ワクチン普及までの正念場【森島 賢・正義派の農政論】2021年5月6日
菅義偉首相が、7月末までに、希望する全ての高齢者にワクチンの接種を終える、と明言した。これは、首相の政治生命を賭けた公約といっていい。是非とも守ってもらわねばならぬ。それができれば、コロナ禍は終息へ向かって、急速に進んでゆくだろう。
これに対して、全国の6割以上の地方自治体が、それは無理だ、といっているという(dot.asahi.com)。いったい、どこの地方自治体なのか。それを国民の前に明らかにすべきである。
その最も分かりやすい方法は、ワクチン接種の進行状況を、いまのような都道府県別ではなく、市町村別に詳細に、しかも毎日公表することである。
ここには、与党も野党もない。人の生命がかかっている。政争の具にしてはならない。日本の総力を傾けて、この政策の実現にむけて協力しあわねばならない。
それと同時に、ここで強調したいことは、それまでの3か月の間に予想されるコロナ禍を、最小限に抑えることである。いま、コロナは猖獗を極めている。
上の図は、Our World in Data が、主要国のワクチン接種の、これまでの推移を示したもので、それに菅首相の公約を、つけ加えたものである。
7月末の日本の接種率の30%は、高齢者のうちの接種希望者の割合を80%とし、また、それまでに希望する医療従事者の全員が接種を終わる、と仮定したものである。
◇
これまで日本は、ワクチンの国際的な争奪戦で無残な敗戦国になり、無様なワクチン後進国になっていた。人の生命を軽視する、非人間の国と言われてもしかたがない。
しかし、この政策を実施すれば、遅ればせながら、ワクチン先進国の仲間に入ることができるだろう。また、この政策を続ければ、近い将来に集団免疫を獲得できるだろう。そうなれば、三密も不要になるし、経済活動も復活できる。
だが、ここで強調したいことは、こうした楽観ではない。それまでに予想される、政治の無策である。無策による多くの国民の甚大な苦難である。それは病苦であり、生活苦である。
◇
今後も政治が無策なら、国民の苦難は耐え難いほどに大きくなるだろう。
いまでも、多くの感染者が隔離されず、自宅に閉じ込められている。そして、入院もできず、必要な治療を受けることもできず、その結果、自宅で死亡する人さえ各地で出てきている。
それだけではない。同居する家族に感染させて、いまや感染拡大の最大の感染源になっている。
それにもかかわらず、政治は国民に対して、自宅から出るな、と要求するだけである。そうして、マスコミを使い、いわゆる専門家を使って、対策はそれしかない、と言わせている。つまり、政治は何もしようとしない。無策である。
このように政治は、あと3か月の我慢だといって、国民に苦難を強いているだけだ。そうして、この苦難を軽減しようとしない。まさに犯罪的である。
◇
いま政治が行うべきことは何か。
医療崩壊という非常事態のなかで行うべきことは、医療体制の非常時的な編成である。それと同時に、ワクチンの国産化を始めることである。
具体的には、感染者の自宅療養の禁止である。そのための隔離病棟の全国的な新設である。今からでは遅い、などといってはいられない。感染者は、感染病対策の原則にしたがって、全員を隔離されなければならない。そうして、手厚く治療されなければならない。
それと同時に重要なことは、政治の医療従事者に対する非常時体制への強力な協力要請と、政治としての感謝の意志の表明である。
もう1つは、ワクチンの国内開発である。政府は、いままでの外国依存を反省し、今すぐに着手すべきである。そうすれば、国民からの信頼がえられるし、他国からワクチン後進国と軽蔑されてきた恥辱を、立派に晴らすことができる。
これらは、いずれも次に襲来する新々型コロナへの備えにもなるだろう。
(2021.04.26記)
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