【次期家畜改良目標】低コスト、スマート農業重視 酪農は長命連産、肉牛は短期肥育2025年3月3日
農水省は次期酪肉近論議と合わせ、新たな家畜改良増殖目標の骨子案をまとめた。コスト増加やスマート農業の進展、高温対策、消費者ニーズの多様などに応じた改良を加速する。
写真=畜産部会では、新酪肉近と並行して家畜改良などでも意見が交わされている
畜種ごとの次期改良増殖目標は、畜酪を取り巻く状況変化を踏まえた、改良を進める。
□次期家畜改良目標ポイント
◇酪農
・長命連産性を重視
・暑熱耐性の改良
・牛体の極端な大型化を抑制、搾乳ロボット対応
◇肉用牛
・サシ偏重から多様な消費者ニーズに対応したオレイン酸等食味向上に重点
・遺伝的多様性を確保
・肥育形態の一つとして、適度な脂肪交雑と低コストなどが期待できる短期肥育、早期出荷を促進
■飼料高対応で低コスト重視
酪農で強調されているのが長命連産の乳用牛の追求だ。これまでは、1頭当たり産乳量を求めるあまり牛体に負担がかかり、早めに廃牛とするなどで後継牛の導入費がかさむ傾向もあった。受胎率の低下も増えてきた。
繁殖性、耐久性に重点を置き耐用年数が長い長命連産性が強ければ、それだけコストが抑えられる。疾病抵抗性の評価を開始する。
■乳成分見直しに対応
コロナ禍で脱脂粉乳の消費低迷の一方で、バター需要は堅調だ。将来的需要を見据えた乳成分の改良にも取り組む。種雄牛選抜の総合指数で乳脂の割合見直しも進める。
■搾乳ロボットに適応
スマート農業の推進に伴い、生産性の高い搾乳ロボットの導入も進んできた。酪農は労働時間が長く、高齢化の進み、今後の労働力不足が深刻となる。そこで、搾乳ロボットに適合性の高い乳牛への改良も進める。
■5割が赤身肉購入
肉用牛は、和牛去勢で脂肪交雑最高ランクのA5割合が6割を超す。一方で、国内に供給している牛肉全体で見ると約1割に過ぎない。
国産牛肉は、和牛、交雑種、乳用種の全体で、消費者にニーズに対応している状況だ。国産牛肉に関する意識調査では、消費者の約5割は普段赤身肉を購入しているが、消費者の約6割が価格次第でサシが十分入った霜降り肉を購入する意向なのが分かっている。
そこで、これまでの脂肪交雑重視から、多様な消費者ニーズに応じた肉用牛の改良を加速する。
■サシ以外の新たな価値追求
産肉能力でオレイン酸など食味重点の種畜の選抜を加速する。「食味」に関する成分含有量などの指標化に向けた検討も進める。
サシ以外の新たな食味の価値観を訴求したブランド化戦略も広がってきた。例えば鳥取県は、「鳥取和牛オレイン55」のブランド名で消費拡大を進めている。繁殖雌牛のオレイン酸などのゲノミック育種価を評価している。
■短期肥育、早期出荷で実証
肉用牛の飼養管理では、低コスト、消費者ニーズを踏まえ、多様な肥育形態の一つとして、短期肥育、早期出荷の普及に向け、実証に取り組み、生産現場への定着を急ぐ。
早期集荷牛肉は味の点でさまざまな見方が混在する。長期出荷の味が勝るとする声が強い一方で、短期肥育はむしろ脂肪交雑があっさりしていて良いとの評価もある。また、短期肥育は関係者の共同的取り組みである「早期出荷コンソーシアム」方式など生産・流通・小売りセットで取り組めば、需要は十分あるとの流通業者の指摘もある。
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