【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】農協潰しが再開された2025年6月26日
「農協改革」という名の「農協解体」の本丸は、①農林中金の貯金の100兆円と全共連の共済の55兆円の運用資金を外資に差し出し、②日本の農産物流通の要の全農をグローバル穀物商社に差し出し、③独禁法の「違法」適用で農協の共販と共同購入を潰し、農産物の買い叩きと資材価格の吊り上げを強化することだ。
この③に関しても、再度、動き始めた。農協に対して共同販売でなく買取りにするよう要請が行われた。民間組織の農協に対して、そのような要請を行うこと自体が重大な越権行為であるとともに、これは深刻な問題を孕んでいる。
歴史的に、個々の農家が大きな買手と個別取引することで農産物は買い叩かれ、個々の農家が大きな生産資材の売手と個別取引することで資材価格は吊り上げられ、苦しんだ。それに対抗するため、農家が農協を作って結集し、共同販売と共同購入が開始された。
つまり、多数の農家に対して市場支配力をもつ農産物の買手と生産資材の売手が存在する市場で、個別取引を推進することは、農産物の買手と資材の売手の利益を不当に高める危険がある。だからこそ、農協の存在による共同販売と共同購入が正当化され、それは取引交渉力を対等にするためのカウンターベイリング・パワー(拮抗力)として、カルテルには当たらないものとし、独占禁止法の適用除外になっているのが世界的な原則である。
経済理論的にも、寡占的市場では規制緩和は正当化されない。市場支配力を持つ買手や売手がさらに利益を得る一方で多数の利益が減少する形で、市場がもっと歪められてしまう可能性があるからである。つまり、農業所得の向上のためには、協同組合を通じた共同販売・共同購入の強化こそが理論的にも実態的にも求められるのである。
さらに、農協による共同販売や生協による共同購入は、いずれも、中間マージンを削減することにより、農家にはより高く、消費者にはより安く農産物を提供する機能を果たしていることは、拙著『協同組合と農業経済: 共生システムの経済理論』(東大出版会)でも示したとおりだ。農協、漁協、生協などの協同組合は共販と共同購入により、生産者・消費者双方を助ける大切な組織なのである。
しかるに、2017年の農業競争力強化支援法に先立つ2016年に農業競争力強化プログラムは、買取販売への移行や資材の情報提供に徹することなど、共販と共同購入をなし崩しにする方向性を求め、協同組合の存立要件を否定するものとなっている。それと連動して、個々の農家の取引の多様化を促す農業競争力強化支援法は、農産物の買い叩きと資材価格の吊り上げにつながり、農業所得の向上とは真逆の結果になりかねない。
これらは「農業生産資材及び農産物の販売に関し、公正かつ自由な競争を確保するため、農業分野における独占禁止法の取締りの強化を図る」(「規制改革に関する第4次答申」)と呼応するもので、農業協同組合による共販と共同購入を独禁法適用除外とする世界の原則(米国では、Capper-Volstead法によって、反トラスト法の適用除外になっている)を踏みにじるものである。
しかも、最近、我が国では、農協共販に対して公正取引委員会の脅しともとれる査察が幾度も入り、独禁法の適用除外がなし崩し的に実質的に無効化される事態が進行していることも容認しがたい違法行為である。
こうした一連の流れを再度加速する動きが露骨に出てきているのが今なのである。これは、農協潰し、ひいては、協同組合潰しである。一部の利益のために国民を犠牲にする流れが強化される重大な危機だと認識する必要がある。
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