JAの活動:未来視座 JAトップインタビュー
"人財"育てチームで改革(2) JAみえきた組合長 生川秀治氏【未来視座 JAトップインタビュー】2025年1月31日
経営理念に「職員の成長と幸せ」を掲げ改革を進める三重県のJAみえきた。組合長の生川(なるかわ)秀治氏は「職員の成長こそがJAの価値」と言い切る。職員がいい仕事をすれば組合員も幸せになれるからだ。JA自己改革の思いを聞いた。インタビュアーは文芸アナリストの大金義昭氏。
総合事業の強み 地域振興の糧に
JAみえきた組合長 生川秀治氏
大金 女性登用や採用人事は?
生川 人事部長を女性にしました。「やる気」がある人なので「象徴」になってもらい、女性登用を進めています。
うちも毎年25~30人くらい中途退職します。4%くらいです。新規採用は、この4月に23人入ってきます。前年は15人。中途採用もし、辞めた人も呼び戻しています。辞めて子育てをした、他の会社で勤めたということは、他所で修行してきたのと一緒です。戻ってくれた人を大事にしたい。旗は振りますが、具体的には幹部職員に委ねています。
大金 そのための「呑(の)みニケーション」は?(笑)
生川 やってますけど(笑)、企画会議の開催を月2回にしました。全部、企画会議で決めています。
大金 「改革」をにこやかに断行する! 人徳ですね。(笑)
生川 経営者は明るく若い心構えが絶対条件です! この人は何かを持っている、ついていっても大丈夫だと思われたいですね。(笑)
日銀総裁が代わって金利が上がる局面に入り、私は「貯金を集めるぞ。1000億円余分に集めれば、1%の10億円で給料も上げられる!」と表明しました。1年前でしたから集まりましたが、今年は苦戦しています。銀行だけでなくネットバンクとも競争が激化していますから、JAは地域密着型のきめ細かな金融サービスを提供するために「協同活動」と「総合事業」の「強み」を発揮して組合員とのパイプを太くし、営農や暮らしの支援はもとより、相続や土地などの資産管理に伴うニーズに的確に応えていこうと力を入れています。
地域貢献も大切です。「農楽校」や「農業学校」を拠点にした食農教育を始め、子どもの食事や居場所を提供する団体などを応援しようと、お米や直売所の共通商品券などをプレゼントしています。高齢者の見守り活動も怠りません。
大金 一連のお話から、経営学者で伊丹敬之さんの『人本主義企業』を思い出しました。「従業員主権、分散シェアリング、組織市場」といった考え方が、JAみえきたの「人的資本経営」とクロスしているような印象です。ナレッジマネジメント(知識経営)にも通底しているのかなあ。ところで、お生まれは?
生川 農家の長男です。1町歩くらいの田んぼと5反歩くらいの畑で蚕を飼っていた。養蚕が斜陽になり、父は近所の人を集めて建設会社の下請けをし、私を東京の大学に行かせてくれました。
大金 慶応義塾大学商学部を卒業し、三重県信連を選ばれたのは?
生川 ゼミが金融論でしたから。金融で稼いでJAに還元しますが、何をするかに口出しする気はありませんでした。(笑)
現場が好きで、和歌山との県境に近い支店に手を挙げて行きました。20代でしたが、JAの支店まで回り、現場の人たちといろいろ話ができた。本店に戻ってからは、三重県信連からの農林中金トレーニー第1号として上京し、1年半、融資営業を経験しました。
大金 ご自身の性格は?
生川 基本的には楽観主義です。苦しい時もあったんですけど、いつも「何とかなる」と。後は忘れる!(笑)
大金 ご結婚や趣味は?
生川 妻とは学生時代に出会い、一緒になりました(笑)。アルコールくらいですかね、切らしてない趣味は!(笑)。ゴルフは運動を兼ねてやっています。「手相診断(占い)」も好きです。(笑)
大金 何かメッセージがあれば?
生川 組合長は一人では走れません。JAはチームです。「チームみえきた」で頑張ろうと、新年のあいさつでもお願いしました。(笑)
【インタビューを終えて】
「前例がない。だからやる!」と唱えたアサヒビール中興の祖、樋口廣太郎。生川さんの信条も同じだろう。初見で、人に優しい「熱血漢」とお見受けした。打てば響く阿吽(あうん)の「対話」からは、百戦錬磨のビジネス・スキルが迫って来た。たくましくも頼もしい1955年生まれが「未来づくり」の先頭に立つ。手相を見てもらったら、「ほめ殺し」(笑)を賜った。生川さんの「手相診断」は、「人的資本経営」仕法のひとつなのかもしれない。
次の会合へ一陣の風のように退出された生川さんに、またお会いしたくなった。(大金)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日