食糧を武器にするな【森島 賢・正義派の農政論】2023年7月24日
食糧を武器にするな。
食糧は第3の武器、と以前からいわれてきたが、いま、その悪夢が現実になっている。ウクライナの穀倉で熾烈な戦闘が行われているし、僅かに収穫した穀物を輸出したいと思っても、輸出港が戦場になっているので、それもできない状況である。
他方のロシアでは、ロシア産の穀物輸出に米欧側が悪辣な妨害を行っている。そのため、平時のような輸出ができない状況である。
この結果、食糧の国際市場が供給不足になり、価格が暴騰している。これによって、ことに弱者が飢餓状態に陥っている。そして、こうした悲惨な事態を引き起こした責任を、互いに相手に押し付け、非難しあっている。
こうした意味で、いままさに、食糧が武器になっている。そして、それが原因になって、世界中の食糧価格が暴騰している。そのため食糧が、ことに弱者にまで届かない。
子供が飢えているのを、なすすべもなく見守っているだけのお母さんの心情を考えると、胸が痛む。それでも食糧を武器にして、今後も戦い続けるのか。
一刻も早く、ウクライナに平和を取り戻さねばならない。平和交渉を始められないのなら、せめて、停戦のための交渉を、ただちに始めるべきである。こうしている間にも、多くの人たちが死傷している。
紛争が解決すれば、価格は元に戻る。停戦交渉を始めるだけでも、価格は下がるだろう。そうなれば、弱者にも食糧が届き、お母さんたちの幸せな笑顔が戻るだろう。
上の図は、世界の代表的な食糧価格であるシカゴ市場の、毎日の小麦価格を64年間みたものである。最近の暴騰は、歴史的な暴騰といっていい。
この原因が、ウクライナ紛争にあることは、明らかである。紛争が始まった直後から、暴騰が始まっている。ウクライナの穀倉が戦場になっているし、平時のような輸送ができないことが原因である。
◇
なぜ、食糧を武器にしてしまったのか。
武器といっても、キナ臭いものではない。しかし、だからといって食糧を武器にしていいわけはない。爆弾や砲弾が不足しているからである。武器になるのなら、何でも使う。食糧さえも武器にして、子供さえも餓死させる。
最近になって、アメリカはクラスター爆弾を公然とウクライナに与えだした。そして、実際に使わせだした。これに対して、日本の有識者は、アメリカもウクライナもクラスター爆弾を禁止する条約に入っていない、だから国際規律に違反していない、と援護している。そうして、紛争を煽っている。
日本や米欧の一部の政治家や有識者がいう正義は、このように、唾棄すべきものである。
◇
それは、5月に広島を訪問したときの、米国のバイデン大統領の言動と似ている。人前から隠れて、原爆記念館をこっそり訪問したのだが、原爆は正義のために使った、といいたかったのだろう。
こんどのクラスター爆弾も、正義にために使っている、といいたいようだ。まして、食糧を武器にすることなど、何のためらいもない。正義や道徳の閾を、ここまで下げてしまったのである。
もともと、良い戦争などというものがないように、良い武器など、ありはしないのだ。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日