コメ政策大転換の年【熊野孝文・米マーケット情報】2025年1月7日
あけましておめでとうございます。
新年はコメ業界にとって大転換の年になると予想しています。足元では市場で取引されるコメの価格が銘柄によっては1俵4万円を超えるという異常な高騰を見せています。平成のコメパニックは平成5年産の大凶作という原因が引き金になりましたが、令和のコメ騒動は平年作にも関わらず、コメ不足が起きています。真の原因を明らかにしない限り令和のコメ騒動は益々激しさを増します。いかに紙の上のデータでコメ不足はないと言ってみたところでコメ売り場にコメはなく、並んだと思ったら従来価格の2倍では何のために「食糧法」があるのかわからない。
食糧法(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律 平成6年12月14日)の第一章総則に「この法律は、主要な食糧である米穀及び麦が主食としての役割を果たし、かつ、重要な農産物としての地位を占めていることにかんがみ、米穀の生産者から消費者までの適正かつ円滑な流通を確保するための措置並びに政府による主要食糧の買入れ、輸入及び売渡しの措置を総合的に講ずることにより、主要食糧の需給及び価格の安定を図り、もって国民生活と国民経済の安定に資することを目的とする」と明記してある。
さらによく読んでみると第49条に「政府は、政令で定めるところにより、主要食糧の交付または貸し付けを行うことが出来る。政府は、必要があると認める場合には、主要食糧の貯蔵、交換、加工又は製造を行うことが出来る」とされ、米穀の貸し付けについては第16条で「法49条第一項の規定による米穀の貸し付けは、米穀の需給事情等を勘案して必要がある場合に、次に掲げる者に対して行うことが出来る。1、外国の政府その他これに準ずるものとして農林水産大臣が指定する者。2、前号に掲げる者に対して米穀の貸し付けを行うものとして農林水産大臣が指定する者」としている。これを現状に当てはめるとコメの集荷の多く担う組織が図らずも卸売業者に対して供給責任を果たせなくなっていることから、この組織が政府が所有する米穀を借り受けてその分を卸に提供する。その後、借り受けた分を政府に返却するということも出来る。これは政府備蓄米だけではなく、第二の政府備蓄米の役割を果たしている飼料用米でも可能である。飼料用米の中には主食用品種で生産されたコメが16万t程度あり、これを貸与した形で主食用に転用することも可能である。
こうしたことが可能になる食糧法とはよくできた法律だと言えなくもないが、では何のために備蓄米を政府が買い入れたり、巨額の助成金を投入して主食用米を飼料用米へ転用しているのかという根本的な問いに答えられなくなってしまう。こうしたことを行うのは農水省が得意とするコメの制度いじりだと言われかねない。こうした小手先の制度いじりでは、今起きているコメの価格の高騰の根本的原因を解決することは出来ない。今起きていることの真の原因とは55年間続いたコメ減らし政策の結果であり、この政策を続ける限り本当に主要食糧のコメが食べられなくなってしまう。
真に食糧法の目的である主要食糧(コメ)の供給と価格の安定を確保するためには、コメを減らす政策ではなく、コメを増産する政策に大転換すべきである。需要が減っている中、増産したらコメが余ってしまうのではないかと言われるが、これはコメの需要を「主食用」という需要に限定しているからで、こうした縛りをなくせば需要は無限と言えるほどある。例えばコメを原料としたプラスティック「ライスレジン」の需要は将来的に50万tを見込んでいる。また、コメ加工食品もパックご飯など成長が期待できる分野も数多くある。これらの業界がより多くコメを使用できるようにするには用途限定米穀をいう法律の縛りをなくし、価格は市場に任せ、品位によって価格が形成される自由で公平な現物・先渡し市場を整備して、価格変動に備えた先物清算市場を両輪にすることによって産業インフラとして機能を発揮できる。価格を市場に任せることで国内産米も国際的な米価に近づくことなり、国際市場で戦える価格競争力が付き、輸出拡大のチャンスをつかむことが出来る。現状はSBS入札で明らかになったように現地価格が安くない台湾からでさえジャポニカ種をkg341円の関税を支払って輸入して国内で5kg3000円以下で販売できるような状況が生まれており、これでは日本米の輸出など不可能だ。日本産農産物食品の輸出拡大を国策に掲げるならば、第一にコメが国際的に戦える価格水準にならなければまさに絵に描いた餅である。価格が下落しても生産者の所得はEU並みの補償制度で持続可能かつ拡大できるように措置を講じる必要がある。これによって日本のコメが真に産業となり世界に羽ばたくことが出来るようになる。
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