農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(48)【防除学習帖】第287回2025年3月1日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。
現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
16.酸化的リン酸化の脱共役阻害剤
(1)作用機構:[C]呼吸
(2)作用点: 酸化的リン酸化の脱共役
(3)グループ名: (名称無し)[グループコード:29]
(4)殺菌剤の耐性リスク:低
(5)耐性菌の発生状況:灰色かび病菌で耐性菌発生
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
[1]2,6-ジニトロアニリン/フルアジナム(フロンサイド)
(7)グループの特性:
このグループ[29]は、病原菌が生命活動エネルギーをつくるするために必須の呼吸に関わる反応を阻害する。複雑な呼吸反応の中の酸化的リン酸化の脱共役を阻害し、その結果、胞子発芽、侵入器官形成、胞子形成など正常な生長をできなくして効果を発揮する。
菌核病などの子のう菌類、株腐病などの担子菌類、一部の卵菌類や変形菌など幅広い病原菌に効果を発揮する。ウイルス病にも適用があるが、これはウイルス病を媒介する変形菌に効果を発揮してウイルス媒介を防ぐ作用を示すが、ウイルスそのものを不活性化する効果はない。治療効果はないので、病害の発生前の予防的散布を徹底する。
このグループの耐性菌発生リスクは低いが、インゲンマメの灰色かび病菌に耐性菌の発生が報告されている。しかし、その他の作物・病害では報告されていない。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
このグループに属するフルアジナムのリスク換算係数0.316であり、基準年の2019年の出荷量は合わせて28.4トンと比較的多いが、再評価によって使用できる殺菌剤が減少する中貴重なスペクトラムの広い保護殺菌剤であることから削減する必要はないと考える。耐性菌の発生リスクは低いが、灰色かび病で大量に使用された際に耐性菌の発生が認められた例もあることから、耐性菌対策に留意しながら大切に使用する方が得策と考えられる。
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