食料システム法に米穀業者から厳しい意見【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月30日
9月25日に千代田区の中労委ホールで開催された全米工の東日本ブロック会議に農水省の大臣官房新事業・食品産業部企画グループの課長補佐が「食料の持続可能な供給に関する法制化」、いわゆる食料システム法について約1時間にわたって講演した。この法律の骨子は①合理的な費用を考慮した価格形成②持続可能な食料システムの確立の2本からなっている。価格形成については「費用の考慮のための食料システムの関係者の理解の増進、費用の明確化の促進等を規定」とされており、そのために卸売市場法の法改正も行われ、取り組みが不十分な場合、農水省は勧告・公表、さらには公取への通知も行えるようになっている。
コメについてコスト指標のイメージまで示されたが、説明後の質疑で全米工組合員から現在の異常とも思えるコメの高い価格について、それを助長しているは農水省ではないのかといった厳しい発言があった。

講演では、初めに食料システムにおける食品産業の位置づけについて、国産農林水産物の仕向け先の約7割は食品製造業や外食産業で、食品製造業の加工原材料調達割合も約7割は国産農林水産物であるというデータを示した。続けて産業別就業者数では食品産業は833万人で全産業就業者数の12・3%をしめており、大きなウエイトで、都道府県別では北海道と沖縄は45%を超える高い比率となっている。長期的な物価の動向については、各国のGDPデフレータ(国内経済全体の物価動向)を示し、1998年を100としたデフレータでは2020年に中国が204、アメリカ174、EU諸国が149~179といずれも大幅に上昇しているにも関わらず、日本は93と1998年より低い数値に留まっている。同じく1998年100とした消費者物価指数の推移では2024年に総合指数は110であったが、食料品は2020年以降急騰して132になっている。農業生産資材・農産物の価格動向については、農業資材の価格は2021年を100とした場合、飼料や肥料が139、光熱動力が137と急上昇している。農産物物価指数は同じく2020年を100として2025年3月の総合指数は128だが、コメは162、鶏卵が193と突出して高い。
こうしたデータを示したのち「食料・農業・農村基本法の1部を改正する法律の概要」を解説、この中で食料の合理的な価格の形成については「需給事情及び品質評価が適正に反映されつつ、食料の持続的な供給が行われるよう、農業者、食料事業者、消費者その他の食料システムの関係者によりその持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならない旨を規定」とし、基本的施策として「価格形成における費用の考慮のための食料システムの関係者の理解の増進、費用の明確化の促進等を規定」としている。
合理的価格形成についての規制的措置としては「最終的な取引条件は当事者間で決定という自由主義の前提を維持したうえで、飲食料品等事業者の『努力義務』を明確化」し「農水大臣が努力義務に対応した『行動規範』(判断基準)を省令で明確化。取組みが不十分な場合等は指導・勧告」が可能で罰則規定が盛り込まれた報告徴収・立ち入り検査も行われ、公取への通知も行われる。10月からは食料システム法に基づき「食品等の取引の適正化が図られるよう、食品等の取引の状況、取引条件に関する協議の状況などの実態を把握するため、新たに食品等取引実態調査を実施」することになっている。
農水大臣が指定した品目はコスト指標を作成する必要があり「コスト指標作成団体」として農水省に認定申請し、農水省が認定することになっている。資料にコメのコスト指標のイメージが掲載されており、それによると基準年の令和4年では玄米1kg当たりのコスト指標は生産173円80銭、集荷22円90銭、卸売32円10銭、小売57円10銭となっている。
こうした説明がなされた後、質疑が行われ、参加した全米工組合員から「7年産米の概算金が上がっており、末端の小売価格は5kg4000円を超えているが、農水省が何かコミットする予定があるのか」と言った質問や「食管法を無くして食糧法に移行したが、食糧法の理念はどこに行ったのか?小手先の制度改正だけでは何も解決しない。根本的なことを変えないとだめだ」との批判や現在のコメ価格高騰では与党の族議員から7年産米を国が高値で買い戻すといった情報が流れており、それに合わせて概算金が値上げされた。こうした情報が価格が下がらない一因にもなっており、そもそも価格上昇を助長しているのは農水省にあるのではないかと言った厳しい意見が出て、全米工執行部からも「コメに携わる各業界が不安にならないような食料システムにしてもらえればありがたい」との要望がなされた。
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