との連携も必要になっています。今回のMeiji Seikaファルマからの農薬事業の譲受についても、この方向に即したものです。理由の1つはMeiji Seikaファルマが天然物由来の成分を複数持っていることです。また、研究開発に際して、大学や研究機関などと共同で取り組み、その知見を持っていることです。そこを得られるということは、方向としてはみどりの食料システム戦略にも合致すると思いますし、当社の研究開発力強化につながる非常に大きなことだと考えています。
心強いJAグループ 力合わせ農業振興
--事業を展開していくうえで、JAグループについてはどう位置づけられ、何を期待しますか。
JAグループは、生産者のことをきちんと考えることはもちろん、日本、さらに世界全体の食料、農業の動向を考えて事業展開されており、私どもにとって相談しやすいパートナーです。当社も最終的には消費者に向けていかに食料を供給するか、それを担う生産者にいかに貢献するかということが重要だと考えています。その点でJAグループと私どもの役割は異なる部分もあれば重なる部分もあると思いますが、さまざまな場で情報交換しながら、アイデアや指導をいただくこともあり、心強く感じています。
今後も変わらずに、JAグループと力を合わせながら日本農業に貢献してまいりたいと思います
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