農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(54)【防除学習帖】第293回2025年4月12日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
21.テトラサイクリン抗生物質
(1)作用機構:[D]アミノ酸およびタンパク質生合成
(2)作用点: タンパク質生合成(リボソーム ポリペプチド伸長段階)
(3)グループ名:テトラサイクリン抗生物質[グループコード:41]
(4)殺菌剤の耐性リスク:高
(5)耐性菌の発生状況:多くの細菌性病害で耐性菌が発生
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
[1]テトラサイクリン抗生物質/オキシテトラサイクリン(マイコシールド)
(7)グループの特性:
このグループ[41]は、病原菌が生命活動を行う際に必要なタンパク質の生合成を阻害する作用機構を示す。病原菌の細胞内に存在するリボソームは、細胞分裂の際に遺伝子の情報を基にいくつものアミノ酸を1つずつ結合させてペプチド鎖をつくる働きがある。このペプチド鎖が長くつながったものがタンパク質であり、このグループはペプチド鎖が長くつながっていく(伸長という)段階を阻害してタンパク質をつくれなくする。
これによって、正常の細胞分裂ができなくなって、病原菌の正常な生命活動全般(増殖)をできなくさせて死滅させる。浸透移行性を有しており予防効果と治療効果を合わせもつ。主として細菌病全般(グラム陰性、グラム陽性の両方)に効果を示す。このグループの耐性菌発生リスクは高とされており、既に多くの細菌で耐性菌の発生が報告されている。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
このグループに属するオキシテトラサイクリンのリスク換算係数は0.316であり、その基準年出荷量は、0.03トンである。多くの細菌病に対し耐性菌が発生しているが、細菌病防除剤として、特にグラム陽性とグラム陰性の両方に効果を示す貴重な細菌病防除剤でもあるので、まだ使用できる(効果のある)分野では、他の細菌病薬であるストレプトマイシンとの混合剤を使用するなど十分な耐性菌対策を施した上で使用する方が得策と考えられる。

重要な記事
最新の記事
-
(466)なぜ多くのローカル・フードはローカリティ止まりなのか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月19日 -
福岡県産ブランドキウイフルーツ「博多甘熟娘」フェア 19日から開催 JA全農2025年12月19日 -
「農・食の魅力を伝える」JAインスタコンテスト グランプリは、JAなごやとJA帯広大正2025年12月19日 -
農薬出荷数量は0.6%増、農薬出荷金額は5.5%増 2025年農薬年度出荷実績 クロップライフジャパン2025年12月19日 -
国内最多収品種「北陸193号」の収量性をさらに高めた次世代イネ系統を開発 国際農研2025年12月19日 -
酪農副産物の新たな可能性を探る「蒜山地域酪農拠点再構築コンソーシアム」設立2025年12月19日 -
有機農業セミナー第3弾「いま注目の菌根菌とその仲間たち」開催 農文協2025年12月19日 -
東京の多彩な食の魅力発信 東京都公式サイト「GO TOKYO Gourmet」公開2025年12月19日 -
岩手県滝沢市に「マルチハイブリッドシステム」世界で初めて導入 やまびこ2025年12月19日 -
「農林水産業みらいプロジェクト」2025年度助成 対象7事業を決定2025年12月19日 -
福岡市立城香中学校と恒例の「餅つき大会」開催 グリーンコープ生協ふくおか2025年12月19日 -
被災地「輪島市・珠洲市」の子どもたちへクリスマスプレゼント グリーンコープ2025年12月19日 -
笛吹市の配送拠点を開放「いばしょパル食堂」でコミュニティづくり パルシステム山梨 長野2025年12月19日 -
鳥インフル 米国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年12月19日 -
子牛の寒冷ストレス事故対策 温風式保育器「子牛あったか」販売開始 日本仮設2025年12月19日 -
香港向け家きん由来製品 北海道からの輸出再開 農水省2025年12月19日 -
群馬県千代田町・千代田町商工会と包括連携協定を締結 タイミー2025年12月19日 -
岡山県吉備中央町と農業連携協定 生産地と消費地の新たな連携創出へ 大阪府泉大津市2025年12月19日 -
フィリピンで創出のJCMクレジット フェイガーと売買契約締結 ヤンマー2025年12月19日 -
AGRISTキュウリ収穫ロボット「第6回いばらきイノベーションアワード」で優秀賞2025年12月19日


































