【今川直人・農協の核心】全中再興(1)2025年6月30日
禍福無門
ガット終結から30年経った。2001年の農協法改正は法の目的に及んで農協組織が農業振興に全力で取り組むことを求めた。焦点は経済事業で、全農改革に向かうのは必然である。ここで、行政は法の建前に基づき全中の指導力発揮を求めた。全中はかつて経験のない連合会の事業改善に的確な対応は敵わず、2015年農協法改正で中央会規定が廃止され、全農は強力な行政指導に与る。結果は対照的であった。中央会規定廃止は理由があいまいである。行政の短慮は否定しようがない。しかし、後戻りはできない。禍福はすべて自らに発するという視点で全中(および中央会)の再興のために基本的な在り方について過去を簡単に振り返ることとする。評価の要点は2000年以降の中央会の農業改革への姿勢と農協改革の当事者能力の二点である。
千載一遇の機会
2000年の第22回以降今世紀に入り9回のJA大会が開かれている。そのメーンテーマを見ると、24回までの3回は判で押したように『「農」と「共生」』、29回までの5回は農業と「地域」(29回は「地域共生」)となっている。
経済事業を取り上げた2003年3月の農水省「農協の在り方研究会」報告書は、全中が中心となって経済事業版自主ルールを策定することを求めている。現状について、例えば生産資材購買事業で「商系業者よりも割高な品目が多く、大口利用の担い手農業者のJA離れの要因となっている」とするなど、課題を具体的に指摘している。これを受けて全中は同年7月に第1回「経済事業改革中央本部委員会」で「今後の進め方」を協議している。しかし、その後の議論は2002年12月に「農協のあり方についての研究会」から求められた事項に関する全中・全農連名の「見解」(2003年1 月)は基本方針と検討課題の検討の整理が中心で、資材購買の『具体策』に盛り込まれた4項目は、既に着手・検討されていた弾力的供給価格設定と物流拠点の整備(集約)に関する事項であった。「商系業者よりも割高な品目が多い」という具体的指摘に対する全中の全農指導は「即実行」の期待と理解するのが自然である。団体はこの具体的解決策の要求に、「図る」・「目指す」の従来の対応で臨んだ。全農がメーカーとの間の旧弊から脱することができた決め手は行政のうしろだてであった。しかし、研究会に名を借りた農水省の指示に従って全中が具体的な改善策を提示すれば、行政のうしろだては全農を指導する全中に与えられる性格のものであった。その後、2015年法改正に先立って農水省が全農に迫った事業改善策そのものは顧客として全農がメーカーに要求できる通常の取引方法の変更であった。最初で最後そして存在意義を示すことができる最後の機会を逸した。
農協法は全中にその権限を与えていたが、重要な要素が欠けていた。指導能力を培う執行・業務体制が措置されていなかったのである。
2003年の報告書が全中の全農指導のほか全中会長選挙にさらなる工夫を求め、コンプライアンスへの関りを求めていた事実、さらに法改正後の全中の一社へのスムーズな移行等を考え合わせると、先の姿として直接指導+組織の自主管理を見越していたのではないかと思われる。
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