活力あふれる台湾の農業 ――台湾国際果実・野菜見本市で感じたこと 台湾の農業事情(下)2016年11月27日
◆虎視眈々と狙われている日本市場
二つ目の日本への関心だが、台湾は非常に親日的な国民が多いといえる。台湾の人口は2300万人強だが、観光などで日本を訪れる人は年間360万人(日本から台湾へは160万人)もいる。
見本市で取材をしていると、輸出先に日本を、と考えている人が多い。それは台湾にとって消費市場が大きい隣国ということと、すでにいくつかの成功例があるからだ。
成功例の一つが「エダマメ」だ。日本が輸入している冷凍エダマメは年間約7万t、そのうち45%が台湾からだ。台湾から日本への輸出は1971年から始まったという。一時は中国(大陸)と競争になりトップの座を明け渡したが、日本に合うように品種改良をし、豆の種類を増やすことで、トップの座を奪還したという。この品種改良などを行ったのが、台湾政府の中枢である行政院農業委員会の高雄区農業改良場旗南分場だ。つまり国の研究機関が率先して開発している。
台湾で冷凍加工されたエダマメは、日本の大手食品会社を通して、日本の市場に流通される。居酒屋などでビールのおつまみとして出てくるエダマメの多くは台湾産だ。
高雄市の北にある雲林県はジャガイモやニンジンなどの主要産地だが、カット野菜に加工して日本へ輸出している。ここでは、GGAPを取得したレタス栽培を行っており、日本のレタス産地の端境期である10月から春先まで日本へ輸出しているという。担当者は「日本の産地と競合せず、補完関係にあるのでうまくいっている」と語る。
こうした成功例に学びながら、安全性の高い農産物とその加工品を日本へ、という動きが高まっている。日本にはない果物、生産量が少ない果物、おやつ感覚で食べられるドライフルーツ、エダマメのように優れた加工技術が育成されており、そうした技術を活かした加工品などが虎視眈々と日本へ狙いを定めているという印象を強く感じた。
◆県政府が農業者教育に力を入れる
三番目の行政の農業への関わりだが、この見本市そのものに、台湾政府の中枢機関である行政院農業委員会がさまざまな形で関与しているように、農業を国の重要産業と位置づけている。
それは前述のエダマメの品種改を国の機関が率先し、生産現場での栽培まで支援していること。さらに農業県である雲林県政府では、県政府の予算で農民を育てるための大学を設置し、経験豊かな農業者がほ場で実地教育しているという。
この大学に入学してくるのは、農家出身だが都会に出ていた人が、親が高齢になったので農業を継ぐためにとか、すでに農業に従事しているが、もっと農業について学びたいという人が中心だという。年齢的には10代から60歳代まで幅広いが、平均年齢は40歳くらいだ。座学も週に3日夜に行われるので、年間300時間から400時間くらい学ぶことになる。
また、遊休農地は国に登録され、ネット上でみることができ、希望者は栽培作物などを決めて申込み、審査が通れば、農業機械や場合によっては住居などについても支援するなど、青年農業者の確保に、国が単に予算を確保するだけではなく、具体的に支援することで、農業に対する国民の理解を促進しているという印象をもった。
(写真)日本向けに品種改良されたエダマメ
・台湾の農業事情(上)ー農業に力を入れる蔡政権、50以上あるオーガニック認証団体
(関連記事)
・台湾農業の力を示す ―台湾 国際果実・野菜専門見本市2016―始まる (16.11.11)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日