「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日
政府備蓄米の放出決定後も米の不足感が解消されない反面、メルカリなどフリーマーケットアプリへの米の出品が増えている。米の値段はこれからどうなるのか。関係者の声を聞いた。
農水省は、米不足を否定し、民間在庫量が減ったのは流通段階の業者などが投機的思惑から在庫を抱え込むことで流通がスタック(滞留)、目詰まりを起こしているとし、政府備蓄米放出でスタックも解消されるというシナリオを描く。

●メルカリ、増える米の出品
スタックが一部出てきたのか。メルカリなどフリーマーケットアプリに、米の出品が増えている。
メルカリで検索すると、「まっしぐら 1.8キロ1700円」「R6年産宮城県産ひとめぼれ 5キロ3900円」「R6魚沼産コシヒカリ玄米 20キロ15800円」「茨城キヌヒカリ 20キロ2万円」「北海道ななつぼし玄米 10キロ4500円」などが並ぶ。
●思い出されるコロナ禍のマスク不足
ここで思い出されるのが、コロナ禍の際のマスク転売騒動だ。2020年、新型コロナ感染症が急拡大した「第1波」でマスク需要が急増したが中国からの輸入が激減し、インターネットサイトや路上で高値の転売が広がった。政府は3月に国民生活安定緊急措置法の政令を改正しマスク転売を罰則付きで禁止し、その後、消毒用アルコール製品も対象に加えた。
●フリマでの売買に問題は?
値上がりを見込んで米を仕入れ、値上がりを待って高く売る投機的行為への憤りから、ネットには「転売ヤー」や「フリーマーケットアプリ」を取り締まれという意見も目立つ。
フリーマーケットアプリでの米の売買は、何か法律にふれるのだろうか。農水省に聞くと「改正食糧法では『売る自由、買う自由』ということで、20精米万トン以上の取り扱いがある事業者は届け出の義務がありますが、一般の方などが入手した米を販売する行為自体に違法性はありません」(農産局穀物課米麦流通加工対策室)とのことだった。
「業として販売している場合には、届け出義務のほか、食品衛生法の届け出や、台帳を付けていなければトレーサビリティ法にふれる場合はありえますが、フリーマーケットアプリでは米に限らず個人の方が家庭にあるものを出品するケースも多いと思います。それが『業』といえるかどうか」(同前)
●「天井は来た」が価格低下は限定的?
売買を自由化した食糧法の下では、業者にせよ個人にせよ、仕入れた米を在庫として持ち時期を見て売るのは「価格高騰に対する当然の市場行動」(田代洋一・横浜国大名誉教授 JAcom2月12日付)という面があり、全否定は難しい。また、冷温倉庫もない業者や個人が米を抱え込むにも限度があり、「需給の大勢に影響するほどの量はないのでは」(流通関係者)とみるのが自然だ。
関東の集荷業者が明かす。「備蓄米放出決定で天井は来た。もうこれ以上は上がらないだろうが、価格がストンと落ちるかというとそうでもなく、1俵4万5000円が4万円になるくらいではないか」
●「不足はない」と農水省はいうが
農水省が「不足はない」とする需給見通しでは、2024年7月~25年6月の需要は647万トンだが、この数字は前年より31万トンも少ない。作況指数101で供給は18万トン増えたとされるが、「実際の作況はそんなに良くない」という声は、特に大規模農家、法人に多い。米が絶対的に不足しているとは考えにくいものの、政府備蓄米放出決定後も「6月くらいにはまた米不足が顕在化するのでは」という見方が流通関係者にくすぶる。
2月20日の衆議院予算委員会で、田村貴昭議員(共産)が「米が不足しているという認識はあるか」と問うと、江藤農相は「店頭で足りないという事実はあるが、日本全体で足りないという認識は持っていない」とこれまでの見解を繰り返した。
●背景に米づくりめぐる窮状
「米は消えたのではなく、もともとそんなにとれてないのでは」という「不足説」がくすぶり続ける背景には、離農が止まらず耕作放棄地が広がる深刻な現状がある。同日の質疑で、米農家の年間農業所得を就労時間で割った「時給」が22年は10円、23年も100円にとどまり倒産が増えているとの田村議員の指摘に対し、江藤農相は「決して好ましいことではない。生産基盤、農業者を守らなければ」と表明した。
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