【熊野孝文・米マーケット情報】30年産加工用米が契約出来ない大手実需者2018年5月22日
現在、6月30日の新規需要開拓米の計画認定締め切りに向けて加工用米取扱業者は産地と需要者の契約締結の取りまとめの真っ最中である。
加工用米の認定数量の推移を見ると表のように一時落ち込んだ時もあったが、ほぼ右肩上がりに伸び続けており、29年産はうるち、もち米合計で28万4004tと過去最高の数量になった。取組数量の多い産地は、うるち米では北海道2万211t、秋田3万889t、山形2万2055t、栃木1万92t、新潟2万3238tなど。もち米は北海道8278t、秋田2万3000t、新潟1万5623t、千葉4228tなどである。
なぜこれほどまでに加工用米が増えているかというと生産調整が続けられているものの、水田の水張面積自体はそれほど減ってはいないが、主食用以外の用途として加工用米を生産、それで転作したとみなされるからであり、直接支払い交付金も10a当たり2万円支払われており、それとは別に産地交付金も地区の判断によって支払われている。加工用米として認定されるには農水省の判断を仰がなくてはならない。主な需要先ではうるち米は清酒9万t、加工米飯5万t、米菓、味噌、焼酎等があげれらる。もち米は米菓と包装餅が主な需要者になっている。
取扱業者は全農、全集連の全国流通業者と商社や大手卸、原料米取扱業者といった地域流通業者に分けられるが、地域流通業者の扱いが急速に増えて6割方地域流通業者の扱いになっている。主だった地域流通業者に30年産米の契約状況を聞いてみるといずれも苦戦しているという返事が返って来た。その理由は需要者側が求める価格と産地側の希望販売価格が乖離しているからである。
産地側としては29年産まで複数年契約の助成金10a当たり1万2000円があったが、それが無くなったことや直接支払い交付金10a当たり7500円も廃止されたことから、主食用とプール計算して手取りをアップさせるためには加工用米の販売価格を値上げしてもらわなくては前年並みの手取りが確保できないという事情がある。
これに対して需要者側は原料米値上げには強い抵抗がある。すでに29年産で加工用米の使用量を減らした業界もある。味噌業界の29年度(1月~12月)の使用実績は前年度に比べ1234t減少し7862tになっている。これに対して外国産米の使用量は2万5658t増加して4万8827tにもなっている。味噌の主原料である大豆はほとんどが輸入大豆であり、コメだけを国産米を使っても意味がないという判断で価格の安い外国産米にシフトしている。味噌は使用原料の表示義務はないが、表示義務のある米菓も外国産米の使用を増やしている。ただし、米菓業界が30年産加工用米の購入希望が低調だというわけではない。むしろ29年産の購入実績より増やしたいという意向が強いのだが、提示されている30年産うるち米の価格は60kg当たり1500円アップと言うもので、とても応じられるような価格ではない。もち米も上げ幅はうるち米ほどではなかったが、一部値上げを認めざるを得ない状況になっている。どうしても値上げを受け入れられない場合は国産加工用米の使用を諦めてMA米を使用すれば良いのだが、国産原料にこだわっているところはそういうわけにはいかない。
その最たる例が芋もコメも国産使用宣言をした焼酎メーカーである。このメーカーは焼酎ブームで急速に成長、今や清酒大手を凌ぐほどの売上額になっており、コメの使用量も2万3000tという大きな数量になっている。驚くべきことにこの焼酎メーカーがある宮崎県では焼酎原料用に加工用米を生産する生産者に10a当たり3万4000円もの助成金を支払うという対策を打ち出した。それでも必要量が確保される目途は立っていない。
こうした情況を生み出している原因は何なのか? 第1は主食用米の値上がりで手取りの落ちる加工用米を生産するメリットが薄れたことにある。第2は新規需要開拓米の優先順位の一番が輸出用米になり、産地交付金の単価が青天井とされ優先的に取り組まれているためである。加工用米契約のため産地を巡って奔走している地域流通業者は「国内の需要者の原料米を優先すべきなのになぜ輸出用米を手厚くするのか? 順序が逆ではないか」と憤慨している。
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