緊急提言:TPP強行採決――協同の力のみせどころ(上) 田代 洋一 横浜国立大学名誉教授2016年11月7日
政府・与党は11月4日、衆議院特別委員会で、TPP関連法案について、多くの国民の反対の声を無視し、十分な審議もつくさず、強行採決した。
そこで、TPPの危険性と今後私たちはどのように考え対応していけばいいかを、田代洋一横浜国立大学名誉教授に、緊急提言していただいた。
◆強行採決―民主主義と立憲主義の蹂躙
衆院のTPP特別委員会は4日に強行採決した。審議ははじめから異常だった。参考人質疑も、野党欠席の下で与党推薦の参考人に与党議員が質問するだけ、審議再開後は野党だけの質疑になった。与野党がクロスして論戦することで議論が深まるはずだが、与野党それぞれに同じ時間を確保してお茶を濁した。地方公聴会も北海道と九州にとどまり、米をめぐる不満が渦巻く東北等は避けた。中央公聴会ははじめからカットされた。
山本農水大臣の「強行採決」発言は、党内で公然の秘密になっていたことを、内輪の会合で思わず口にしたまでのことだ。そして事実、官邸指令で強行採決された。これでも首相は「強行採決を考えたことはない」と言い張るのか。農水大臣はうっかり失言、それに対し官邸は確信犯である。
官邸は、アメリカの批准を促す、再交渉に応じない姿勢を示す、そのために大統領選前に国会承認するのだと言う。だがアメリカの政治日程に合わせるなど独立国がすることではない。そんなことしても、そもそもアメリカは外政で聴く耳をもつようなヤワな国ではない。大統領候補が二人ともTPPに反対している以上、日本の批准が大統領選の前か後かなど事態に関係ない。
日本だけが批准を焦れば、逆にアメリカから「再交渉に応じなければTPPを批准してやらないぞ」と脅しをかけられるだけだ。国会承認した後で修正要求に応じたら、日本は主権国家でなくなる。官邸の早期批准へのこだわりは、自分で二階にかけのぼってハシゴを外されるようなものだ。
与党の先生方にしても、自分の足下をみれば躊躇があるのではないか。しかし官邸が怖いので唯々諾々と従った。それは立法府を行政府(官邸)の下僕にすることであり、三権分立という立憲主義に反する。
TPPは「国のかたち」を決める。子孫に負の遺産を残さぬためにも慎重審議すべきだ。
・緊急提言:TPP強行採決――協同の力のみせどころ(下)-TPPは後が怖い、諦めない―協同の力
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