シンとんぼ(23)エリートツリー等の活用割合増加2022年12月17日
シンとんぼは、農業現場でも十分に実践が可能で、環境影響が正しく低減され、国産農産物の生産が向上して、国民の胃袋を国産で賄える状態になることを切に願いつつ、「みどりの食料システム戦略」のKPIに切り込んでいる。今回から林野分野のKPIを検証してみる。
1つ目が、「エリートツリーの活用割合」だ。
エリートツリーは簡単に言えば樹木の育種であり、従来よりも林野の経営に役立つ性質を持つ樹木を選抜・交配して、優れた性能の品種を作り出すというものだ。
この優れた性質として現在の選抜基準にされているのが、1.成長が早いこと、2.CO2の吸収量が多い(炭素貯留量が多い)こと、3.材質や直通性に優れる、4.花粉が少ないことだ。
それぞれの選抜基準ごとにどんなメリットを狙ってのことか検証してみる。
最初が1の成長が早いことによるメリットだ。これには3つのメリットがある。
それは、①成長が早いことで栽植本数が減らせるので間伐の手間を省けることである。成長が早いことによって従来の1haあたり3000本の栽植本数を半分の1500本に減らせるので、大体1本あたり100円位と言われている苗木代金が従来の30万円から半分の15万円に減らせる。次に、②育成期間がおよそ半分にできるので下刈りの回数を減らせることである。この下刈りは樹木の育成で一番コストがかかる費用で全作業の3割弱を占めている。費用も、1回あたり1ha10万円ほどかかり、従来であれば6回ほど行われているので1haで60万円の経費がかかる。これに対しエリートツリーを導入すれば下刈り回数を半分の3回に減らせるので1haあたりコストを半分の30万円に減らせる。最後に、③従来よりも早い期間で伐採できるので、伐採機会(収益を得る機会)が増やせるといったことだ。従来よりもおよそ半分の早い期間で育成し伐採できるので、栽植から伐採までに従来は60年かかっていたものが、エリートツリーであれば半分の30年で伐採できるので、従来と同じ育成期間(60年)であれば2回伐採でき、収益機会を倍にすることができる。
次に2.CO2の吸収量が多い(炭素貯留量が多い)ことだ。CO2吸収量が増えれば、その分J―クレジットによる収益機会に変えることができるし、炭素貯留にもより貢献できる。
次に3.材質や直通性に優れることだ。材質の向上は木材の売買単価の上昇につながるし、直通性が良くなることで良品率が向上し収益性が向上する。
最後の4.花粉量の低減は、世の花粉症に悩む皆さんにとって朗報となり、社会貢献度も大きいだろう。
これらのエリートツリーのメリットを総合すれば、補助金無しで林業収入のみによって収支が賄うことも可能になると考えられており、うまくいけば、林業の復興につながるだろう。そのことを図る指標として、みどり戦略では苗木でのエリートツリー利用率の向上を目指しており、現在が5%弱のところを、2030年に30%、2050年には90%の利用率にするとしている。是非とも実現して、日本の林業を復活させてほしいものだ。
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