ウンシュウミカンの全ゲノムを世界で初めて解読 農研機構2018年2月22日
・カンキツ品種改良の効率化に期待
農研機構は国立遺伝学研究所と共同して世界で初めてでウンシュウミカン「宮川早生」(みやがわわせ)の全ゲノム解読に成功したと、2月20日、発表した。これにより、カンキツ品種改良のより一層の効率化が期待される。
ウンシュウミカンは、日本を代表するカンキツで、国内カンキツ生産の約70%を占めている。その特徴は、(1)果実に種子がほとんどない、(2)手で簡単に皮をむくことができ食べやすい、(3)健康機能性を有するβ-クリプトキサンチンを高濃度に含有しているなどで、デコポンなど70を超える品種や系統の親ともなっている。
今回のゲノム解読では、ゲノムの大きさが約3億6000万塩基体であることをまず突き止め、カンキツの基本染色体数と対応する9本の配列を得ることに成功。そしてゲノム配列中に約2万9000個の遺伝子が存在していると推定し、その中からカンキツの着色や結実性に関わる遺伝子91個を特定した。さらに従来知られていなかった遺伝子も複数特定、ウンシュウミカン固有の可能性のある1761個の遺伝子も見出した。
近年、カンキツでは、大量のDNAマーカー情報から芽生え段階で果実の特性を高い精度で予測し、その結果にもとづき優良個体を選抜する技術が開発されてきた。このようなDNA情報を駆使した選抜の精度や効率を向上させるためには、多数のカンキツ品種の親となっているウンシュウミカンの重要遺伝子や特定の染色体(ゲノム)領域の配列を他の品種と比較することが必要となる。しかし、これまでウンシュウミカンの高精度な全ゲノム配列は解読されておらず、そうした比較は困難だった。
そこで今回の研究では、近年開発された複数の高速DNAシーケンサ技術と新たなデータ解析手法を活用し、部分的に解読された短い塩基配列を段階的に結合することにより、ウンシュウミカンでの全塩基配列の解読に成功した。
今回の成果で得られた全ゲノム配列を利用すれば、ゲノムワイド関連解析を利用した果実形質や栽培性に関わる重要遺伝子の機能推定が高速化され、カンキツの品種育成をさらに効率化できると期待される。
なお、今回成果は国際科学雑誌「FrontiersinGenetics」(2017年12月5日)に掲載されている。
研究にあたった清水徳朗・同機構果樹茶業研究部門上級研究員は今回のゲノム解読について次のように語った。
【清水氏の話】
このカンキツ類のゲノム解読は世界で4番目になるが、ウンシュウミカンの解読としては世界初で、カンキツ類の解読としても国内で初めての成果となる。
現在は配列を「読む」こと自体は高速DNAシーケンサを利用すれば簡単にできるが、そこで得られるのは膨大な数のきわめて短い配列断片の寄せ集めであり、それを染色体と対応付けられるような「意味のある長い配列に組み立てる」ところが最大の難関だった。
解読成功までに要した期間は、数種類の高速DNAシーケンサを利用しており、「読む」ステップ自体は数ヶ月で完了している。その後、その配列を「組み立てる」段階ではかなりの試行錯誤を繰り返してベストな方法を模索したので、3年程度を要した。
ウンシュウミカンを親とする品種育成の育種の効率化への利用をすでに開始している。ほ場に展開された同じ本数の苗から出現する有望な個体の獲得効率をゲノム情報を利用することで飛躍的に向上させることができる。今後5年程度をメドに有望実生を選抜できればと考えている。
(関連記事)
・最重要時期は被害を受けやすい5~6月 【ミカンの病害虫防除のポイント】(17.05.01)
・大切な人にミカンを 4月14日オレンジデー JA全農えひめ(17.04.17)
・カンキツ類の親子関係判明 新品種開発の効率化に期待(17.01.16)
・ウンシュウミカンの両親判明 農研機構(16.12.08)
・【現場で役立つ農薬の基礎知識2016】ミカンの病害虫防除 初期段階での対応がもっとも重要(16.05.11)
・骨の健康維持に一役 機能性表示食品・三ケ日みかん JAみっかび(15.09.15)
重要な記事
最新の記事
-
【第46回農協人文化賞】資金循環で地域共生 信用事業部門・埼玉県・あさか野農協組合長 髙橋均氏2025年7月14日
-
【第46回農協人文化賞】組合員の未来に伴走 信用事業部門・秋田やまもと農協常務 大鐘和弘氏2025年7月14日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 三重県2025年7月14日
-
【注意報】イネカメムシ 県内全域で多発のおそれ 鳥取県2025年7月14日
-
主食用米の在庫なし、農機の修理・メンテナンス年3000件 JA常総ひかり2025年7月14日
-
【'25新組合長に聞く】JA岡山(岡山) 三宅雅之氏(6/27就任) 地域を元気にするのが農協の役割2025年7月14日
-
JA全農ひろしまとJA尾道市、ジュンテンドーと 売買基本契約を締結、協業開始2025年7月14日
-
蒜山とうもろこしの宣伝強化 瀬戸内かきがらアグリ事業も開始 JA全農おかやま2025年7月14日
-
酪農の輪 プロジェクト 夏休み親子で「オンライン牧場体験」開催 協同乳業2025年7月14日
-
大阪府泉北郡に「JAファーマーズ忠岡」新規開店 JA全農2025年7月14日
-
食農と宇宙をつなぐイベント あぐラボとMUGENLABO UNIVERSEが共催2025年7月14日
-
岩手県産のお肉が送料負担なし「いわちく販売会」開催中 JAタウン2025年7月14日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(2)2025年7月14日
-
「とちぎ和牛」が7年ぶりに全国最高位 "名誉賞"獲得 「第27回全農肉牛枝肉共励会」2025年7月14日
-
【役員人事】北興化学工業(9月1日付)2025年7月14日
-
第148回秋田県種苗交換会キャッチフレーズ決定 全国906作品から選出2025年7月14日
-
無料でブルーベリー食べ放題 山形・鶴岡の月山高原で地域活性イベント開催2025年7月14日
-
農地調査AI支援サービス「圃場DX」デジタル庁「技術カタログ」に掲載 LAND INSIGHT2025年7月14日
-
クマ対策用電気さく線「ブルーキングワイヤー」販売を本格化 未来のアグリ2025年7月14日
-
屋外作業の暑さ対策製品など展示「第11回 猛暑対策展」に出展 サンコー2025年7月14日