農薬 特集詳細

特集:農薬危害防振運動2014

2014.06.03 
【平成26年農薬危害防止運動始まる】農作物・生産者・環境の安全を一覧へ

・うっかりミスを起こさぬように
・安全な病害虫防除のために
・登録のある農薬を正しく使うことが基本
・農薬散布時の注意事項と周辺への配慮
・管理の徹底が安全につながる
・防除暦の活用と充実
・直売所出荷を含む全生産者への適性指導
・正しい情報発信の取り組み

 6月を迎え、水稲はもちろんだが、野菜や果樹などを含めて、農作業が忙しくなる時期となる。そして、これから数ヶ月はどの作物にとっても病害虫や雑草が発生し、その防除がもっとも必要な時期でもある。
 そのため国(農水省・厚労省・環境省)は毎年、6月1日から8月31日までの3カ月間を「農薬危害防止運動」実施期間と定め、適切な農薬使用に取り組むことにしている。
 また、JA全農も毎年この時期を「安全防除運動」月間と位置づけ、「農作物、農家、環境」の3つの安全のための基本を確認し、実践する運動を展開している。
 そこで、今年のJAグループ安全防除運動のポイントなどについて、JA全農肥料農薬部技術対策課にまとめていただいた。

◆うっかりミスを起こさぬように

toku1406031303.jpg 全農の安全防除運動は昭和46年にスタートし現在も全農の農薬事業の柱の一つとして取り組んでいる。運動に先立ち昭和42年より推進母体となる防除指導員の養成を始め、生産現場への指導体制を強化し、現在までに1万7785名(平成25年度末時点)を認定し現場指導をささえている。
 安全防除運動は、その時々の社会的背景や運動の進行状況に伴い、取り組みの内容や名称を変えたが、一貫して「農作物、生産者、環境」の三つの安全を柱としてきた。農薬や防除に関する正しい知識の普及、生産者を守る保護具の開発・普及などに取り組み、また、農薬の適正使用を進めるため、防除日誌の記帳、防除暦の検証とともに農薬の残留分析を実施し、農薬を使用して栽培された農作物の安全性を確認する取り組みを実施した。
 水稲面積が多い日本では春からの本田での作業が5〜6月に集中してくる。毎年行なう慣れた作業ではあるが、うっかりミスなどを起こさないよう気を引き締めるためにも、作業の忙しくなる6月を推進月間と位置づけ、生産地においては啓発資材なども活用しながら生産者への注意喚起や巡回指導などを実施している。

  

◆安全な病害虫防除のために

toku1406031304.jpg  日本は高温多湿で、国土が狭いため多種類の作物が集約的に栽培される場合が多く、病害虫が発生しやすい環境にある。そのため、病害虫・雑草防除を確実に実施していく必要がある。
 農薬は農作物の安定生産のためにも必要な資材である。決められた使用方法を守って使えば、農作物の安全性は確保できる仕組みとなっている。そのため、従来から進めている農薬の適正使用の順守を重点に、防除の記録と確認、飛散・流出防止対策、保管・管理などを全生産者に徹底していくとともに、農薬適正使用の指導手段として防除暦を整備し、その活用とさらなる充実に取り組むこととしている。

 

◆登録のある農薬を正しく使うことが基本

 農作物の防除に使用できる薬剤は農水省が認可した資材だけであり、使用方法も定められている。
 農薬の使用方法は、効果とともに収穫時には残留農薬基準値以下となるよう使用時期・使用量・回数、散布方法などが決められている。その使用方法を守って使えば、収穫物から基準値を超えて農薬が残留することはないが、時折、基準値超過の事例が報告されている。
 その原因には、使用時期(収穫前日数)や希釈倍数を間違えた、適用のない作物に使用した、といった事例がある。使い慣れた農薬であっても適用内容が変更となったり、作物により使い方も異なるので、使用前には、再度確認する習慣をつけるようにする。
 使用回数は、本剤のみと成分ごとの総使用回数も必ず確認し、超えないように注意する。なお、農薬は最終有効年限が記載されているので、期限内に使いきるようにしていただきたい。
 散布器具の洗浄不足による事例もあり、散布器具内に農薬が残ったまま次の作物に使用したことで作物への残留や薬害を起こしてしまうことがある。使用した散布器具はすぐに洗浄し、器具内に農薬を残さないことが大切となる。散布液調整の際は希釈液を作る前に器具内に水を通して洗浄し、また、コックを開いた直後の液はなるべく作物にかけないようにするとより安心である。

 

◆農薬散布時の注意事項と周辺への配慮

toku1406031302.jpg  農薬の効果を十分に発揮させるためには、圃場整備やその後の管理が重要となる。農薬は水系や土壌、周辺環境への影響を確認した上で登録されているが、農薬を使用する際には圃場外に出さない配慮が必要となる。また、農薬の効果を十分に発揮させるためにも田面の均平化、湛水深の確保などの圃場整備とともに、施用した薬剤成分を圃場外へ出さない止水管理が大切となる。
 農薬流出による環境への負荷を防ぐ観点から農薬処理後7日間の止水管理とともに、移植前の農薬使用時期の遵守など適正な使用をさらに徹底していくこととしている。
 農薬を適正に散布していても飛散を防ぎきれない場合もあるが、事前の対策、散布時のきめ細かな対応によりリスクを減らすことはできる。たとえば、より飛散の少ない剤型や周辺作物にも適用がある薬剤への切り替え、風や散布方向に注意するなどの飛散防止の基本となる散布方法をしっかり行なうことなどが挙げられる。
 飛散低減ノズルや遮蔽ネットの使用など散布条件や圃場環境の改善によっても飛散防止効果はある。特に他作物が隣接した水田や大規模圃場などでは飛散低減剤の切り替え(本田防除での微粒剤Fへの切り替えなど)も有効な飛散防止策となる。
 住宅地や公共施設、養蜂場などが圃場近くにある場合は、農薬散布を事前に連絡し、被害防止のための対策を行なうなど、地域一体となって取り組む体制づくりが重要である。

 

◆管理の徹底が安全につながる

 生産者の健康管理、散布機具の整備、農薬の保管・管理と、あらゆる場面で管理を徹底していくことが事故をなくし安全につながる。
 農薬を使用する時は、面倒と思わず保護具をしっかり着用し、自らの安全も忘れないようにする。また、農薬は専用の保管場所で鍵をかけて管理し、使用者以外が扱えないようにすることが重要である。

 

◆防除暦の活用と充実

 防除暦には栽培ステージに沿った防除対策など多くの情報が盛り込まれており、農薬の選定や防除法の確認のための重要な資料として生産者に活用されている。
 防除暦は、防除の技術情報や指導を伝えるだけでなく、農産物の安全性を確保するためのツールとしても機能している。省力・低コスト、効率防除の観点からも防除暦の作成・活用が大きな役目を果たすと考えられる。
 JA全農では、モデル防除暦の作成を進めている。モデル防除暦では栽培スケジュールに沿って防除が必要な病害虫を明確にし、防除が必要となる発生の目安を示した上で、どういう薬剤をいつ使用すればよいのかを「見て分かる」ようにする。
 また、定期的な農薬散布ではなく、病害虫の発生を見ながら適期散布の実践につなげる。作成する暦には効率的な防除法のほか、抵抗性問題、環境への配慮、低コスト・省力防除などを盛り込むなど多面的な視点からの防除体系の提案を合わせ行っていく。
 なお、生産地で使える暦にするには、実際の生産現場に近いところで作成していくのが理想であり、「全ての地域、全ての作物で防除暦を作成すること、多様な生産者にも対応できること」が今後の課題となる。
 農薬の使用記録も重要な事項であるため、生産者が防除暦に農薬の使用日や使用量などを容易に加筆できるよう工夫している。このように、生産者に対する農薬適正使用の徹底と効率的防除のツールとしての防除暦を充実させ、営農指導の強化に取り組むこととしている。

 

◆直売所出荷を含む全生産者への適性指導

toku1406031301.jpg  生産形態や販売方法も多様化してきている。近年増えている農産物直売所への出荷者の中には、少量多品目のみを栽培する場合も多い。これらの生産者に対し防除対策、農薬適正使用の指導が十分でないことも考えられる。
 そのため、JA直売所を中心に、出荷者への指導内容や生産・販売においての問題点・課題等を抽出し、対応策などを取りまとめたマニュアルを作成する予定である。このマニュアルを参考に、全生産者に対し農薬適正使用の再徹底を行うこととしている。
 また、直売所においては、農作物の生産から加工・販売まで、衛生面や表示など全工程についてのリスク管理が必要なことから、地産地消を進めるJA全中とも連携していく。
 なお、防除暦作成を進める中で、直売所出荷者に対応した防除暦、多数の作物を生産する場合の農薬選択に有効と思われる暦も充実させたいと考えている。

 

◆正しい情報発信の取り組み

 リスク管理、リスクコミュニケーションの考え方は徐々に浸透してきたと思われるが、農薬についての正しい理解を得ることはまだまだ難しいところである。また、消費者のみならず流通に携わる方々に対しての取り組みも重要と考えている。
 農作物の安定生産のためには欠かせない生産資材である農薬への正しい情報、生産現場での適正使用の実践等についての情報発信にも引き続き取り組んでいくこととしている。
(全国農業協同組合連合会肥料農薬部技術対策課)

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