備蓄米の有効活用法が席上取引会で話題に【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月22日
先週末、都内で関東や福島の米穀業者が参集して情報交換会と席上取引会が開催された。集荷の真っ最中とあって産地業者の参加が少なかったものの、場立ちが産地業者と携帯でやり取りしながら取引を進めた結果、茨城や千葉の検査米や青森の未検査米が成約した。成約したコシヒカリやあきたこまちは売人が歩み寄った価格で成約しており、高値時より500円~1000円がらみ安値での成約となった。また、売り物の中には各産地の6年産もち米もあったが、あまりの高値にさすがに買い声が出なかった。情報交換では、産地の刈取り進捗状況や庭先価格の動向など産地情報以上に消費地での新米販売動向に関心が集まり、中でも備蓄米の新米相場への影響が話題になった。

備蓄米ついて最初に都内の業務用大手小売がその実情を説明した。それによると都内の米穀小売店は新米の業務用向けの価格を顧客にまだ提示していない。これは予想していた価格より新米価格が大幅に高く、この価格で仕入れても販売に苦戦するのは目に見えており、やむなく備蓄米とブレンドして販売価格を引き下げる工夫をしているという。備蓄米の販売は国への報告義務があるが、これは備蓄米を買い受けた卸等が行うことになっており、卸から備蓄米を仕入れた小売店には報告義務はないので玄米販売も可能になるとのこと。業務用販売小売店にとっては備蓄米を有効活用しないと商売が続けられない状況になっているという。その事例として7年産新潟コシヒカリを例にとると米穀小売店が卸から仕入れようと思うとその単価は4万円になり、kg当たり単価を算出すると業務用として販売できるような価格にはならない。実際、老人ホームに来年4月以降の見積もりを出している大手食材卸はkg1100円という価格を出しており、消費を減らすためにこうした価格を出しているのだと思うと解説していた。新潟コシヒカリについては出席した卸から近く農協系統の販売価格が3000円値上げされ、3万8000円になるという情報があるとし、プライスリーダーの新潟コシヒカリの農協系統販売価格が値上げされると他の産地も追随するのではないかと懸念している。
消費地での新米販売動向は関係なく産地で繰り広げられる集荷合戦の煽りで新米価格が吊り上がっていくことを危惧している。この卸は量販店との取引が主力で、備蓄米の搗精を引き受けていることから、この委託搗精ビジネスに当面特化するのが賢明ではないかとしており、卸サイドからも備蓄米の有効活用の方法が示された。また、米穀小売店への玄米販売に特化している玄米卸も備蓄米の搬入が続いていることにより、低温倉庫には備蓄米がビッシリ入っているとのことで新米を入れるスペースが限られているとしていた。
備蓄米は主食用米だけでなく、コメ加工食品業界にも売却されており、このことについて原料米取扱業者は、大手米菓メーカーの中には2万tを申し込んだところもあるという。ただ、加工業界向け備蓄米の売却には買い受けるために様々な条件が課せられている。その条件というのは、第一は過去に加工用米を買い受けた実績があるかどうかで、4,5,6年の買い受け実績が問われる。買い受け実績がない場合、7年産加工用米を買い受ける計画があるのかが問われるが、7年産加工用米は生産者が主食用米にシフトして生産量が大幅に減少しているうえ、仮に生産する予定があっても契約価格は大幅に高い価格になり、簡単には契約する予定があるとは言えない。このためコメ加工食品メーカーの中には「農水省は本当に備蓄米を我々に売却するつもりがあるのか」と、こうした要件を設ける売却手法に反発している。実際、加工用向け備蓄米の売却の数量枠は7万5000tあるが、こうした足枷があるためか申し込み数量は4万t台にとどまっている。
加工用米を買い受けてきた加工食品メーカーの中には冷凍米飯メーカーもある。総量としては7万t程度が冷凍米飯メーカーの原料米として使用されてきた。ただ、6年産米は契約した数量が納入出来なかったケースがあり、その穴埋めとして備蓄米が使われたという情報もある。その備蓄米は現在売却されている加工用向けの備蓄米(令和2年産米)ではなく、入札販売された31万tの備蓄米で、年産が新しいものだっただけに冷凍米飯メーカーとしても助かったに違いない。最も助かったのは契約不履行にならずに済んだところで、ここが備蓄米を最も有効に活用したということになるのだろう。
備蓄米の有効活用はまだある。それは、備蓄米は売るだけでなく、国が買入れることも出来る。このことこそが最も有効活用できる制度運用の核心部分とも言える。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】冬春トマトなどにコナジラミ類 県西部で多発のおそれ 徳島県2025年11月7日 -
米の民間4万8000t 2か月で昨年分超す2025年11月7日 -
耕地面積423万9000ha 3万3000ha減 農水省2025年11月7日 -
エンで「総合職」「検査官」を公募 農水省2025年11月7日 -
JPIセミナー 農水省「高騰するコスト環境下における食料システム法の実務対応」開催2025年11月7日 -
(460)ローカル食の輸出は何を失うか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年11月7日 -
「秋の味覚。きのこフェア」都内の全農グループ店舗で開催 JA全農2025年11月7日 -
茨城県「いいものいっぱい広場」約200点を送料負担なしで販売中 JAタウン2025年11月7日 -
除草剤「クロレートS」登録内容変更 エス・ディー・エス バイオテック2025年11月7日 -
TNFDの「壁」を乗り越える 最新動向と支援の実践を紹介 農林中金・農中総研と八千代エンジニヤリングがセミナー2025年11月7日 -
農家から農家へ伝わる土壌保全技術 西アフリカで普及実態を解明 国際農研2025年11月7日 -
濃厚な味わいの「横須賀みかん」など「冬ギフト」受注開始 青木フルーツ2025年11月7日 -
冬春トマトの出荷順調 総出荷量220トンを計画 JAくま2025年11月7日 -
東京都エコ農産物の専門店「トウキョウ エコ マルシェ」赤坂に開設2025年11月7日 -
耕作放棄地で自然栽培米 生産拡大支援でクラファン型寄附受付開始 京都府福知山市2025年11月7日 -
茨城県行方市「全国焼き芋サミット」「焼き芋塾」参加者募集中2025年11月7日 -
ワールドデーリーサミット2025で「最優秀ポスター賞」受賞 雪印メグミルク2025年11月7日 -
タイミーと業務提携契約締結 生産現場の労働力不足の解消へ 雨風太陽2025年11月7日 -
スマート農業分野の灌水制御技術 デンソーと共同で検証開始 ディーピーティー2025年11月7日 -
コクと酸味引き立つ「無限エビ 海老マヨネーズ風味」期間限定で新発売 亀田製菓2025年11月7日


































