牛のリンパ腫発症を予測するがん検診技術を開発 北大、ファスマックなど4者2022年10月24日
ニップングループの株式会社ファスマックは、北海道大学、国立感染症研究所、岩手大学と共同で、ウイルス感染細胞のクローナリティ解析技術を開発し、牛伝染性リンパ腫の診断と発症予測に成功した。
RAISING を用いた BLV 感染細胞のクローナリティ解析
北海道大学大学院獣医学研究院の今内覚教授、岡川朋弘特任助教、国立感染症研究所の斎藤益満主任研究官、株式会社ファスマックの松平崇弘氏、岩手大学農学部の村上賢二教授、山田慎二准教授らの研究グループは、ウイルス感染細胞のクローナリティ解析技術を開発し、牛伝染性リンパ腫の診断並びに発症予測に応用した。
牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)は、日本をはじめとして世界中の農場で蔓延しており、BLVの感染を原因とする牛伝染性リンパ腫(EBL)の発生も急増している。EBL発症牛は淘汰の対象となり、牛乳や食肉の生産ができずに全廃棄となる。
EBLは発症までに3年以上かかるため、全廃棄になると牛の売却利益が失われるだけでなく、それまでに要した膨大な経費や時間が無駄になる。しかし、EBLの発症機序は未だに不明な点も多く、発症を予測する方法も存在しない。
そこで同研究では、EBLの発症予測法の開発と実用化を目標に、プロウイルス挿入部位の網羅的増幅法(RAISING、ライジング)を用いて、BLV感染細胞のクローナリティ解析を実施。さらに、独自の解析ソフト(CLOVA)を用いてクローナリティの程度を正確に数値化した。その結果、EBL発症牛は未発症キャリアと比べてクローナリティ値(Cv)が高く、CvはEBLの高精度な診断マーカーになることがわかった。
さらに、BLV感染羊モデルの解析では、Cvがリンパ腫を発症する前に上昇し、発症予測マーカーになることも明らかにした。同研究により、RAISINGによるクローナリティ解析はEBLの診断法並びに発症予測法として有用であると示された。
今後は大規模な野外調査により同技術の有用性を臨床現場で実証するとともに、解析キットの市販化を進め、EBLによる畜産被害の軽減や生産性の向上に役立てていく。
同研究成果は10月13日に公開された『MicrobiologySpectrum』誌に掲載された。
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