JAの活動:【第29回JA全国大会特集】コロナ禍を乗り越えて築こう人にやさしい協同社会
【わたし発 輝く女性】JA高知県女性部大篠支部・窪田理佳部長に聞く「自分事積み重ね 子ども食堂育む」【第29回JA全国大会特集】2021年11月12日
JA女性組織は、「食」と「農」の当事者としてJAと地域をつなぎ、JAが掲げる「社会的目的」の実現の一翼を担っている。JA高知県女性部大篠支部が取り組む「大篠子ども食堂」もその一つだ。同女性部では、目的別グループ活動を出発点に、子ども食堂の自主運営に挑戦し、高知県一規模の大きい子ども食堂へと育て上げた。楽しむ活動から地域を元気にする活動へとつむいでいる女性たちの力を、窪田理佳部長に聞いた。(小川理恵・JCA主席研究員)
誰もが役割を持つ 意識と自信を育て
JA高知県女性部大篠支部
窪田理佳部長(右)
――子ども食堂の出発点となった活動を教えてください。
活発な班活動の横展開を目的に、女性部員なら誰でも参加できる、班の垣根を越えた目的別グループ「お・楽・し・み 二四六九女士会(にしむくじょしかい)」を2013年に立ち上げました。女士会では、JA支所の調理室兼会議室を会場に、手芸や読書会、料理を楽しみながらわいわいと情報交換をするランチ会を中心に、視察を兼ねた旅行や勉強会も行っています。自分の興味がある回に自由に参加できるシステムで、毎回30人ほどのメンバーが集まります。
――二四六九女士会のこだわりはなんですか?
全員がなんらかの役割を持つことです。女性部では高齢化が進み、70代以上のメンバーも多くいます。でもたとえ高齢でもお客さまではなく、一緒に活動する仲間。そこで女士会では、調理以外でも、盛り付けをする、お箸を並べる、といったちょっとしたことでいいので、必ず何かを担当しようと決めました。そこから、メンバーに自分事としての意識や自信が芽生え、みんなで一つのことをやり遂げる基盤ができました。
――子ども食堂に取り組むこととなったきっかけを教えてください。
民生委員を務める女性部員から、近くの小学校に、夏休み明けに痩せて登校してくる児童がいることを聞きました。食のプロである私たち女性部が近くにいながら、子どもたちの食が乏しくなっている現実に愕然としました。それがきっかけとなり「女性部で子ども食堂に取り組んでみよう」と、2018年5月に「大篠子ども食堂」をスタートさせました。
――大篠子ども食堂にはどんな特徴がありますか?
好きなものを何度でもおかわりできるよう、バイキング形式で料理を提供しています。地域のあらゆる人びとが集まれる場所にという思いから、子どもに限らず誰でも利用できます。毎月第2土曜日に開催し、毎回200人前後が会場のJA支所を訪れてくれます。準備は大変ですが、利用者の喜ぶ顔を直に見られることが、メンバーのモチベーションを高めています。バイキングの延べ利用者数は3730人に上り、高知県で一番大きな子ども食堂になりました。
一度にたくさんの料理を作るのはお手のもの
女性が力合わせ新たな扉を開く
――新型コロナウイルス感染拡大時の活動の工夫は?
多くの女性組織と同様、大篠子ども食堂も2020年3月を最後に、いったんは活動中止を余儀なくされました。しかし地域から再開の要望が強く、メンバーからも「やりたい」という前向きな意見が多く寄せられたため、2020年6月にはお弁当のテイクアウトで活動を再開しました。
単なる作業に陥らないよう、一度に配布するお弁当の数を250食から200食へ限定しメンバーの負担を軽減したほか、お弁当を受け取りにきた子どもたちの感謝の言葉をみんなで共有して、気持ちを高め合いました。そうした工夫で活動の先細りを防ぎ、2021年9月は休んだものの、10月にはまた再開することができ盛り上がっています。
――楽しむ活動が、子ども食堂へ発展した理由はなんだと思われますか?
誰もが必ず役割を持つ女士会の経験から、自信と当事者意識がメンバーのなかに生まれました。そしてみんなで一つのことに取り組み実現させる喜びを実感したことで、同じ目標に向かって協力し合う組織文化も育まれました。その結果「子ども食堂」という実が結ばれたのだと思います。
「地域のために」と躍起になるのではなく、自分事の活動を積み重ねるなかから、地域を視野に入れた新たな活動への思いが自然と沸き上がっていったのです。会場の貸し出しや光熱費の負担、一部食材の提供といった、女性の自主性を損なわない、JAによるほどよい協力も背中を押してくれました。女性たちが力を合わせてコロナ禍を乗り越えた今、新たな扉がまた一つ開いたと感じています。
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