多様な自由と民主主義の共存【森島 賢・正義派の農政論】2023年4月17日
世界の各国には、それぞれに誇るべき自由と民主主義がある。それぞれの風土に育まれ、歴史の厳しい試練のなかで培われてきたものである。
だが、自国の自由と民主主義だけが誇るべき普遍的なものだ、と思い込んでいる国がある。それは、愛国心の発露なのだろう。各国の勝手だし、微笑ましいといってもいい。しかし、それを普遍的な価値だ、といって他国に押し付けようとするのは迷惑である。
ウクライナで米欧が行っているのは、このような迷惑行為である。しかもNATO軍を従え、ウクライナを尖兵にして、ロシアを脅かしている。
迷惑というだけではすまされない。毎日多くの人たちが戦争の犠牲者になっている。
そして、わが日本は米欧側に立っている。
アジアはどうか。日韓以外のアジアの国々は、米欧の自由と民主主義を普遍的と考えていない。だから、ウクライナ紛争での米欧の振る舞いを白い目でみている。
アフリカや中南米の国々も同様である。
上の図は、ウクライナ紛争の一方の当事者であるNATO軍事同盟の加盟国の人口が、世界の人口に占める割合が14%でしかないことを示している。日本や韓国などのNATO友好国の7%を加えても、僅か21%の少数派である。
これは、残りの圧倒的多数である79%の人たちは、NATOのウクライナに対する軍事支援を、白い目で見ている、ということである。
それなのに、なぜNATOはウクライナに対して軍事支援を続けているのか。
◇
それは、普遍的価値と勝手に自称する米欧の自由と民主主義を、東方へ拡大するためだという。そしてさらに、世界中へ拡大するためだという。
それは、彼らの正義感に駆られたものか。そうではない。搾取の拡大である。
世界の多くの人たちは、そのことを見抜いている。だから、米欧に賛同していない。米欧の自由と民主主義を、普遍的価値とは思っていない。
何が問題か。
◇
米欧の自由と民主主義がもたらしたものは、格差と分断である。その原因は搾取の自由である。そして、その根源には生産における私人の絶対的な支配がある。米欧の自由は、この社会体制の存続に抵触しない限りでの自由にすぎない。
米欧の民主主義も同様である。民主主義には言論の自由が必須だが、この社会体制を揺るがすような言論は許さない。
これは、法律的な禁止ではなく、経済的な禁止である。そうした言論を流布する組織に経済的な圧迫を加えて、存続できなくする、という老獪な方法で、実質的に禁止する。
そもそも民主主義とは何か。その根源に、全ての人は平等という高邁な思想があるのではないか。格差と分断の反対物ではないのか。
だが、米欧には格差と分断が蔓延している。これは民主主義ではない。まして、普遍的な価値がある民主主義ではない。
◇
非NATOの側にも、問題がないわけではない。自由も民主主義も、ある程度の制約がある。
だがそれは、格差と分断を避けるための制約である。その根源には、搾取の否定がある。だから、生産の全てを私人に支配させる、ということはしない。社会が監視している。そして、そういう社会体制を堅持している。
それに加えて、いま非NATOの側は、NATOの側から敵視され、軍事的圧力にさらされている。だから自衛のために、自由と民主主義を、ある程度ではあるが制約せざるをえない。
◇
以上のように、NATO側も非NATO側も、自由と民主主義には大きな問題を抱えている。
だから、そのことを互いに否定しあうのではなく、互いに友情をもって認め合い、切磋琢磨すればいい。その先に同じ普遍的な到達点があるかどうかは、歴史と風土と、人間の叡智が決めることである。
このさい、軍事力は決して使ってはならない。
(2023.04.17)
(前回 「1ダースなら高くなる」という文明の危機)
(前々回 ウクライナの戦争犯罪を国連が公表)
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