自主的な農業者と流通を結ぶ「新しいフードチェーン」 "産直ギフト"で農産物をブランド化 でいたらぼ2025年3月24日
全国各地の農産物をブランド化し、大手流通業や商業施設などと“産直ギフト”で「新しいフードチェーン」づくりを進めているのが、コンサルティング会社のでいたらぼ(東京、宮川博臣社長)。山形県や山梨県など各地に活動の輪を広げており、今年1月にはアグリビジネス投資育成からの出資も受けた。このほど、同社の有力取り組み先で、全国の農産物の物流を担う甲斐通商(山梨県笛吹市、北村益樹社長)の新しい物流センターが完成した。
甲斐通商の物流センター竣工に集まった全国の仲間
でいたらぼは、金融業界出身で農業ファンドを活用して農業流通組織を立ち上げた経験もある宮川社長が2014年に設立した。宮川社長は「農産物流通は消費者ニーズが細分化し、大量で画一的な商品では賛同が得られない。果実の加工品もスイーツに市場を奪われている」と見ていた。そこで、大手の百貨店や量販店、商業施設などにターゲットを当てた"産直ギフト"で市場を開拓し、全国の農業者を出荷パートナーとして組織してきた。販売先は髙島屋などの百貨店やルミネのような商業施設、量販店に加え、仏壇のはせがわのギフト、一般企業の従業員向けの福利厚生ポイントに対応した商品など、流通以外の異業種にも広げている。
流通と農家、物流、生産技術をつなぐフードチェーン
甲斐通商の取り扱いは8割が産直ギフト。フードチェーンをつなぐ最後の防波堤でもある。新センターは面積約100平方メートルで以前の4倍の広さ。北村社長は他社のパッキングに疑問があった。「モモなどは一般的には平置きして詰めるが、ゆるみが出てキャップがずれたり、飛び出してダンボールと接触する」。同社は傾斜を付けた台で作業を行うことで均等に箱詰めできるため「クレームがほとんどない」。自動機などに頼らず職人的な技術で対応する。
フードチェーンをつなぐためには農業者の組織が必要だ。拠点の一つが山梨県。甲斐通商がもともと地元農家と連携しており、宮川社長が協力して自主的な勉強会組織を立ち上げ、農家を中心に"甲斐の里グループ"を作ってブランド化してきた。ブドウ農家のえびか(山梨県山梨市、渡邉悟主宰)やモモ農家のアミナチュール(山梨県笛吹市、向山浩太代表取締役)などがネットワークに加わっている。
山形や熊本、和歌山にも広がるネットワーク
でいたらぼの宮川博臣社長
また、山形県にはでいたらぼの事務所があり、同社取締役が代表を務める"山形の未来を考える協議会"を組織し「今後、活動を拡大していきたい」という。サクランボの時期には宮川社長や同社スタッフが現地の取締役とともに出荷作業に従事。来期は新たに現地のでいたらぼ取締役でもある農家を中心に出荷場の設置も予定している。熊本県にも連携している組織"熊本FTC"(運営はサプライジングファーマーズ)がある。昨年は和歌山県で農業総合研究所の出荷農家を、新たに産直ギフトブランドとして"わかやま情熱みかんグループ"として組織し、百貨店、量販店、ゆうパック等の商品を出荷している
甲斐通商の北村益樹社長
自立した農業従事者を支えるため、農畜産業で専門性のある企業や個人が「天候に左右されにくい土壌や栽培方法を選定するフードチェーンが必要」(宮川社長)と考え、専門家も組織してきた。農業資材開発や農畜産物生産ではワーコム農業研究所(山形県最上郡、栗田幸秀社長)、長野県で畜産業から肥料と農業指導に移った田中商事(長野県中野市、田中孝典代表取締役)などが、各地の農業者に対して資材や技術の支援を行っている。
物流網の整備も進めており、甲斐通商のセンターや山形県の出荷場に加え、今後は東京都の大田市場にも倉庫を借りる。「市場流通外ではあるが、物流のハブとして果物だけでなく、親和性の高い花き」も取り扱いを増やす構想だ。
宮川社長は「重要なことは農家が押し付けられてではなく、自主的に学ぶ場を作る。それが消費者にきちんと伝わるように、ブランド化する」。今後も重要生産拠点においては「生産法人もしくは生産者グループとの連携を深めていきたい」と語る。
完成した甲斐通商の新センター
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