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【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「盗人に追い銭」「鴨葱」外交の生贄にしてはならぬ農産物2025年5月2日

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トランプ関税に浮足立って、一目散に出向いて、どれから譲ればいいですかと聞きに行き、絶対切ってはならないコメのカードを最初から出すから許してと言い出すのは交渉になっていない。すべてを失うだけだ。コメ・農業を守るのは「国防」の一丁目一番地だ。

「盗人に追い銭」「鴨葱」外交

他の国は、確固たる国家戦略、外交戦略を持っているから、米国に怯むことはないが、日本は、米国の要求にどう応えるかを考えるだけの「外交」で「思考停止」し、独自の国家・外交戦略がなくなってしまっている。

トランプ大統領の基本姿勢は「反グローバリズム」「自己完結型経済」と思われるので、グローバル化に晒され、過度に輸入依存に陥っている日本の食と農からすると望ましい方向性を示唆しているとも言える。

米国は日本を米国の余剰農産物の処分場として、日本を食料で自立させないように「胃袋からの属国化」を進めてきたが、米国が関税を引き上げてでも米国産業を守るなら、日本も輸入依存度を減らして食料自給率を高め、食と農の独立をめざしたいところだ。しかし、日本には、その国家戦略がない。

一方で、「米国ファースト」で自国利益を高めるに日本にもっと農産物を買わせる要求も強まるが、それに応えるのに必死になってしまう。わざわざ、急いで訪米して、交渉の優先順位を教えてくれ、つまり、何から差し出せばいいかを聞きに行くとは情けない。まさに、鴨が葱を背負って俺を食べてくれ、と言いに行く「鴨葱」外交だ。

前回からの経緯

前回のトランプ政権でも、25%の自動車関税で脅され、他の国は毅然と突っぱねたが、日本は「うちだけは許して。何でもしますから」と、中国が米国との約束を反故にして宙に浮いた300万トンのトウモロコシまで「尻拭い」で買わされ、国民には「蛾の幼虫の発生でトウモロコシに被害が出た」と虚偽の理由まで持ち出し、「盗人に追い銭」外交を展開した。それが繰り返されようとしている。

前回、日本は、牛肉(関税の大幅引下げと緊急輸入制限措置の無効化)と豚肉(実質ゼロ関税)を譲り、米国側がTPPで日本に約束していた牛肉関税撤廃は反故にされた。牛肉は、最終的に9%までに関税を引き下げた。

牛肉の低関税が適用される限度(セーフガード)数量は、米国向けに新たに24.2万トン(29.3万トンまで増やす)を設定した。TPP11で設定した61.4万トン(73.8万トンまで増やす)は、TPPで米国も含めて設定した数量がそのままなので、日本にとっては、米国分が「二重」に加わった。かつ、輸入が急増してセーフガード数量を超えて米国からの輸入が増えたら、その量まで発動基準を広げていくという「なし崩し」対応を約束してしまった。

さらに、米国への日本からの牛肉輸出については、26.4%の関税の撤廃など、TPP合意を反故にされた。対米牛肉輸出の低関税枠は現在200トンしか認められていない。TPPでは低関税枠も拡大しつつ、枠も枠外関税(26.4%)15年目に撤廃される約束だったことを隠して、前回の日米協定では200トンから複数国枠にアクセスできる権利を得たのでTPP合意より多くを勝ち得たと政府は言った。実質的には多少の枠の拡大(200トンを少し超えても枠内扱いが可能になる程度)にとどまり、得たものはTPPで合意していた関税撤廃とは比較にならないほど小さい。

牛肉についての米国側の合意内容の比較

豚肉は、日本政府は否定しているが、ほぼ全面関税撤廃に近い。なぜなら、EUや米国は、almost duty free (ほぼ無税)と評価したのだから。一方、米国向けのコメ(7万トン)と乳製品(3万トン程度)TPP合意に基づく追加輸入枠の実施は見送られた。

豚肉の関税構造

コメは民主党地盤の加州が主産地なのでトランプ氏が重視しなかったとの見方もあったが、米国の米と酪農団体は反発した。米国はTPPから離脱したのだから、コメの7万トンの追加枠も消えたと言ってよいのだが、米国は、当然の如く、この実現を求めてくる。

注: BSフジ プライムニュースで使用された図

: BSフジ プライムニュースで使用された図

乳製品については、米国、豪州、ニュージーランド、カナダを含めたTPPワイド枠で7万トンの追加枠を設定し、米国がTPPから抜けても、7万トン全量を残りの国に認めてしまった。そのうち、約3万トンが米国枠だったと推定されるので、米国にその分を追加すると、日本にとっては「二重」の輸入増になってしまう。

自動車のために農業を生贄にする構造

前回のトランプ政権での日米貿易協定の交渉で、日本の交渉責任者は「自動車交渉のための農産物のカードはまだある」、つまり、自動車のために農産物を差し出していくリストがある、と漏らしていた。今回、自動車関税の見直しを懇願するための前回の積み残し分で、生贄リストに残る目玉は、米と乳製品だ。輸入枠の拡大だけでなく、関税削減にも踏み込んでくる可能性もある。

関税削減には原則的には協定締結が必要だが、輸入枠の拡大はすでに77万トンのミニマム・アクセス米(本来は全量輸入義務ではなく輸入機会の提供)のうち米国との「密約」で毎年確保している36万トンの米国枠を広げることなどでもできる。主食用の10万トンの枠(SBS=売買同時入札枠)で実質的に米国向け追加枠を確保する方法もすでに模索されてきた。77万トンの枠外に7万トンを設けるとなると影響は大きくなる。

さらに、大豆やトウモロコシの輸入拡大も要求されているという。まさに、前回と同じだ。米中関係の悪化による「尻拭い」をまた受け入れるのか。この流れは、苦しむ日本の農家をさらに追い詰め、食料安全保障の崩壊を早める。

特に、国内の稲作農家に減反を要請し続け、十分な所得が得られずに苦しんでいる稲作農家にとって、コメの輸入拡大は、まさに追い打ちで、さらに稲作をやめる農家が激増しかねない。そうなったら、他の穀物が90100%を輸入に依存する中で、唯一自給率を100%近くに維持してきたコメが急速に輸入依存に陥る。国民は、輸入米でコメが安くなったと思ったら、実は、飢餓の危機に近づいていることを認識する必要がある。国産農産物を守ることは、国民一人一人の命を守る安全保障のコストなのだという認識が必要である。コメ・農業を守るのは「国防」の一丁目一番地だ。

我が国は、長らく、米国の要請に対処することが「外交」という「思考停止」を続け、独自の国家戦略・外交戦略を持っていない。欧州などは独自の国家・外交戦略があるから米国と対等に主張が交わせる。日本が独立国として米国依存から脱却して世界の中でどう生きていくのか、それを早急に確立することが求められている。

令和の米騒動.jpg

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