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JAの活動:JA全青協会長インタビュー

担い手農家の期待に応え信頼築く JA津安芸(三重県)2015年9月18日

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生産者ニーズの「入口」と「出口」
・評価高く専任部署に位置づけ
・総合農協の各部署にヨコグシ刺す
・水稲との複合経営で所得の向上を
・規格外のタマネギで6次産業化商品
・分業型の加工業務用野菜を提案

 昨今の農業情勢の中で、JAグループは自己改革の取り組みを着実に進めている。その中でも、地域農業の担い手に出向くJA担当者「TAC」の活動に対する期待は非常に高まってきている。
 本紙では、そうしたTACの活動をレポートしていく。今回はTACを組織的に専任部署として位置づけ、担い手農家との信頼関係を築いている三重県のJA津安芸(つあげ)を取材した。

かぼちゃの目ぞろえ会「TACには非常に助かっているね。私たちは忙しいのでなかなかできないけれど、TACの人たちは、日々勉強しているので、肥料・農薬や品種などの新しい情報を、月に何度も訪ねて来て教えてくれるからね」と、三重県津市で、主食用水稲や飼料稲、飼料用麦や大豆など作業受託を含めて約80haを経営する(株)前川農産の前川正次会長はいう。
 JA津安芸は、三重県中央の津市(旧津市・安濃町・芸濃町・河芸町・美里町)を管内とし、農産物はコシヒカリを主力としたコメが中心だが、伝統野菜の芸濃ずいきや青ネギ、キュウリ、ミカン、ナシ、イチゴ、キャベツなどさまざまな作物が栽培されている地域でもある。


◆評価高く専任部署に位置づけ

 JA津安芸がTACを設置したのは、平成23年4月のことだった。当時は農政指導課にTAC専任として2名を配置。25年以降は更に2名を増員のうえ、「TAC課」として、営農対策部の課に位置づけた。全農三重県本部(以下 全農みえ)によれば、県内12JAのうち、TAC専任の部署を設置しているのは、JA津安芸とJA三重中央の2JAだという。
 TACの設置について、同JAの前川温仁理事営農生活統括部長は、次のように語った。
 「組合員のほとんどが従来は兼業農家だったが、高齢化や米価低迷などで離農する人が増えてきた。JAでは営農組合や農業法人などの設立をお手伝いする一方、農地利用集積などの事業を通して地域農業の維持・発展に努めるものの、専業農家(担い手農家)から新たな課題やさまざまなご意見を頂戴するようになった。そうした中、JAとしてどう専業農家に関わり、対応すべきか、検討しその窓口としてTACを配置した」。
 更にTAC課という専任部署を新設したのは、「渉外活動を通じて実績をあげ、組織内外から評価された結果」だという。
また、JA津安芸の執行体制は経営管理委員会制度であり、その委員の半数近くを専業農家が占める委員会の中でも「TACの増員と専任部署が必要だ」と言う声があがってきていたというように、周囲からの評価や期待が高かったからだ。


◆総合農協の各部署にヨコグシ刺す

前川正次さん(左)と西之坊課長 TACの役割について、西之坊TAC課長は、「JAと連合会(全農)が一体(チーム)となって地域農業をコーディネートすること。そのために、(1)地域農業の担い手を訪問して意見・要望を聞き、それに誠実に応える、(2)地域農業の担い手の経営に役立つ各種情報を届ける、(3)地域農業の担い手の意見を持ち帰り、情報を農協内や全農で共有して、JAグループの業務改善につなげること」だと整理する。
 (1)の担い手訪問は、TAC1人あたり約30戸を担当し、月3回訪問を目標にしている。
 (2)の情報提供は、担当担い手への個別の情報提供だけではなく、TACが持っているタイムリーな情報を活かして、毎月1回、営農情報紙「TACアグリナビ」を発行している。これは担い手へ情報発信だけではなく、主として兼業農家を担当する営農センター(7センター)の営農経済渉外担当者とも営農活動の情報共有化を図る意味もあると前川理事。
 (3)のJA組織内や全農との情報共有化では、週1回の関連部課長参加のミーティング、月1回の担当役員を含めた報告会や営農センターの渉外担当リーダーとのミーティング、さらに半期ごとのJA役員、全農を交えた報告会などを通じ、「TACが入り口となって、総合農協であるJA全体にヨコグシを刺し、各部門が連携してきている」。
 それは、兼業農家担当の営農センターの営農経済渉外担当者と「情報の共有化・一元化」だけではなく、「信用事業部門との連携にも機能している」と前川理事。


◆水稲との複合経営で所得の向上を

信頼される4人のTAC 4名のTACは、2名ずつ水稲関係と園芸関係を担当している。
 水稲関係の重点取組みは、(1)JA中期3カ年計画にも掲げられている「米の品質向上に向けた取組み」(3年後の目標:1等米比率70%など)、(2)県奨励品種である三重23号(結びの神)の作付面積の拡大、(3)WCSを含めた飼料用作物への対応、(4)水稲・麦・大豆ほ場での難防除雑草対策、その他。
 園芸関係の重点取組みは、(1)23年にオープンした学校給食センター向けタマネギの規格外品を活用した「玉ねぎダレ」の商品化への協力(後述)、(2)加工業務用キャベツ・カボチャへの取り組み支援、(3)全農みえのレンタル農機、△新規就農者対応、その他。
となっている。
 農家がJAに期待することは、所得が向上して農業経営の維持・発展にどう寄与してくれるのかということだ。


◆分業型の加工業務用野菜を提案

 とくにこの地域の中心である水稲農家に対しては、全農みえと一体となって、加工業務用のキャベツやカボチャ、ホウレンソウの分業型園芸などによる複合経営の提案を行い、遊休地の解消と水田利用の拡大に取り組んでいる。
 キャベツについては、JA津安芸は古くから栽培が盛んで指定産地にも登録されているが、部会の高齢化などで栽培面積・出荷量が減少傾向にある。また一方で、キャベツに限らず野菜の家計消費は減少しているが、カット野菜や外食・中食での需要は着実に増加傾向にある。そこでJAとしては、水稲経営主体の担い手農家で、水稲の収穫後の麦・大豆で収量があげにくいような水田を活用し、販売先の決まっている加工業務用野菜による複合経営を27年度はモデル地区を設定して提案している。
 キャベツの場合7戸の担い手が取組むことになったが、全農みえの農機レンタル(定植機)制度を導入し、初期費用の軽減化にも努めている。さらに28年度は、全農みえとも協力して、品種や作柄を検討し、リレー式に長期に出荷できる体制や面積拡大に取組んでいくことにしている。
 カボチャについても、説明会や栽培勉強会を開催し12名が1.2haを作付している。
 ホウレンソウの分業型園芸というのは、生産者は収穫したホウレンソウをコンテナ(通い)に詰めてJAの集荷場に出荷、JAは集荷したホウレンソウを市場内の加工センターに納入、加工センターで袋詰めして小売店などに販売するという「分業方式」のこと。このことで生産者は、通いコンテナを使うので出荷資材コストが低減できるとともに、選別や包装の手間が省力化されるので、その時間を次の出荷作業に使うことができ、年4回の出荷が可能になる。所得は出荷量の増加とコスト低減の両面から向上できるという仕組みだ。


◆分業型の加工業務用野菜を提案

村治さん(右)と森さん 加工業務用キャベツの場合も同様に分業化することで、生産者は15キロ専用段ボールで選別せず出荷できるので、省力化とコスト低減ができる。
 TACが関わった仕事としてJA津安芸で話題となっているのが、「ちよちゃんの玉ねぎダレ」だ。
 23年に津市の学校給食センターがオープン。そこへ美里地区の7戸が部会をつくり年間15tのタマネギを納入している。しかし、給食センターに納入できる規格は2LかLのみで、それ以外は規格外となる。
 規格外のタマネギは、JAの直売所やイベントで詰め放題などにして販売していたが「もっとうまく利用できないか」と森TAC課長補佐は、この部会の一員でもある村治千代子さん(夫と水田50aの作付とともに畑10aでタマネギを栽培)に相談する。
 村治さんはJAの職員(生活指導員)として地域で料理を教えた経験があり、定年退職後はコンニャクづくりなど、農産物の6次産業化をめざして、いろいろなものを作っている。森さんは、そういう村治さんならよいアイディアを出してくれるのではないかと相談。
 そして村治さんが考え出したのが、幅広い料理に使用できる万能調味料である「玉ねぎダレ」だ。
 試作のたびにアンケートをとりデータを細かく分析するなど商品開発を行い、25年のJAまつりでは200人分の試食を用意したところ、「野菜嫌いの子どもも食べた」など好評を得たこともあり、レシピを完成させ、26年9月から直売所などで販売を開始すると、好評で話題の調味料となっている。
 他産地のタマネギだと味が変わるので地元・美里産タマネギによる限定商品で、年間2000本を目標に、姉の井ノ口きぬ子さんと二人で、村治さん宅の作業場で手づくりをしているが、1キロのタマネギからこのタレが6~7本しかできないので「追いつかない」と嬉しい悲鳴をあげている。
 村治さんは「私たちも歳なので、いずれはJAで作れるようにして欲しい」と考えている。
 JAでも今後、村治さんのレシピを引き継いでいくことを検討している。

□    ■    □

 これ以外にも、TACの活動として、水稲育苗施設を利用したネットメロンの試験栽培や水稲直播栽培など、さまざまな取組みが行われている。
 TACを設置したことにより地域の農業を継続していくために、担い手農家がさまざまなことをJAに要望してくるようになった。JAの使命は、そうしたニーズに応えていくことであり、「TACが入口と出口になり」それに対応できる体制作りを今後も取り組んでいかなければならないとJA津安芸は考えている。
 担い手農家からは、TACの人数をもっと増やした方がいいという意見も上がっているという。それだけTACの仕事が評価され、期待されているということだ。

(写真上から)かぼちゃの目ぞろえ会、前川正次さん(左)と西之坊課長、信頼される4人のTAC村治さん(右)と森さん

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