L-システインで家畜由来メタンガスを削減 技術の実用化へ帯広畜産大と契約 サンクト2022年2月4日
株式会社サンクトは、L-システインを用いて反芻動物のげっぷに含まれるメタンガスを減少させる技術の実用化を目指し、帯広畜産大学の高橋潤一名誉教授と共同研究開発を目的とした契約を締結した。
メタンガスは温室効果ガス(GHG)のひとつで、地球温暖化効果は二酸化炭素の約25倍。2021年11月にイギリスで開かれた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、2030年までにメタンガスの30%削減(2020年比)目標が示され、日本をはじめ多くの国が同意した。
高橋名誉教授の研究チームは、牛の硝酸塩中毒について研究する過程で、中毒を起こした牛のげっぷにはメタンガスが含まれず、飼料に硝酸塩とL-システインというアミノ酸を添加することで中毒を防ぐことを確認。また、胃内におけるメタンガスの産生が抑制されることを見いだした。L-システインは食品添加物や化粧品・医薬品の原料と幅広く使われており、羊毛や鳥の羽毛、ヒトの毛髪にも存在している。
人為によるGHG排出量全体の約16%をメタンガスが占めており、その約25%が家畜由来とされている。高橋名誉教授らの技術によるメタンガス抑制効果は約90%と見込まれ、この技術が実用化されればGHG排出量削減につながると期待される。
同社は、世界を代表するアミノ酸メーカー新生源社(中国湖北省)の日本総代理店という強みを活かし、L-システイン塩酸塩の原料の安定供給が可能だが、L-システイン塩酸塩を飼料添加物として使用する上で、酪農家・畜産家への負担増加が懸念される。一般的な飼料の価格が100円/kg以下であるのに対し、L-システイン塩酸塩の原料価格は2000円/kg以上と、飼料に添加した際のコスト上昇が見込まれ、L-システイン強化飼料を普及する上での課題となっている。
この課題を解決するため、同社は再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)と同様な国の助成制度の導入を視野に入れ、関係省庁へ働きかけていく。L-システイン塩酸塩が飼料添加物として指定されるには、有効性・安全性・安定性などの膨大なデータを取得する必要があり、その費用は最大10億円程度と見込まれる。同社は、GHG排出量削減に関心を持つ企業から資金調達を募るなど、異業種間での連携を図る予定。
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