いもち病、灰色かび病、黒星病に警戒を 農水省-病害虫発生予報7号2021年9月9日
農水省は9月8日、病害虫発生予報第7号を発表した。水稲については、いもち病(穂いもち)の発生が、関東、東海、近畿、中国、四国と九州の一部の地域で多くなると予想されている。
葉いもちに食害された水稲(写真提供:熊本県病害虫防除所)
気象庁が発表した向こう1か月の予報(8月26日付)では、沖縄・奄美で高く、降水量は全国的にほぼ平年並と予想されている。
今後1か月の主要病害虫は、水稲ではいもち病(穂いもち)の発生が、関東、東海、近畿、中国、四国と九州の一部地域で多くなると予想。野菜類では、トマトの灰色かび病の発生が、北東北、東海と北九州の一部の地域で多くなると予想されている。また、果樹・茶では、なしの黒星病の発生が、北陸、東海と近畿の一部の地域で多くなると予想されている。
各作物の詳細は以下の通り。
◎水稲
いもち病(穂いもち)
関東、東海、近畿、中国、四国と九州の一部の地域で多くなると予想。同病は断続的な降雨により感染しやすい好適な条件となると、急激に穂いもちに進展するおそれがある。本田での発生状況に注意し、今後の本田散布に際しては、収穫までの期間を考慮の上、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に検討する。
斑点米カメムシ類
北東北、南関東、東海、中国と四国の一部の地域で多くなると予想。岩手県と秋田県から注意報が発表された。本田を注意深く観察し、発生状況に応じて都道府県の発表する発生予察情報等を参考に適期に防除を実施する。
紋枯病
東海の一部の地域で多くなると予想。特に、昨年、多発したほ場では今年も多発するおそれがあるため注意が必要。同病は高温多湿条件で発生が助長されるため、今後の発生状況に注意し、適期に防除を実施する。
スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)
部地域で発生。来年の発生を抑えるため、収穫後の防除として、都道府県が発表する発生予察情報等を参考に、石灰窒素の散布や冬期の耕うん等による殺貝を実施する。なお、耕うん機などの農機具に付着した泥とともに、スクミリンゴガイが 他のほ場へ拡散する事例が報告されている。農機具の泥はよく落としてから移動させるよう、心がける。
◎野菜・花き
大豆
吸実性カメムシ類の発生が、北九州の一部の地域で多くなると予想。この虫の飛来状況は地域や園地により異なるため、都道府県の発表する発生予察情報等を参考にしながら、園内の観察をきめ細かく行い、飛来が認められた場合は、飛来初期から防除を実施する。
いちご
炭そ病の発生が、東海と四国の一部の地域で多くなると予想。愛媛県から注意報が発表されている。同病は気温が高くなる時期に発生しやすいため、今後の発生状況に注意し、感染株は早期に抜き取り、ほ場外で適切に処分する。また、菌の胞子はかん水などにより飛散し、感染するため、かん水の際には水滴の小さい機材等の利用も検討する。
きゅうり
べと病の発生が、北関東と四国の一部の地域で多くなると予想。同病は葉に発生し多湿条件で発生が助長され、多発すると葉が枯れ上がることにより減収につながる。施設栽培では、換気をするなど、湿度管理を行うとともに、発生状況に応じて都道府県の発表する発生予察情報等を参考に適期に防除を実施する。
トマト
灰色かび病の発生が、北東北、東海と北九州の一部の地域で多くなると予想。岐阜県から注意報が発表されている。同病は多湿条件で発生が助長される。施設栽培では、換気をするなど、湿度管理や伝染源となるり病部の早期除去を行うとともに、発生状況に応じて都道
府県の発表する発生予察情報等を参考に適期に防除を実施する。
なす
ハダニ類の発生が、南関東と近畿の一部の地域で多くなると予想。園内を注意深く観察し、発生状況に応じて防除を実施する。なお、同虫は薬剤抵抗性が発達しやすいため、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に同一系統薬剤の連用を避けるなど、薬剤を適切に選定する。
ねぎ
アザミウマ類の発生が、南関東の一部の地域で多くなると予想。この虫は作物を加害するほか、多くの病原ウイルスを媒介することが知られている。発生密度が高くなってからでは防除が困難となるため、ほ場の観察をきめ細かく行うとともに、発生初期に防除を実施する。また、この虫は薬剤抵抗性を獲得しやすいため、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に薬剤を選定するなど防除を的確に実施する。
◎作物共通
シロイチモジヨトウの近畿と北九州の一部の地域で多くなると予想。また、ハスモンヨトウの発生が、北陸、東海及び近畿の一部の地域で多くなると予想されている。いずれも、ほ場内の発生状況に注意しながら、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に、適期に防除を実施する。
◎果樹・茶
かき
炭そ病の発生が、北陸の一部の地域で多くなると予想。愛知県が注意報を発表した。同病は多湿条件下で発生が助長され、特に秋期に降雨が多いと多発しやすくなる。秋期の発病果は落果せずに樹上に残り、他の果実への伝染源となるため、り病果は早期に除去するとともに、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に必要に応じて薬剤散布を実施する。
かんきつ
かいよう病の発生が、北九州の一部の地域で多くなると予想。同病は台風、長雨やミカンハモグリガの食害により助長されるため、ほ場を注意深く観察し、り病部の除去、防風ネットの設置等の防除を実施するとともに、ミカンハモグリガの防除を実施する。
また、黒点病の発生が、四国の一部の地域で多くなると予想。同病は、保菌した枯れ枝が伝染源となるため、枯れ枝の剪定・除去を行う。また、降雨が続くと発生しやすくなるため、天候の推移に注意し、農薬の散布間隔が空きすぎないように、降雨の合間に薬剤を散布する。
なし
ハダニ類の発生が、北東北の一部の地域で多くなると予想。園内を注意深く観察し、発生状況に応じて防除を実施する。なお、この虫は薬剤抵抗性を獲得しやすいため、都道府県が発表する発生予察情報等を参考に同一系統の農薬の連続使用を避ける。
また、黒星病の発生が、北陸、東海と近畿の一部の地域で多くなると予想。園内を注意深く観察し、伝染源となるり病部の除去、薬剤散布等の防除を実施する。なお、一部の薬剤に対して耐性菌が発生しているため、薬剤散布の際は、都道府県が発表する発生予察情報等を参考に効果的な薬剤を選定し、的確に実施しする。
同病は、収穫後の防除対策を適切に行うことにより、翌年の発生の抑制に繋がる。今年多発生となった園地では、来年の発生を抑えるため、収穫後に、り病枝の切除と薬剤散布による防除と、り病葉(落葉)の園外への除去を的確に実施する。
ぶどう
ベと病の発生が、中国と北九州の一部の地域で多くなると予想。同病は降雨が多いと多発する傾向があるため、断続的に降雨がある場合は、発生状況に注意が必要。対策は、り病部の除去、薬剤散布等の防除を実施。また、一部の薬剤に対して耐性菌が発生しているため、薬剤の選定は、都道府県が発表する発生予察情報等を参考にする。
茶
チャノホソガの発生が、南関東と南九州の一部の地域で多くなると予想。秋冬番茶を収穫する茶園では、新芽の発生状況をよく観察し、都道府県の発表する発生予察情報等を参考に必要に応じて薬剤散布を実施する。
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