負けから学ぶこと多し【小松泰信・地方の眼力】2021年11月10日
「令和初の衆院選とかけまして迷宮入りした難事件と解きます。(その心は)悩んだ末に、結局、自公(時効)になりました」(謎かけ芸人・ねづっち氏、毎日新聞11月10日付夕刊)。
砂上の「安倍派」誕生か
モリ・カケ・サクラなど、数多の悪事が時効にはなっていない安倍晋三氏。自民党最大派閥の細田派は9日の幹事会で、安倍氏に派閥復帰と会長就任を要請することを決めた。11日の総会を経て「安倍派」が誕生する。砂上ではあるが、キングメーカーとしての足場ができた。岸田首相が思い通り動かず、寵愛する高市政調会長に女性首相の芽がないとみれば、再々登板の可能性あり。すべては彼の「腹」次第か。
ただし、毎日新聞(11月4日付)によれば、同紙が、衆院選全候補者を対象に実施したアンケートのうち当選者分を集計・分析した結果、学校法人「森友学園」を巡る財務省の決裁文書改ざん問題については、その44%が「さらに調査や説明をすべきだ」と回答。与党内でも自民の17%、公明の35%がさらなる調査・説明を求めているとのこと。
記事は、「長期政権の『負の遺産』とされる森友問題に岸田文雄首相がどう向き合うかは今後の焦点の一つとなる」としている。
野党共闘に水、与党に塩
野党共闘、とりわけ立憲民主党の後退に少なからぬ影響を及ぼしたのが芳野友子(よしの・ともこ)第8代連合会長。
10月7日の記者会見において、立憲民主党中心の政権が樹立された場合、共産党は「限定的な閣外からの協力」をするとした立憲と共産の党首合意に対して、「共産の閣外協力はあり得ない。(立民の)連合推薦候補にも共産が両党合意を盾に、共産の政策をねじ込もうという動きがある」と述べた。
その後も、共産党との共闘に不快感を示し、野党共闘に水をさし続け、結果的に与党に塩を送ることとなる。
11月4日に行われた日本記者クラブにおける会見でのこと。前半30分の講演の多くは「ジェンダー平等」に割かれたが、後半30分の記者からの質問においては、野党共闘とりわけ共産党に関する見解を問うものが多かった。
「共産党との閣外協力を完全に廃棄しない限り立憲を応援しないのか」「共産党と組んだ立憲が議席を減らしたことは、芳野氏にとっては歓迎すべきことだったのか」「共産党が入り込んで、両党の合意を盾に、立民候補の陣営で、共産側が独自政策をねじ込もうとする動きがあると懸念を表明されたことがあったが、その具体的事例を示して」「立憲民主党の次の代表に、どのような共産党との関係を求めるのか」「今の共産党はかつての原理主義的な時と違い、かなり社会民主主義的になっているが、それでも許さないのか。だとすれば、いわゆる反共攻撃に呼応することになるが」など、鋭い質問の数々。
しかし、「共産党との共闘はあり得ない。中道の精神に立つ連合は、共産主義とは向き合わない」と答えただけ。
「ガラスの天井」を破った芳野氏の頭がカタイことと、氏が隠れ自民党チアレディであることがよく分かる会見だった。
砂上にたつ立憲民主党の課題
「芳野氏は、市民連合を介し、野党四党が政策の合意や統一候補の調整など、時間がない中でどれほどの努力を積み上げてきたか、ご存じなのか。本来、組合組織と政党は対等・平等で、互いにリスペクトする関係にある。圧力団体であってはならない。(中略)来年の参院選も、統一候補でなくては自公と戦えないのは自明の理だ。連合は、共産党との共闘を模索する立民でなく、国会審議でウソばかりの自公政権にこそ、苦言を呈する強さを持って欲しい」とは、東京新聞(11月9日付)に掲載された読者(荒井信次氏・69、さいたま市)の声。
西日本新聞(11月2日付)の社説は、衆院選の結果を受け、「小選挙区で自民、公明の連立与党に対抗するには、野党側も一つのまとまりになるべし、というのは分かりやすい理屈だ。ただそうした数合わせの論理が先行し、有権者の疑問を解消する時間不足は否めない」とする。そして、「立民は有権者との日常的な対話が足りていないように思える。有権者の違和感が分からないから党や候補者の訴えが響いてこない。地域での組織力といった地力で与党側に劣るだけに、欠かせないポイントのはず」と苦言を呈し、「民意をくみ取れていない現実を直視しない限り、党勢拡大への近道はないと認識すべきだ。来夏の参院選に向け、支持者や有権者とともに公約を一から練り上げていくような地道な作業に取り組んではどうか」と提言する。
立憲民主党の代表選の眼目に、「野党共闘の在り方」をあげるのは、新潟日報(11月6日付)の社説。
「選挙で自公の堅固な枠組みに対抗する上で、野党がバラバラでは勝機が見いだしにくいのが現実」とし、「『共産のせいで負けた』とでも言うような結論付けは、安易過ぎるのではないか」と釘を刺す。「参院選を控える中で求められるのは共闘の功罪を丁寧に分析し、教訓を次に生かすこと」とし、「立民が風やムード頼みから脱し本気で政権交代を目指すなら政策立案能力をもっと磨き、課題として指摘されてきた党組織の足腰の強化についても力を入れる必要がある」と急所を衝く。
金丸も竹中も甘い汁は手放さない
日本農業新聞(11月10日付)の1面は、政府がデジタル改革と規制改革、行政改革について一体的に議論する「デジタル臨時行政調査会」を新設したことを伝えている。民間構成員として、農協改革に関与した金丸恭文氏(かねまる・やすふみ、フューチャー会長兼社長)も選ばれている。
解説記事では、「政府の規制改革推進会議は、岸田文雄首相が自民党総裁選で『改組』を掲げたにもかかわらず、従来通り個別に存続することになった」として、「約束の反古」に不満の意を漂わせている。
さらに3面では、地方活性化を議論する「デジタル田園都市国家構想実現会議」のメンバーとして、政商の誉れ高き竹中平蔵氏(パソナグループ取締役会長)が入っていることを伝えている。竹中外しがなされなかったことからも、安倍体制の継承は明らか。
その記事の横では、簗和生(やな・かずお)氏が自民党の農林部会長となったことを伝えている。「農政を重視する若手議員の一人」と紹介されているが、そんなことまったく知らな~い。
氏を全国区にしたのは、5月20日の党会合で、性的少数者を巡り「生物学上、種の保存に背く。生物学の根幹にあらがう」といった趣旨の差別発言。閣僚経験者からも「差別意識があると言われても仕方ない。愚かな言動だ」と言われる始末。やな感じ。
でもJAグループの偉いさんたちは、こんな人たちとつるむのが好きなんだよね。恥ずかしくないの。
「農ある世界」だけではなく、市井の人びとを取り巻く情況は悪化の一途。だからこそ、ますますやる気の出てきたばい。
「地方の眼力」なめんなよ
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