韓国 格差拡大に怒り爆発・ ソウル大学 任教授に聞く2016年12月21日
福祉的な農業実現へ
英国のEU(欧州連合)離脱、米国次期大統領のドナルド・トランプ氏のTPP離脱宣言、そして韓国の朴槿惠大統領の退陣を求める史上最大規模のデモ。いずれも、「想定外」の出来事で世界の注目を集めている。国際情勢に詳しいソウル大学の任廷彬(イム・ジョンビン)教授に聞いた。
――「想定外」の国際情勢をどうみますか。
新自由主義の経済政策の結果だ。競争力のあるものを推進し、無いところを淘汰した結果、富は大企業に集中し、中小企業や農業が疲弊に追い込まれ、都市と農村の格差が拡大した。下層に暮らす人がますます増え、社会不安が高まった。そして、彼らの反乱で世界に様々な「想定外」、韓国では200万人以上のデモにつながったと思う。
――米国の次期新政権の通商政策はどう展望しますか。
オバマ政権主導のTPP(環太平洋連携協定)はトランプ政権の登場で当面漂流する。その代わり、北米自由貿易協定(NAFTA)、韓米FTAなどすでに締結したFTAの修正交渉を求めるだろう。ただ、二国間交渉の土台は、TPP交渉で合意した関税や貿易規範内容になる可能性が高い。
米国は、韓国の農業やサービス業、知的財産権などに対し、圧力を加えるとみられる。特に農業では、米の関税化転換措置を検証する際に、米国向けの割当量を増やすよう求めると同時に牛肉の現在の30か月以下の輸入措置を、30か月以上に開放することを求めるだろう。リンゴ、ジャガイモなどに関する検疫措置の規制緩和を求めそうだ。
――今後、どのような農業政策が望ましいですか。
農業は自然リスクが高い。政府は農業のリスク管理政策、経営安定政策を進めるべきだ。それはただ、いくら被害を受けたから補填してもらう問題ではない。韓国は都市国家ではなく、ほとんどが山間地の農村国家だ。そのため、新自由主義的な発想ではなく、だれもがどこでも安心して暮らす福祉的な農業支援が必要だ。
スイスは良い事例だ。山岳が多く、GDPに占める農業の割合は0.7~0.8%だ。しかし、国家予算の6~7%を投入している。その相当部分は農民に直接支払っている。支払額は平均で5万ドル(1ドル約118円)。そして都市と農村の格差を解消し、農民が山岳地帯で暮らし続け、国土が美しくなり、地域経済が分散し、国土の均衡ある発展を実現している。
一方、韓国政府は、いかに農業を手厚く支援しているかを演出し、国民から農業予算が多すぎると誤解されている。農業予算の中身をスイスのように共有すると、農業予算をさらに増やしても国民は理解するはずだ。農業予算や投資を減らすのではなく、さらに増やす必要がある。
(関連記事)
・韓国で新自由主義に反旗 大統領退陣へ大規模デモ (16.12.21)
重要な記事
最新の記事
-
米の価格 前週比▲48円 3週連続下落 農水省調査2025年6月17日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(1)育苗箱処理剤が柱2025年6月17日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(2)雑草管理小まめに2025年6月17日
-
米 収穫量調査 衛星データなど新技術活用へ2025年6月17日
-
価格高騰で3人に1人が米の消費減 パンやうどん、パスタ消費が増加 エクスクリエの調査から2025年6月17日
-
【JA人事】JA中野市(長野県) 望月隆組合長を再任2025年6月17日
-
備蓄米の格安放出で農家圧迫 米どころ秋田の大潟村議会 小泉農相に意見書送付2025年6月17日
-
深刻化するコメ加工食品業界の原料米確保情勢【熊野孝文・米マーケット情報】2025年6月17日
-
2025年産加工かぼちゃ出荷販売会議 香港輸出継続や規格外品の試験出荷で単収向上を JA全農みえ2025年6月17日
-
2024年産加工用契約栽培キャベツ出荷販売反省会を開催 旬別出荷計画の策定や「Z-GIS」の導入推進を確認 JA全農みえ2025年6月17日
-
和歌山「有田みかん大使」募集中 JAありだ共選協議会2025年6月17日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第110回2025年6月17日
-
転職希望者対象に「農業のお仕事説明会」 6月25日と7月15日に開催 北海道十勝総合振興局2025年6月17日
-
「第100回山形農業まつり農機ショー」8月28~30日に開催 山形県農機協会2025年6月17日
-
北海道産赤肉メロン使用「とろける食感 ぎゅっとメロン」17日から発売 ファミリーマート2025年6月17日
-
中標津町と繊維リサイクル推進に関する協定締結 コープさっぽろ2025年6月17日
-
神奈川県職員採用 農政技術(農業土木)経験者募集 7月25日まで2025年6月17日
-
【役員人事】ノウタス(6月17日付)2025年6月17日
-
「九州うまいもの大集合」17日から開催 セブン‐イレブン2025年6月17日
-
農薬出荷数量は1.5%増、農薬出荷金額は2.8%増 2025年農薬年度4月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年6月17日