JAの活動:JAは地域の生命線 いのちと暮らし、地域を守るために 2017年今農協がめざすもの
【インタビュー・JF全漁連岸宏会長】漁業は国境の監視人(下)2016年12月31日
農協と連携し地域活性化へ
――29年度の事業計画でもっとも重要なことはなんでしょうか。
やはり一番大きな問題は人づくりで、その仕組みをしっかりつくることです。例えば、都市に住んでいる方で漁業に興味のある方を受け入れる漁村をしっかり組み立てること、そして「浜プラン」を中心にした漁業就業の受け皿づくりです。さらに外に向かっての挑戦として、魚食普及も含めた日本の魚介類の輸出の拡大です。
――最近、自然災害が大きくなっていますが、熊本地震の時はJF全漁連が先頭に立って支援されました。
昨年は熊本地震で大変な年でした。全国の漁業者が熊本の漁業を支援しようという機運が高まり、私自身も何度も現地に赴き、系統挙げて現地の復興の一助となるべく協力してまいりました。幸いにも、海苔の第1回共販が無事に開催されるなど熊本の漁業は復興への第一歩を踏み出しております。全国の漁業者、JF系統役職員の募金への協力もさることながら、国や県の協力にも、漁業者としてぜひお礼を申し上げたい。
――会長就任当初から、漁業者の国境監視について話しておられます。しかし、その認識が国民に充分、伝わっていないのではないでしょうか。
農業も同じですが、第1次産業は多面的な公益的機能を持っています。なかんずく漁業は、国境監視の重要な役割を果たしています。われわれがこれまで強く訴求してこなかった反省もありますが、国民の皆さんの中に一体どれだけ理解されているか疑問に思うことがあります。
全国で漁村集落は約6300あります。日本の海岸線5.6キロごとに集落があることになります。漁船の数は15万隻で海岸線は約3万5000キロ。漁船を一列に並べると230メートルに1隻となり、十分な監視機能を果たしています。漁村があり、漁業者がいるから国の安全が守られていると自負しています。防衛省や海上保安庁、警察だけでは、物理的にも到底できないことです。そこを認識していただき、国には政策の中に漁業をしっかり位置づけていただきたい。
いままでは多面的機能という大きな枠組みのみでした。自民党の水産部会でも強調しましたが、漁村集落の果たす国防の役割について、今年から各方面に働きかける考えです。法的な措置を含めてどうするか、観念論でなく具体的に訴えていきたいと思っています。そのための理論づくりを進めるよう準備をしているところです。
――東京電力の原発事故は、漁業にも深刻な影響を与えています。今の状況をどうみますか。
これから廃炉まで何十年かかるか分かりません。海外における輸入規制の問題も解決していません。とても一企業の責任という話ではありません。国には前面に立っていただき、外交でしっかりやっていただきたい。JF全漁連としては輸入規制の解除を働きかけるとともに、原発の安全性を担保しながら、しっかりしたエネルギー政策を国に確立していただかなければならないと思っています。
――漁業も農業も、小規模経営が中心で構造改革が必要だといわれていますが、規模拡大と企業の参入についてどう考えますか。
農協も小さい農業者が大半を占め、生産者も高齢化しています。その点では、自立し、メリハリのきいた経営なり、漁業者者なりを育てることが重要で、それが漁協・農協の役割だと思います。大変な時期ですが、組織を挙げてやれば展望は拓けると思います。英断をもって構造改革を進めていただきたい。
農業と同じように、漁業も大企業の参入が取り沙汰されています。しかし企業は利益が出ないと引き上げます。現在でも企業参入は可能な仕組みですし、参入を拒むわけでは決してありませんが、漁協も農協も公益的な役割、協同組合の原理原則に基づいた組織です。漁村、漁業者を守っていくのだということを忘れてはなりません。これをしっかり担保しながら、企業進出に対応する必要があります。
国は、漁業も農業も国の基(もとい)だということを政策の根幹にして臨んでいただきたい。遅れていた漁協の構造改革も動き出し、こうした面で農協と連携できる条件が整ってきたと思っています。
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