植物工場 飽差の変動抑えレタスの収量アップに成功 東大大学院農学生命科学研究科2021年5月7日
東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守航准教授らは、施設内の飽差(VPD)の変動をできるだけ抑えることにより、レタスの収量アップに成功。同研究成果は、Frontiers in Plant Science誌で4月11日に発表された。
図1:VPD変動の程度がレタスの成長に及ぼす影響(左)
図2: VPD変動の程度がレタスの成長パラメータに及ぼす影響(右)
植物工場は、農作物の生育に最適になるように栽培環境を制御することで、天候に左右されずに農作物を安定生産する施設。世界の食料不足や国内の農業従事者の減少、また、不安定な農作物の生産量や価格などの課題解決につながる栽培方法として注目されている。
これまで施設内で環境制御を行う際に着目されてきたのは、温度、湿度、二酸化炭素濃度などの環境要因だが、近年は飽差(VPD)制御の重要性が高まりつつある。VPDは、ある空気にあとどの程度の水蒸気の入る余地があるかを示す指標。植物の気孔開度や蒸散速度が飽差に依存することはよく知られている。たとえば、VPDが低い(湿度が高い)と作物の蒸散が抑制されるが、逆にVPDが高すぎる湿度が低く、空気が乾燥した状態でも気孔が閉鎖。蒸散が抑制されると同時に、CO2の取り込み速度(光合成速度)が抑制され、作物成長にも悪影響が生じる。
VPDは、気孔開閉と光合成、および作物成長に影響を与える主要な環境要因のひとつで、温室栽培では、加湿システムのオン/オフ制御や天窓の開閉によって、大きなVPD変動を引き起こす。閉鎖型植物工場内でも、ヒートポンプのオン/オフ制御や施設内の風の循環によって、VPDが大きく変動することが知られているが、VPDの変動が植物の光合成と成長に及ぼす影響については不明だった。
矢守准教授らは、VPD変動の程度がレタスの光合成や成長特性に及ぼす影響を解析(図1, 2)。その結果、VPD変動が大きいと、時間と共に気孔が閉鎖し、光合成速度の低下を引き起こし、その結果、レタス成長が抑制されることが分かった。一方、VPD変動が小さいと、一日を通して気孔開度と光合成速度は高く維持され、その結果、レタスの成長が促進することが明らかになった。同研究成果は、植物工場と温室での作物栽培中のVPD制御の重要性を示すもので、施設栽培技術の改善により、植物工場の推進や発展に繋がることが期待される。
重要な記事
最新の記事
-
米の作況指数の公表廃止 実態にあった収量把握へ 小泉農相表明2025年6月16日
-
【農協時論】米騒動の始末 "瑞穂の国"守る情報発信不可欠 今尾和實・協同組合懇話会委員(前代表)2025年6月16日
-
全農 備蓄米 出荷済み16万5000t 進度率56%2025年6月16日
-
「農村破壊の政治、転換を」 新潟で「百姓一揆」デモ 雨ついて農家ら220人2025年6月16日
-
つながる!消費者と生産者 7月21日、浜松で「令和の百姓一揆」 トラクターで行進2025年6月16日
-
【人事異動】農水省(6月16日付)2025年6月16日
-
3-R循環野菜、広島県産野菜のマルシェでプレゼント 第3回ひろしまの旬を楽しむ野菜市~ベジミル測定~ JA全農ひろしま2025年6月16日
-
秋田県産青果物をPRする令和7年度「あきたフレッシュ大使」3人が決定 JA全農あきた2025年6月16日
-
JA全農ひろしまと広島大学の共同研究 田植え直後のメタンガス排出量調査を実施2025年6月16日
-
生協ひろしま×JA全農ひろしま 協働の米づくり活動、三原市高坂町で田植え2025年6月16日
-
JA職員のフードドライブ活動で(一社)フードバンクあきたに寄贈 JA全農あきた2025年6月16日
-
【地域を診る】「平成の大合併」の傷跡深く 過疎化進み自治体弱体化 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年6月16日
-
いちじく「博多とよみつひめ」特別価格で予約受付中 JAタウン2025年6月16日
-
日本生協連とコープ共済連がともに初の女性トップ、新井新会長と笹川新理事長を選任2025年6月16日
-
【役員人事】日本コープ共済生活協同組合連合会 新理事長に笹川博子氏(6月13日付)2025年6月16日
-
【役員人事】2027年国際園芸博覧会協会 新会長に筒井義信氏(6月18日付)2025年6月16日
-
農業分野で世界初のJCMクレジット発行へ前進 ヤンマー2025年6月16日
-
(一社)日本植物防疫協会 第14回総会開く2025年6月16日
-
農業にインパクト投資を アンドパブリックと実証実験で提携 AGRIST2025年6月16日
-
鳥取・道の駅ほうじょう「2025大大大スイカフェスティバル」22日まで開催中2025年6月16日